【令和8年度政府予算概算要求】行政分野別 分析レポート(厚生労働省)

はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
令和7年8月に公表された「概算要求」について、「前年度(令和7年度)からの変化(新規・拡充など)」「政策立案への示唆」を試行的に追加しました。
(出典)厚生労働省「概算要求(令和7年8月8日)」令和7年度
厚生労働省 令和8年度概算要求の概要
厚生労働省の令和8年度予算概算要求の概要です。一般会計の要求額は34兆7,929億円で、前年度から4,865億円の増額となっています。このうち、年金・医療等に係る経費が32兆9,387億円を占めています。特別会計については、労働保険特別会計が3兆3,229億円、年金特別会計が72兆2,479億円、子ども・子育て支援特別会計が1兆659億円、東日本大震災復興特別会計が96億円を要求しています。
要求にあたっては、歳出全般にわたり、施策の優先順位を洗い直し、予算の中身を大胆に重点化することが基本方針とされています。また、賃金や調達価格の上昇を踏まえ、予算編成過程において、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しも踏まえ、経済・物価動向等を適切に反映することとされています。
「労働供給制約社会」へ本格的に突入するとともに、日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で、社会構造の変化に対応した保健・医療・介護の構築や、包摂的な地域共生社会等の実現、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進について、以下を柱に重点的な要求を行い、安心と活力ある暮らしの実現を目指します。
重点要求の柱
- 社会の構造変化に対応した保健・医療・介護の構築
- 物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進
- 包摂的な地域共生社会等の実現
注記事項
- 物価高対策を含む重要政策等については、予算編成過程において検討します。
- 診療報酬改定・薬価改定への対応については、予算編成過程において検討します。
- 令和6年度介護報酬改定・令和6年度障害福祉サービス等報酬改定による処遇改善分の3年目の対応については、予算編成過程において検討します。
- 「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づく社会福祉施設等の耐震化等については、予算編成過程において検討します。
各柱のポイント詳細
1. 社会の構造変化に対応した保健・医療・介護の構築
医療・介護・障害福祉分野の賃上げ・経営の安定・人材確保等
日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で、これまでの改革努力を継続しつつ、現場で働く幅広い職種の方々の賃上げや昨今の物価上昇の影響といった経済・物価動向等への的確な対応とともに、DX、タスクシフト・タスクシェア等を計画的に進めることで、賃上げ・経営の安定・人材確保等につながるよう、次期報酬改定を始めとした必要な対応策を講ずる。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 物価高騰や他産業への人材流出に対応し、社会保障制度の根幹を支えるエッセンシャルワーカーを確保する必要があるため。安定的で質の高いサービスの提供体制維持が喫緊の課題となっています。
- 行政側の意図
- 賃上げとDX推進による生産性向上を両輪で進めることで、厳しい財政状況の中でも持続可能な制度を構築する意図があります。処遇改善により、魅力ある職場環境を創出し、人材の定着を図ります。
- 期待される効果
- 医療・介護従事者の離職防止と新規入職者の増加、ひいてはサービスの質の維持・向上が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内事業者が国の制度を最大限活用できるよう、補助金申請のサポートやDX導入に関する相談窓口を設置することが有効です。また、区独自の家賃補助などで従事者の生活を支援することも考えられます。
地域医療・介護の提供体制の確保
2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、質が高く効率的な地域医療・介護提供体制を全国で確保する。
質が高く効率的な医療提供体制の確保 [806億円]
- 新たな地域医療構想の推進、勤務医の働き方改革の推進、在宅医療の推進等のための地域医療介護総合確保基金等による支援
- 医師偏在対策の推進、医療従事者の働き方改革の推進
- 人生会議(ACP)の普及・啓発活動の更なる推進
- 看護現場におけるICT活用の推進、特定行為研修の推進、多様なニーズに合わせた看護師の確保
- 薬局機能の見える化の推進、薬局機能及び薬剤師サービスの高度化 等
- 【新規】新たに「人生会議(ACP)の普及・啓発活動の更なる推進」が項目として追加されました。
- 【拡充】薬局機能について、7年度の「機能強化」から、8年度は「薬剤師サービスの高度化」へと内容が拡充されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 団塊の世代が後期高齢者となる2025年、さらに高齢者人口がピークを迎える2040年問題に対応するため、医療資源を効率的に配分し、持続可能な提供体制を構築することが不可欠だからです。
- 行政側の意図
- 医療機能の分化・連携や在宅医療へのシフトを促すことで、大病院への患者集中を緩和し、地域全体で高齢者を支える体制を目指しています。医師の働き方改革と合わせ、医療の質を確保する狙いです。
- 期待される効果
- 患者が状態に応じて適切な医療を受けられる体制の構築と、医療従事者の負担軽減による労働環境の改善。
- 特別区への示唆
- 区内の医療機関や介護事業者、薬局等が連携する「顔の見える関係」の構築が重要です。区が主催する多職種連携研修や情報共有のプラットフォームを提供し、地域包括ケアの深化を主導すべきです。
地域包括ケアシステムの更なる深化・推進 [2,457億円]
- 地域医療介護総合確保基金等による地域の事情に応じた介護サービス提供体制の整備及び訪問介護員や介護支援専門員など介護従事者の確保等支援
- 地域の多様な主体による柔軟なサービス提供を通じた介護予防の取組の推進と高齢者を地域で支えていく体制の構築支援
- 保険者機能の一層の推進に向けたインセンティブの強化
- 介護職員等処遇改善加算の取得支援
- 介護施設等の防災・減災対策の推進 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 高齢者が要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられる社会を実現するため、医療・介護・予防・生活支援・住まいを一体的に提供する必要があるからです。
- 行政側の意図
- 市区町村が中心となり、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築することを促しています。多様な担い手の参画による重層的な支援体制を目指します。
- 期待される効果
- 高齢者のQOL(生活の質)の向上、介護予防による健康寿命の延伸、家族の介護負担の軽減が期待されます。
- 特別区への示唆
- 単身高齢者や老老介護世帯が多い都市部の実情に合わせ、訪問介護サービスの担い手確保や、ICTを活用した見守りサービス、配食サービスといった生活支援の充実が特に重要となります。
救急・災害医療提供体制の確保 [124億円]
- ドクターヘリの活用による救急医療体制の強化
- 医療施設等の防災・減災対策、DMAT・DPAT等の体制整備等による災害に備えた危機管理体制強化 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 首都直下地震や風水害など、いつ起こるか分からない大規模災害時において、一人でも多くの住民の命を救い、健康被害を最小限に抑えるための強靭な医療体制の構築は、行政の最も重要な責務の一つです。
- 行政側の意図
- 医療機関の事業継続計画(BCP)策定を促進し、DMAT等の専門チームが迅速に活動できる体制を整備することで、発災直後から医療機能を維持し、広域連携による医療支援を円滑に行うことを目指します。
- 期待される効果
- 災害時の「防ぎ得た死」の減少と、避難所等における感染症のまん延防止、被災者の心身のケアの充実。
- 特別区への示唆
- 区内の医療機関、医師会、歯科医師会、薬剤師会等と連携し、災害時の医療救護所の設置・運営訓練を定期的に実施することが不可欠です。災害時要配慮者への支援体制も具体的に計画すべきです。
小児・周産期医療提供体制の確保 [26億円]
- 周産期母子医療センター等への支援
- 地域の実情に応じた小児・周産期医療機能の集約化・役割分担の推進
- 希望に応じて安全な無痛分娩が選択できる体制の構築 等
- 【新規】新たに「希望に応じて安全な無痛分娩が選択できる体制の構築」が追加され、多様な出産ニーズへの対応が図られています。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 少子化が進行する中にあっても、全ての妊産婦と子どもが安全で質の高い医療を受けられる環境を保障することは、次世代育成支援の根幹をなす政策であり、安心して子どもを産み育てられる社会の基盤だからです。
- 行政側の意図
- 医療資源の集約化と連携により、ハイリスクな妊娠・出産や新生児医療に重点的に対応できる体制を確保しつつ、無痛分娩のような多様なニーズにも応えることで、総合的な満足度向上を目指します。
- 期待される効果
- 周産期死亡率のさらなる低下と、産後の心身の負担軽減、ひいては産後うつの予防などが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内の産科・小児科医療機関の情報を集約し、ポータルサイト等で分かりやすく発信することが重要です。また、産後ケア事業を拡充し、退院直後の母子に対する訪問・デイサービス等の支援を強化すべきです。
医療・介護分野におけるDXの推進 [162億円]
マイナ保険証の利用を促進しつつ、医療DX工程表に基づき、医療・介護DXの技術革新の迅速な実装により、全国で、質が高く効率的な医療・介護サービスが提供される体制を構築する。
- 全国医療情報プラットフォームにおける、公費負担医療制度等のオンライン資格確認の推進、電子処方箋の利用拡大
- 自治体検診における医療機関等との連携の推進
- 医療安全の向上に向けた医薬品・医療機器等の物流DXの推進に資する製品データベースの構築
- 医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の強化
- 整合的かつ効率的な審査支払機能の運用に向けた国保総合システムの改修
- 科学的介護推進のためのデータベースの機能拡充
- 介護・障害福祉分野におけるテクノロジー開発・導入促進に向けた支援の推進 等
- 【新規】自治体検診と医療機関の連携推進、物流DXを推進する製品データベースの構築、国保総合システムの改修といった具体的なDX施策が新たに追加されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 生産年齢人口の減少が続く中、限られた人材で質の高い医療・介護サービスを維持・向上させるためには、デジタル技術を活用した業務効率化と情報連携の強化が不可欠であるためです。
- 行政側の意図
- 全国で医療情報を共有できる基盤を整備し、重複投薬の防止やデータに基づいた効果的なケアの提供を目指します。これにより、医療の質の向上と国民の医療費負担の適正化を両立させる狙いです。
- 期待される効果
- 医療従事者の事務負担の軽減、患者へのより迅速で的確な医療の提供、科学的根拠に基づく介護の実現。
- 特別区への示唆
- 区民へのマイナ保険証の利用促進キャンペーンを実施するとともに、区内の中小規模の診療所や介護事業所がデジタル化の潮流から取り残されないよう、導入費用の一部補助やIT専門家による相談支援を行うことが有効です。
創薬力強化に向けたイノベーションの推進、医薬品等の安定供給や品質・安全性の確保等
医薬品業界の構造改革を進めるとともに、「健康・医療戦略」に基づき、創薬エコシステムの発展やヘルスケア市場の拡大、創薬力の基盤強化に向け、革新的医薬品等実用化支援基金・後発医薬品製造基盤整備基金の造成をはじめ、一体的に政策を推進する。
研究開発環境の整備、創薬シーズ・医療機器の実用化支援 [97億円]
- 国際競争力のある治験・臨床試験環境の整備
- 小児・希少疾病用医薬品等におけるドラッグロス解消に向けた取組の強化
- 医薬品・医療機器開発におけるレジストリ(疾患登録システム)の利活用を加速させるクリニカル・イノベーション・ネットワーク構想の推進
- 創薬力強化に向けた早期薬事相談・支援の強化
- リアルワールドデータの薬事活用、プログラム医療機器の早期実用化に向けた取組の促進
- 革新的医療機器の創出に向けた産業振興拠点の強化
- 再生・細胞医療・遺伝子治療の実用化の促進 等
- 【新規】新たに「国際競争力のある治験・臨床試験環境の整備」が筆頭項目として掲げられ、創薬開発の国際競争力強化が鮮明に打ち出されました。
- 【拡充】7年度は小項目であった「革新的医療機器の創出に向けた産業振興拠点の強化」が、8年度は主要項目に格上げされ、重点化が図られています。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 国民の命と健康を守る革新的な医薬品・医療機器を迅速に届けることは国の重要な責務です。また、国際競争が激化する中で、日本の創薬力を強化し、経済成長の柱の一つとして育成する必要があるためです。
- 行政側の意図
- 研究開発から実用化までのプロセスを加速させるための環境整備や規制改革を進め、国内外の投資を呼び込み、日本の創薬エコシステム全体を活性化させることを目指しています。
- 期待される効果
- これまで治療が困難であった疾患に対する新たな治療選択肢の創出と、国民の健康寿命の延伸が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内に製薬会社や研究機関、大学病院などが立地している場合、産学官連携のプラットフォームを区が主導して構築し、地域の知財を活かしたイノベーション創出と地域経済の活性化を支援することが考えられます。
研究開発によるイノベーションの推進 [657億円]
- がん・難病に対する全ゲノム解析及びゲノム医療の推進
- AIを活用した創薬に向けたプラットフォームの整備及び活用促進
- 日本医療研究開発機構(AMED)における研究、厚生労働科学研究の推進
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- ゲノム情報やAIといった最先端技術は、個別化医療(プレシジョン・メディシン)を実現し、医療を飛躍的に進歩させる可能性を秘めています。この分野で国が主導的に研究を推進することは、国際的優位性の確保に繋がります。
- 行政側の意図
- AMED(日本医療研究開発機構)を司令塔として、基礎研究から実用化まで一貫した研究開発を推進し、研究成果が速やかに国民に還元される体制を構築することを目指しています。
- 期待される効果
- 個人の遺伝子情報に基づいた、より効果的で副作用の少ない治療法や予防法の開発が期待されます。
- 特別区への示唆
- ゲノム医療等に関する区民向けの講演会やセミナーを開催し、最新医療に関する正しい知識の普及啓発に努めることが重要です。倫理的な課題についても議論の場を提供することが望まれます。
医薬品等の安定供給の推進、後発医薬品業界の再編推進 [23億円]
- 製薬企業の出荷量等や医薬品の需給状況の把握のための体制整備
- 抗菌薬等の国内在庫の確保に向けた体制整備への支援による、安定供給の推進
- 海外依存度の高い原薬等の供給リスク低減に向けた支援
- 献血血液や血漿分画製剤の確保対策
- バイオ後続品の国内生産体制整備計画に対する支援、製造人材育成確保の推進
- 【新規】医薬品の需給状況を把握する体制整備や、バイオ後続品の国内生産体制・人材育成への支援が、安定供給確保のための新たな施策として追加されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 一部の医薬品で供給不安が顕在化し、国民生活や医療現場に大きな影響を与えました。経済安全保障の観点からも、医薬品の安定供給体制を再構築することは、国民の命を守る上で最優先課題の一つです。
- 行政側の意G
- サプライチェーンの脆弱性を克服するため、国内生産基盤の強化や原材料の調達先の多様化を支援します。業界再編も促し、効率的で強靭な供給体制を構築することを目指しています。
- 期待される効果
- 感染症のパンデミックや国際情勢の変動時にも、必要な医薬品が滞りなく供給される体制の確保が期待されます。
- 特別区への示唆
- 医薬品の供給不足が発生した際に、区内の薬局の在庫情報を集約・共有し、住民が必要な薬を入手しやすくなるような情報提供システムを、区薬剤師会等と連携して構築することが考えられます。
医薬品等の品質確保・安全対策の推進、薬物対策 [4億円]
- 薬剤師等を活用した市販薬の濫用防止対策の推進
- 後発医薬品の信頼確保のための体制・取組の強化
- 違法薬物の取締りのための国際機関との連携の強化 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 後発医薬品の品質問題や若者を中心とした市販薬のオーバードーズは、国民の健康を脅かす深刻な社会問題です。医薬品の適正使用と薬物乱用防止は、安全・安心な社会の実現に不可欠です。
- 行政側の意図
- 製造管理体制への監視強化と、学校や地域における薬物乱用防止教育の徹底を図ります。薬剤師の専門性を活用し、地域における薬に関する相談・指導体制を強化する狙いもあります。
- 期待される効果
- 医薬品全体の信頼性の向上と、薬物乱用による健康被害や関連犯罪の減少が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内の小中学校における薬物乱用防止教室の実施を支援するとともに、若者が気軽に相談できるSNS相談窓口の設置や、区の広報媒体を活用した市販薬の適正使用に関する啓発活動を強化すべきです。
予防・重症化予防、女性の健康づくり、認知症施策等
性別や年齢に関わらず生涯活躍できる社会の実現に向け、健康づくり・予防・重症化予防を推進する。加えて、女性の健康支援の総合対策、認知症施策に総合的かつ計画的に取り組む。また、がん・循環器病・肝炎・難病などの各種疾病対策を着実に実施するとともに、歯科保健医療などを推進する。
予防・重症化予防の推進、女性の健康づくり [21億円]
- 女性の健康総合センターにおける診療機能の充実及び研究の推進、女性の健康支援の推進
- 高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の推進
- 糖尿病性腎症の重症化予防事業、予防・健康づくりに関する大規模実証事業等への支援
- 睡眠を含むスマート・ライフ・プロジェクト(SLP)の推進 等
- 【新規】新たに「睡眠を含むスマート・ライフ・プロジェクト(SLP)の推進」が追加され、国民の健康増進策が拡充されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 健康寿命の延伸は、個人の生活の質の向上のみならず、社会保障制度の持続可能性を高める上でも極めて重要です。生活習慣病の予防や女性特有の健康課題への対応は、そのための重要な鍵となります。
- 行政側の意図
- 個人の健康への関心を高め、行動変容を促すための情報提供や環境整備を進めます。特に、科学的根拠に基づく効果的な保健事業を展開し、健康格差の縮小を目指しています。
- 期待される効果
- 国民一人ひとりの健康寿命が延び、生涯にわたり生き生きと活躍できる社会の実現が期待されます。
- 特別区への示唆
- 特定健診の受診率向上に向けたインセンティブの付与や、地域のスポーツ施設と連携した健康増進プログラムの提供が有効です。また、女性のライフステージに応じた健康相談窓口を充実させることも重要です。
認知症施策の総合的な推進 [130億円]
- 「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」等に基づいた自治体の認知症施策推進計画の策定支援等の認知症施策の推進 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 高齢化の進展に伴い、認知症の人は今後も増加が見込まれます。認知症になっても本人の意思が尊重され、尊厳を保ちながら地域で暮らし続けられる「共生社会」の実現は、喫緊の国家的課題です。
- 行政側の意図
- 認知症基本法に基づき、予防から診断、治療、ケア、社会参加まで、切れ目のない支援体制を構築することを目指しています。当事者や家族の視点を重視した施策展開を基本としています。
- 期待される効果
- 認知症の人やその家族の不安が軽減され、地域社会全体の認知症に対する理解が深まることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 認知症初期集中支援チームの活動強化や、認知症カフェの運営支援、徘徊高齢者の見守りネットワークの構築など、地域の実情に応じたソフト・ハード両面からの施策を総合的に推進することが求められます。
がん対策、循環器病対策等の推進 [449億円]
- がん対策の推進、HPVワクチン等の普及啓発の促進
- 脳卒中・心臓病等患者の包括的な支援体制の構築
- リウマチ・アレルギー疾患、慢性腎臓病(CKD)対策の推進 等
- 【拡充】がん対策において、7年度は子宮頸がん検診支援が中心でしたが、8年度は「HPVワクチン等の普及啓発の促進」へと踏み込み、予防医療の推進がより一層強化されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- がんと循環器病は、依然として日本人の死因の上位を占めており、国民の生命と健康に対する最大の脅威です。これらの疾患の予防、早期発見、治療、そして患者の療養生活支援は、国の重要な責務です。
- 行政側の意図
- 科学的根拠に基づく予防(HPVワクチン接種等)やがん検診を推進し、罹患率・死亡率の減少を目指します。また、治療と仕事の両立支援や緩和ケアの充実により、患者のQOL向上を図ります。
- 期待される効果
- がんや循環器病による死亡者の減少と、患者や家族が安心して暮らせる社会の実現が期待されます。
- 特別区への示唆
- 各種がん検診の受診率向上に向け、対象者への個別勧奨や、受診しやすい環境整備(休日・夜間検診など)を強化すべきです。HPVワクチンのキャッチアップ接種対象者への周知徹底も急務です。
肝炎対策の推進 [53億円]
- 肝炎患者等の重症化予防の推進
- 肝がん・重度肝硬変の治療研究の促進 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- ウイルス性肝炎は、放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性のある国内最大の感染症です。感染に気づいていない潜在的な患者も多く、早期発見・早期治療に繋げることは公衆衛生上の重要課題です。
- 行政側の意図
- 肝炎ウイルス検査の受検勧奨と、陽性者に対するフォローアップ体制を強化し、適切な医療に繋げることを目指します。また、画期的な治療薬の開発・普及を支援し、患者の負担軽減を図ります。
- 期待される効果
- 肝炎からの肝硬変・肝がんへの移行率が低下し、肝がんによる死亡者数の減少が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区が実施する健康診査の項目に肝炎ウイルス検査を標準で組み込むことや、過去に陽性と診断されながら未治療の人への受診勧奨など、積極的なアウトリーチによる掘り起こしが重要です。
難病・小児慢性特定疾病対策、移植医療対策の推進 [1,740億円]
- 難病・小児慢性特定疾病対策の着実な推進
- 移植医療対策の推進
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 患者数が少なく、原因不明・治療法未確立の疾患に苦しむ患者やその家族は、医療費の負担だけでなく、社会的な孤立など様々な困難を抱えています。セーフティネットとして、国が支援することは不可欠です。
- 行政側の意図
- 医療費助成による経済的負担の軽減に加え、研究の推進による治療法の開発、相談支援体制の充実、就労支援などを通じて、患者が地域で安心して暮らせる社会の実現を目指します。
- 期待される効果
- 患者や家族の経済的・精神的負担が軽減され、治療と社会生活の両立が可能になることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内に在住する患者や家族が集える交流の場の提供や、ピアサポート活動への支援が有効です。また、学校や職場における疾患への理解を促進するための啓発活動も、区が担うべき重要な役割です。
歯科保健医療・栄養対策・リハビリテーションの推進 [34億円]
- 生涯を通じた歯科健診等の歯科口腔保健の推進
- 地域の実情を踏まえ
- 健康の維持・増進に向けた栄養対策の推進
- 地域の実情に応じた介護予防・リハビリテーションの推進
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 口腔の健康が全身の健康に深く関わっていることや、適切な栄養摂取、リハビリテーションが健康寿命の延伸に不可欠であることが科学的に明らかになっており、これらの分野への投資は費用対効果が高いと判断されるためです。
- 行政側の意図
- 「オーラルフレイル」や「低栄養」といった状態への早期介入を促し、要介護状態への移行を予防することを目指します。多職種が連携し、地域全体で住民の健康を支える体制を構築する狙いです。
- 期待される効果
- 健康寿命の延伸による医療費・介護給付費の抑制と、高齢者の生活の質の向上が期待されます。
- 特別区への示唆
- 高齢者向けの口腔ケア教室や栄養指導、介護予防体操教室などを、身近な地域集会所などで積極的に開催することが重要です。地域の歯科医師会や栄養士会、リハビリ専門職との連携が鍵となります。
食の安全・安心の確保 [36億円]
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 食は生命の維持に不可欠であり、その安全性を確保することは国民の健康を守るための基本です。食品の生産・流通がグローバル化する中で、科学的根拠に基づいたリスク管理体制の構築は国の責務です。
- 行政側の意図
- 食品衛生監視や検査体制を強化し、食中毒や食品偽装等の発生を未然に防止します。また、食品表示の適正化を促し、消費者が安心して食品を選択できる環境を整備することを目指します。
- 期待される効果
- 食中毒発生件数の減少と、食品に対する国民の信頼性の向上が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内の飲食店や食品販売店に対し、保健所の職員が定期的な監視指導や衛生講習会を実施することが重要です。食中毒が発生しやすい夏場など、時期を捉えた広報啓発活動も効果的です。
感染症対策の体制強化、国際保健への戦略的取組等
国立健康危機管理研究機構と連携し、次なる感染症危機への対応に万全を期すとともに、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取組の加速や健康・医療・介護の国際展開等により国際保健課題対策に係る貢献を促進する。
次なる感染症危機に備えた体制強化 [371億円]
- 国立健康危機管理研究機構の情報収集・研究開発基盤・感染症危機に備えた人材育成体制等の強化
- 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄
- 平時からの計画的な個人防護具の備蓄 等
- 【拡充】7年度の「国立健康危機管理研究機構の創設」から、8年度は「情報収集・研究開発基盤・人材育成体制等の強化」へと、組織の設立段階から機能強化の段階へと移行しています。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 新型コロナウイルス感染症の経験から、新たな感染症の脅威に対して、迅速かつ効果的に対応できる強靭な公衆衛生体制を平時から構築しておくことが、国民の生命と社会経済活動を守る上で不可欠であると認識されたためです。
- 行政側の意図
- 平時から感染症に関する情報収集・分析や研究開発を行い、有事にはその科学的知見に基づいた的確な対策を講じるための司令塔機能を確立します。医療提供体制や物資の確保も計画的に進めます。
- 期待される効果
- 将来のパンデミック発生時に、感染拡大の抑制と社会経済への影響を最小限に抑えることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 国の動向と連携し、区の感染症対応計画(パンデミック・フルー・プラン)を最新の知見に基づき改定することが必要です。地域の医療機関や保健所との連携訓練を定期的に実施し、いざという時の実効性を高めるべきです。
国際保健への戦略的取組の推進、医療・介護分野の国際展開等 [35億円]
- UHCナレッジハブにかかるWHOオフィスの運営・研修実施、保健システムの強化の支援を含む関係国際機関等への拠出
- 諸外国への人材派遣等による日本の医療技術等の国際展開の推進
- 外国人介護人材の確保に向けた海外現地への働きかけ、定着支援の推進 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 感染症対策に国境はなく、グローバルな健康危機への対応に貢献することは、国際社会における日本の責務です。また、日本の優れた医療・介護システムを国際展開することは、経済成長にも繋がります。
- 行政側の意図
- 日本の知見や経験を活かして、途上国の保健システム強化に貢献し、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成を主導します。また、外国人材の円滑な受け入れ体制を構築する狙いもあります。
- 期待される効果
- 国際社会における日本のプレゼンス向上と、国内の介護人材不足の緩和が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内で就労する外国人介護人材に対し、日本語学習支援や生活相談窓口の設置など、定着を支援するきめ細やかな施策を展開することが重要です。異文化理解を促進するための地域住民との交流事業も有効です。
安定的で持続可能な医療保険制度の運営確保
各医療保険制度などに関する医療費国庫負担 [10兆4,849億円]
国民健康保険への財政支援 [3,071億円]
被用者保険への財政支援 [1,253億円]
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 国民皆保険制度は、日本社会の安定の基盤です。高齢化に伴い医療費が増大する中で、保険財政の安定化を図り、将来にわたって制度を持続可能なものとすることは、国の最も重要な役割の一つです。
- 行政側の意図
- 財政基盤の弱い国民健康保険などに対し、国費を投入することで保険料の急激な上昇を抑制し、制度間の財政力の格差を是正します。これにより、全ての国民が安心して医療を受けられる環境を維持します。
- 期待される効果
- 国民皆保険制度の安定的な運営と、低所得者の医療アクセスが確保されることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 特別区は国民健康保険の保険者として、ジェネリック医薬品の使用促進や重複・頻回受診者への指導など、医療費適正化に向けた取り組みを着実に推進し、保険財政の健全化に努める責務があります。
2. 物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進
賃上げ支援、非正規雇用労働者への支援
全国津々浦々で物価上昇に負けない賃上げを早急に実現・定着させるため、2029年度までの5年間で「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に基づく取組を集中的に行う。最低賃金については、適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しする。また、非正規雇用労働者への支援を行う。
中小・小規模企業等に対する賃上げ支援、非正規雇用労働者への支援 [2,022億円]
- 最低賃金・賃金の引上げに向けた中小・小規模企業等支援(「賃上げ」支援助成金パッケージ)において、以下の各助成金により、生産性向上(設備・人への投資等)や、非正規雇用労働者の処遇改善、より高い処遇への労働移動等を通じ、労働市場全体の「賃上げ」を支援
- 業務改善助成金
- 働き方改革推進支援助成金
- 人材開発支援助成金
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
- キャリアアップ助成金(正社員化コース・賃金規定等改定コース)
- 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)
- 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
- 生産性向上による賃上げに取り組む企業に対する伴走型支援の実施
- 各地域における賃金引上げの機運醸成に向けた地方版政労使会議開催に関する広報事業の実施
- 生活衛生関係営業者に対する生産性向上のための伴走型の相談支援、価格転嫁等の取組支援の実施
- 正社員転換・処遇改善に取り組む事業主に対する助成や求職者支援制度を通じた非正規雇用労働者への支援の推進 等
- 【新規】「生活衛生関係営業者」に対する価格転嫁等の伴走型支援が、新たな支援策として追加されました。
- 【拡充】7年度の個別支援策から、8年度は各種助成金をまとめた「『賃上げ』支援助成金パッケージ」として体系化され、支援内容が大幅に拡充されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 日本経済がデフレから完全に脱却し、持続的な成長軌道に乗るためには、物価上昇を上回る構造的な賃上げの実現が不可欠です。特に、雇用者の約7割が働く中小企業での賃上げが鍵となります。
- 行政側の意図
- 生産性向上に繋がる設備投資や人材育成への支援と、賃上げを行った企業への助成を組み合わせることで、企業の「稼ぐ力」と「賃金支払能力」を同時に高め、賃上げの好循環を生み出すことを目指します。
- 期待される効果
- 中小企業の賃上げが促進され、個人消費が拡大し、経済全体の成長に繋がることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 国の多様な助成金制度について、区内の中小企業に分かりやすく周知し、申請手続きをサポートする伴走支援が重要です。また、区の契約・発注において、価格転嫁に配慮した対応(スライド条項の適用等)を徹底すべきです。
リ・スキリング、ジョブ型人事、労働移動の円滑化の推進
労働者一人一人の雇用の質・労働生産性を向上させるため、技術トレンドを踏まえた効果的なリ・スキリング支援、ジョブ型人事指針の周知、生産性の高い成長産業・企業への労働移動の円滑化を推進する。
リ・スキリングによる能力向上支援、ジョブ型人事指針の周知、成長分野等への労働移動の円滑化 [1,961億円]
- <リ・スキリング>
- 教育訓練給付等の活用による、経済社会の変化に対応した労働者個々人の学び・学び直しや企業における人材育成の支援の促進
- 労働者のキャリア形成やリ・スキリングの取組を促すための相談支援事業等の拡充
- スキルの階層化・標準化に向けた幅広い業種における団体等検定制度の活用促進
- 公的職業訓練のデジタル推進人材の育成支援
- 生成AIを含むデジタル人材育成のための「実践の場」を開拓するモデル事業の推進
- 非正規雇用労働者等が働きながら学びやすい職業訓練の本格実施
- 2028年技能五輪国際大会の日本開催を契機とした若年層に対する技能尊重の機運醸成や技能労働者のスキル向上に向けた支援策の強化
- <ジョブ型人事>
- 個々の企業の実態に応じたジョブ型人事指針の周知
- <労働移動の円滑化>
- 「job tag」や「しょくばらぼ」の充実・活用促進、リ・スキリングのプログラムや施策内容を含む各種情報を可視化するプラットフォームの整備・活用促進
- 賃金上昇を伴う中途採用者の雇用拡大を図る事業主への支援
- ハローワークにおけるAIの活用の実証 等
- 【新規】2028年の技能五輪国際大会の日本開催を見据えた技能労働者のスキル向上支援や、ハローワークにおけるAI活用の実証実験が、新たな取り組みとして追加されました。
- 【拡充】労働移動の円滑化のため、「job tag」等の情報基盤について、7年度の「活用促進」から8年度は「プラットフォームの整備・活用促進」へと機能強化が図られています。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- DX(デジタル変革)やGX(グリーン変革)など、産業構造が急速に変化する中で、労働者が新たな知識・スキルを習得し、成長分野へ円滑に移動できる環境を整備することが、日本経済の持続的成長に不可欠だからです。
- 行政側の意図
- 個人の主体的な学び直し(リスキリング)を強力に支援し、年功序列型から職務内容に応じたジョブ型人事への転換を促すことで、労働市場の流動性を高め、適材適所の人材配置を実現することを目指します。
- 期待される効果
- 労働生産性の向上と、労働者個人のキャリアアップによる所得の増加、企業のイノベーション創出が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区民が受講しやすい夜間・オンラインのリスキリング講座を充実させるとともに、ハローワークや区内企業と連携し、修了後の就職・転職に繋がる出口支援を強化することが重要です。
人材確保の支援
人手不足分野等における人材確保を推進するとともに、高齢者の社会参加、外国人材の就職支援等による人手不足解消に向けた取組を推進する。
深刻化する人手不足への対応 [515億円]
- ハローワークの専門窓口(人材確保対策コーナー)の増設等による医療・介護分野等へのマッチング支援の強化
- 雇用管理制度等の導入及び賃上げにより従業員の定着・確保を図る事業主への支援の拡充
- シルバー人材センター等を活用した、高齢者の就労による社会参加の促進、高齢期の多様なニーズに応じたマッチングの推進
- 外国人求職者への就職支援等、適切な外国人材の確保等に向けた実態把握 等
- 【拡充】従業員の定着・確保を図る事業主への支援について、7年度の内容に加え、8年度は「賃上げ」による定着確保も要件とし、支援が拡充されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 人口減少社会が本格化し、多くの産業、特に医療・介護、建設、運輸などの分野で人手不足が深刻化しており、このままでは社会インフラの維持が困難になるという強い危機感があるためです。
- 行政側の意図
- これまで労働市場への参加が十分でなかった高齢者や外国人材などの活躍を促進するとともに、賃上げや働きやすい職場環境の整備による離職防止を支援し、あらゆる手段で労働供給の制約を緩和することを目指します。
- 期待される効果
- 人手不足分野における人材確保が進み、国民生活に必要なサービスが安定的に提供されることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 特に人手不足が深刻な区内の介護事業所や保育所等を対象とした合同就職説明会を区が主催することや、元気な高齢者が地域で活躍できる場(シルバー人材センターの事業拡充等)を創出することが有効です。
多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組等
就職氷河期世代や、障害者や高齢者等多様な人材が能力を発揮しつつ、安心して働き続けられる職場環境の整備を進める。ハラスメント対策を推進するとともに、多様で柔軟な働き方を推進する取組を行う。
就職氷河期世代、障害者や高齢者等多様な人材の活躍促進 [501億円]
- 就職氷河期世代を含む中高年層への就労支援
- ハローワークのマッチング機能強化による障害者の雇入れ等の支援
- 障害者就業・生活支援センターによる地域における就業支援の促進
- 地域若者サポートステーションにおける就労支援体制の強化
- 育成就労制度の施行に向けた必要な体制整備
- 多様な働き方・多様な雇用機会の創出のための労働者協同組合の活用促進 等
- 【新規】外国人労働者の新たな在留資格である「育成就労」制度の施行に向けた体制整備が、新規項目として追加されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 誰もがその意欲と能力に応じて活躍できる「一億総活躍社会」の実現は、社会の活力を維持し、持続的な経済成長を達成するための基盤です。多様な人材の活躍は、新たな価値創造の源泉となります。
- 行政側の意図
- 就職氷河期世代、障害者、高齢者など、個々の状況に応じたきめ細やかな就労支援策を講じることで、働く上での障壁を取り除きます。また、新たな育成就労制度の円滑な導入・運用を図ります。
- 期待される効果
- 労働参加率の向上による人手不足の緩和と、多様な視点がもたらす企業の競争力強化が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区の障害者就労支援施設の機能を強化し、企業での実習機会の確保や就職後の定着支援を手厚く行うことが重要です。また、ひきこもり状態にある若者へのアウトリーチ支援と就労準備支援を組み合わせることも有効です。
多様な働き方の実現に向けた環境整備、仕事と育児・介護の両立支援、ワーク・ライフ・バランスの促進 [1,326億円]
- 勤務時間、勤務地、職種・職務を限定した「多様な正社員」制度の普及促進
- 年次有給休暇の取得促進や選択的週休3日制を含めた多様な働き方の環境整備
- 適切な労務管理下におけるテレワークの導入・定着の促進
- 仕事と育児・介護の両立に向けた、業務代替の体制整備・柔軟な働き方の導入等を含めた支援
- 共働き・共育て推進に向けた、社会的機運の醸成、両立支援制度の導入・活用促進
- 両親ともに育児休業をした場合に支給する出生後休業支援給付金や育児期に時短勤務を選択した場合に支給する育児時短就業給付金による支援
- 勤務間インターバル制度導入促進のための支援
- 労働時間の削減等、中小企業の勤務環境改善に向けた支援の実施
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 育児や介護などを理由に離職せざるを得ない状況は、個人のキャリア形成を阻害するだけでなく、社会全体の労働力損失に繋がります。働き方の選択肢を広げ、両立を支援することは少子高齢化対策の要です。
- 行政側の意図
- テレワークや時短勤務、男性の育児休業取得などを推進し、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を社会全体に浸透させます。これにより、誰もが働き続けやすい環境を整備することを目指します。
- 期待される効果
- 女性の就業継続率の向上、男性の家事・育児参加の促進、そして出生率の向上にも繋がることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内の中小企業を対象に、テレワーク導入や就業規則の見直しに関する専門家(社会保険労務士等)の派遣事業を行うことが有効です。また、男性の育休取得を奨励する区独自の給付金制度も考えられます。
ハラスメント対策の推進、安心安全な職場環境の実現 [75億円]
- カスタマーハラスメント対策の取組支援を含む職場におけるハラスメント対策の推進
- 地域産業保健センター等における体制整備や相談支援の充実による中小企業等の産業保健活動への支援やメンタルヘルス対策の推進
- 高齢者の労働災害防止のための環境整備の推進
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- あらゆるハラスメントは、個人の尊厳を傷つけ、働く意欲を失わせるだけでなく、企業の生産性をも低下させる深刻な問題です。安全で健康に働ける職場環境の確保は、労働者保護の基本です。
- 行政側の意図
- 事業主に対してハラスメント防止措置を義務付けるとともに、相談体制の整備や研修の実施を支援します。特に対応が難しいカスタマーハラスメントについては、企業向けの対策マニュアル作成等を推進します。
- 期待される効果
- 労働者のメンタルヘルス不調の予防と離職率の低下、健全な職場風土の醸成が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内の中小企業向けに、ハラスメント防止に関する研修会や相談窓口を設置することが重要です。産業医の選任義務がない小規模事業所への支援として、地域産業保健センターの活用を積極的に周知すべきです。
フリーランスの就業環境の整備 [2億円]
- フリーランス・事業者間取引適正化等法の執行体制の整備、フリーランス・トラブル110番における相談支援の実施
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 働き方の多様化に伴いフリーランスとして働く人が増加していますが、労働関係法令の保護を受けにくく、発注者との間でトラブルが発生しやすいなど、不安定な立場に置かれがちであるため、法的な保護が必要です。
- 行政側の意図
- フリーランス保護新法に基づき、事業者に対して契約内容の明示等を義務付けるとともに、トラブルに対応する相談窓口を設置することで、フリーランスが安心して能力を発揮できる環境を整備します。
- 期待される効果
- フリーランスの取引上の地位が安定し、不当な契約による被害が減少することが期待されます。
- 特別区への示唆
- 国が設置する相談窓口を区の広報で周知するとともに、法律や経理に関する知識が乏しいフリーランスを対象としたセミナーや、地域のフリーランス同士が交流できるネットワークづくりの場を提供することが有効です。
女性の活躍促進
男女間賃金差異の解消及び女性管理職比率の向上に向けた取組、子育て中の女性等に対する就職支援、仕事と女性の健康課題等との両立支援等を推進する。
男女間賃金差異の解消、女性管理職比率の向上に向けた取組の推進 [5億円]
- 男女間賃金差異の解消等に向けた民間企業における女性活躍促進のためのコンサルティングや情報提供の実施
子育て中の女性等に対する就職支援の実施 [45億円]
- マザーズハローワーク等による子育て中の女性等に対する就職支援の実施
女性の健康課題に取り組む事業主への支援 [2億円]
- 女性のライフステージごとの健康課題に取り組む事業主への支援
- 【拡充】7年度は「女性の活躍促進」として一体的に要求されていましたが、8年度は「男女間賃金差異の解消」「就職支援」「健康課題への支援」の3つの柱に整理・拡充され、特に女性の健康課題に取り組む事業主への支援が明確化されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- ジェンダーギャップ指数が示す通り、日本の男女格差、特に経済分野における格差は依然として大きい状況です。女性の能力を最大限に活かすことは、経済成長と社会の多様性確保のために不可欠です。
- 行政側の意図
- 企業における男女間賃金差異の情報開示を促し、格差是正に向けた自主的な取り組みを支援します。また、女性特有の健康課題への配慮(フェムテック活用等)を企業に働きかけ、働きやすい環境を整備します。
- 期待される効果
- 女性の経済的自立とキャリア形成が促進され、組織の意思決定における多様性が確保されることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 再就職を希望する女性向けのITスキル講座やキャリアカウンセリングを実施することが有効です。また、マザーズハローワークと連携し、区の施設内で出張相談会を開催するなど、支援へのアクセスを向上させるべきです。
就職氷河期世代等の支援に向けた施策 [1,490億円(再掲)]
「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」に基づき、「就労・処遇改善に向けた支援」、「社会参加に向けた段階的支援」及び「高齢期を見据えた支援」の3本柱に沿って取組を強化する。
<就労・処遇改善に向けた支援>
- 相談対応等の伴走支援:中高年層(ミドルシニア)の就労支援のためのハローワーク専門窓口設置及び担当者制による支援
- リ・スキリングの支援:非正規雇用労働者等が働きながら学びやすい職業訓練の本格実施、教育訓練休暇給付金、リ・スキリング等教育訓練支援融資事業、人材開発支援助成金、教育訓練講座受講環境整備事業、キャリア形成・リスキリング推進事業(中高年齢層の「経験交流・キャリアプラン塾」)
- 就労を受け入れる事業者の支援:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)、特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)、キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- 家族介護に直面する者の介護離職防止に向けた支援:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)、地域支援事業における家族介護者への相談支援体制の充実
<社会参加に向けた段階的支援>
- 社会とのつながり確保の支援:ひきこもり支援推進事業、ひきこもりに関する地域社会に向けた広報事業、ひきこもり地域支援センター職員等への人材養成研修・広報事業
- 就労に困難を抱える者の職業的自立に向けた支援:地域若者サポートステーション事業
- 柔軟な就労機会の確保:認定就労訓練事業の普及促進、生活困窮者自立支援制度における現任者向け人材養成研修(ステップアップ研修)事業
<高齢期を見据えた支援>
- 家計改善・資産形成の支援:家計改善支援事業の支援体制の強化
- 希望に応じた高齢期の就業機会の確保:65歳超雇用推進助成金
- 高齢期の所得保障:被用者保険適用拡大に当たっての周知・専門家活用支援
- 【拡充】就職氷河期世代支援について、7年度にはなかった「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」に基づき、「就労・処遇改善」「社会参加」「高齢期」の3本柱で施策が体系化・拡充され、ひきこもり支援や65歳超の雇用推進などが盛り込まれました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- バブル崩壊後の経済環境により不本意ながら不安定な就労に就いた就職氷河期世代は、現在中核的な年齢層となり、この世代の不安定さが社会全体の活力低下や将来の社会保障負担増に繋がる懸念があるためです。
- 行政側の意図
- 単なる就労支援に留まらず、社会との繋がりを回復する段階的な支援や、高齢期を見据えた資産形成支援まで含めた、ライフステージ全体を視野に入れた包括的な支援プログラムへと転換・強化する意図があります。
- 期待される効果
- 当事者の経済的自立と社会的孤立の解消、そして将来にわたる生活の安定が期待されます。
- 特別区への示唆
- 区の生活困窮者自立支援窓口やひきこもり相談窓口が、ハローワーク等の関係機関と密に連携し、対象者一人ひとりの状況に応じたオーダーメイドの支援プランを作成する体制の構築が急務です。
3. 包摂的な地域共生社会等の実現
地域共生社会の実現等
国民一人一人が生きがいや役割を持つ包摂的な地域共生社会を実現する。
生活困窮者自立支援等の推進 [917億円]
- 住まい支援を始めとする自立相談支援機能の強化、就職氷河期世代を含む就労・家計改善の支援
- 子どもの学習・生活支援事業等の推進 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 経済的困窮は、住まいや就労、子どもの教育など、生活の様々な側面に複合的に影響を及ぼします。一人ひとりの尊厳を守り、誰一人取り残さない社会を実現するため、包括的なセーフティネットが必要です。
- 行政側の意図
- 相談支援員が本人に寄り添い、個々の状況に応じた支援計画を作成する伴走型の支援を中核とします。経済的支援だけでなく、社会的な繋がりを回復し、本人の自立意欲を引き出すことを目指します。
- 期待される効果
- 生活困窮状態からの早期脱却と、貧困の世代間連鎖の防止が期待されます。
- 特別区への示唆
- 自立相談支援窓口の人員体制を強化し、相談員がアウトリーチ(訪問支援)に十分な時間を割ける環境を整備することが重要です。また、子どもの学習支援事業の担い手となる地域のボランティアや学生を発掘・育成すべきです。
生活保護制度の着実な推進 [102億円]
- デジタル化を通じた適正受診・健康管理の推進
- 生活保護業務の負担軽減のためのデジタル技術活用や福祉事務所の体制確保
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 生活保護制度は、国民の生存権を保障する最後のセーフティネットです。制度を必要とする人が適切に利用でき、かつ、制度の信頼性を損なうことのないよう、適正で効率的な運営を行うことは国の責務です。
- 行政側の意図
- ケースワーカーの業務負担が増大する中、デジタル技術の活用により事務の効率化を図り、本来注力すべき相談・支援業務に時間を充てられるようにします。また、被保護者の健康管理支援も強化します。
- 期待される効果
- ケースワーカーの専門性がより発揮され、被保護者の自立に向けたきめ細やかな支援が可能になることが期待されます。
- 特別区への示唆
- ケースワーカーの増員や専門性向上のための研修機会の確保は、区の重要な責務です。国のデジタル化の動きと歩調を合わせ、現場の業務プロセスを見直し、効率化に向けた投資を計画的に行う必要があります。
障害者支援の促進、依存症対策の推進 [1兆8,198億円]
- 障害福祉サービス事業所等の整備、防災・減災対策の推進
- 重度障害者等の通勤や職場等における支援の推進
- 地域の特性や利用者の状況に応じた地域生活支援の推進
- 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進
- 地域における依存症対策の支援体制整備、調査研究推進、民間団体支援 等
- 【拡充】障害者支援において、新たに「重度障害者等の通勤や職場等における支援の推進」が明記され、就労支援の対象が拡大・強化されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現は、社会の成熟度の指標です。障害のある人が希望する地域で自立した生活を送れるよう、サービス基盤の整備が必要です。
- 行政側の意図
- 施設入所から地域生活への移行(地域移行)を推進するとともに、就労支援を強化し、障害者の社会参加を促進します。また、アルコールや薬物、ギャンブル等の依存症対策を本格的な課題として位置づけます。
- 期待される効果
- 障害者の自己決定権が尊重され、社会の一員として活躍の場が広がることが期待されます。
- 特別区への示唆
- グループホームの整備促進や、重度障害者の通勤・職場介助を支援する区独自の制度創設が考えられます。また、精神障害のある人が地域で安心して暮らせるよう、ピアサポート活動への支援も有効です。
成年後見制度の利用促進、身寄りのない高齢者等への支援 [58億円]
- 都道府県・市町村・中核機関による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりの推進
- 身寄りのない高齢者等に対する見守り、入院・入所等の手続支援 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 認知症や知的障害等により判断能力が不十分な人の財産や権利を守る成年後見制度は、高齢社会に不可欠な仕組みです。また、単身高齢者の増加に伴い、身元保証人がいないことによる不利益を防ぐ必要があります。
- 行政側の意図
- 市区町村が中核となり、法律専門職や福祉関係者等が連携する権利擁護支援のネットワークを構築します。これにより、制度を必要とする人が円滑に利用でき、身寄りのない人の入院・入所を支援します。
- 期待される効果
- 判断能力が不十分な人の権利が守られ、消費者被害の防止や、必要な医療・介護サービスへの円滑なアクセスが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区が設置する成年後見センターの機能を強化し、市民後見人の育成・活用をさらに推進することが重要です。また、身寄りのない高齢者の入院・入所支援に関する具体的な運用ルールを医療機関等と協議しておくべきです。
相談支援・地域づくり等による包括的な支援体制の整備 [949億円]
- 生活困窮者自立支援制度を軸とした包括的な支援体制の整備
- 過疎地域等における既存の相談支援・地域づくり事業の機能集約や地域との連携・協働を図るモデル事業の実施 等
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 「8050問題」に代表されるように、世帯が抱える課題は複合化・複雑化しており、既存の制度の縦割りでは対応が困難なケースが増えています。分野横断的な包括的支援体制の構築は、現代社会の要請です。
- 行政側の意図
- どの相談窓口に来ても、適切な支援に繋がる「断らない相談支援」の実現を目指します。生活困窮、障害、子育て、介護など、様々な相談機関が連携し、地域住民も参画する重層的な支援体制を構築します。
- 期待される効果
- 制度の狭間で孤立していた人や世帯が早期に発見され、適切な支援に繋がることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区の各相談窓口の連携を強化するための情報共有ルールを策定し、定期的なケース検討会議を開催することが不可欠です。地域の民生委員や社会福祉協議会、NPO等との協働関係を一層深化させるべきです。
困難な問題を抱える女性への支援の推進 [57億円]
- 本人の状況に応じた支援の推進と地域連携の促進による地域移行支援の推進、一時保護所における支援の推進
- 官民協働等による自立支援のための就職支援等の推進
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- DV、性暴力、貧困、社会的孤立など、女性が直面する困難は複合的であり、既存の支援体制では十分に対応できていませんでした。困難な問題を抱える女性支援法に基づき、当事者本位の支援を強化する必要があります。
- 行政側の意図
- 行政と専門性を持つ民間団体が協働し、アウトリーチ(訪問支援)や一時保護、心理的ケア、自立に向けた伴走支援まで、切れ目のない支援体制を全国に整備することを目指しています。
- 期待される効果
- 困難な状況にある女性が尊厳を取り戻し、安全・安心な生活を再建できるようになることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区の女性相談支援センターの機能を強化するとともに、地域の婦人保護施設や支援NPO等との連携を密にし、地域における支援ネットワークの中核としての役割を果たすべきです。官民協働の協議会設置も有効です。
自殺総合対策、ひきこもり支援の推進 [77億円]
- 地域の実情に応じた継続的な自殺防止対策、民間団体への支援を通じた全国的な自殺防止対策、こども・若者の自殺危機対応チームによる支援の推進
- 地方自治体における広域連携等を通じたひきこもり相談支援の取組の推進 等
- 【新規】ひきこもり支援において、7年度の「更なる推進」から、8年度は「地方自治体における広域連携等を通じた」支援へと、具体的な連携手法が新たに示されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 自殺は、その多くが追い込まれた末の死であり、社会で防ぐことのできる問題です。また、長期化・高年齢化するひきこもり問題は、本人・家族だけの問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。
- 行政側の意図
- SNS等を活用した若者向けの相談支援や、自殺リスクの高い人への早期介入を強化します。ひきこもり支援については、当事者の社会参加に向けた居場所づくりや、家族への支援を重視しています。
- 期待される効果
- 自殺者数の減少と、ひきこもり状態にある人が社会との繋がりを回復し、次の一歩を踏み出せるようになること。
- 特別区への示唆
- 区の精神保健福祉センターが中心となり、地域の関係機関(医療、福祉、教育、労働)が連携する自殺対策のネットワークを強化すべきです。ひきこもり支援では、当事者家族会の活動支援も重要です。
戦没者の慰霊・戦没者遺族等の援護の推進
遺骨収集等の計画的実施、遺骨の鑑定等に関する体制整備 [39億円]
戦没者の慰霊・記憶の継承 [16億円]
- 【拡充】7年度の「戦後80年関連事業」から、8年度は「遺骨収集」と「慰霊・記憶の継承」の2本柱に整理され、特に「記憶の継承」が新たな重点項目として明確化されました。
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 今日の平和と繁栄が、先の大戦における多くの尊い犠牲の上に築かれていることを忘れてはなりません。戦没者を慰霊し、その悲惨な経験を後世に語り継ぐことは、国の責務であり、平和を希求する決意の表明です。
- 行政側の意図
- DNA鑑定技術の活用などにより、一日も早く、一人でも多くのご遺骨をご遺族のもとへお返しすることを目指します。また、戦争を知らない世代が増える中、資料の収集・公開等を通じて戦争の記憶の風化を防ぎます。
- 期待される効果
- ご遺族の長年の労苦が報われ、国民全体の平和への意識が高まることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区内に戦没者慰霊碑等がある場合は、その維持管理を適切に行うとともに、地域の学校と連携した平和学習の教材として活用することが考えられます。区の広報誌やウェブサイトで、地域の戦争の記憶を特集することも有効です。
安心できる年金制度の確立
持続可能で安心できる年金制度の運営 [13兆6,360億円]
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 公的年金制度は、国民の老後の生活を支える最も基本的な社会保障制度です。少子高齢化が急速に進展する中にあっても、将来にわたって給付と負担のバランスを確保し、制度の信頼性を維持することは国の根幹に関わる課題です。
- 行政側の意図
- 社会経済情勢の変化に応じて給付水準を自動調整する仕組み(マクロ経済スライド)などを適切に運用し、長期的な制度の持続可能性を確保します。また、国民への分かりやすい情報提供に努めます。
- 期待される効果
- 現役世代の将来への不安が和らぎ、全ての世代が安心して暮らせる社会の基盤が維持されることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 区の年金窓口において、国民年金保険料の免除・猶予制度など、利用できる制度について丁寧な案内を徹底することが重要です。また、若者向けの年金セミナーなどを開催し、制度への理解を促進すべきです。
被災者・被災施設の支援等
被災者・被災施設の支援、雇用の確保、原子力災害からの復興への支援等 [123億円]
政策立案への示唆
- この取組を行政が行う理由
- 大規模災害からの復興は、被災した地域だけの問題ではなく、国全体で取り組むべき課題です。被災者が一日も早く平穏な生活を取り戻し、地域が活力を回復できるよう、国が財政的・人的支援を行うことは当然の責務です。
- 行政側の意図
- インフラの復旧に留まらず、被災者の心身のケア、コミュニティの再生、地域産業の再建まで、息の長い支援を継続します。特に、原子力災害からの復興は、国が前面に立って取り組むべき課題と位置づけています。
- 期待される効果
- 被災地の生活再建と産業復興が進み、住民が希望を持って暮らせる地域が再生されることが期待されます。
- 特別区への示唆
- 災害協定を結んでいる被災自治体に対し、職員派遣や物資支援などを継続的に行うことが重要です。また、区民に被災地の産品を購入してもらう物産展などを開催し、息の長い復興支援の輪を広げるべきです。
まとめ
【総括】令和8年度概算要求のポイントと特別区への示唆
令和8年度の厚生労働省予算概算要求は、「労働供給制約社会への突入」と「物価上昇」という、日本社会が直面する構造的な課題への強い危機感を背景に編成されています。その核心は、「持続的な賃上げ」を起点とする経済の好循環の実現と、人口減少・高齢化が加速する中での「社会保障制度の持続可能性確保」という二大テーマに集約されます。そして、この両者を達成するための共通の鍵として「人への投資(リスキリング等)」と「DX(デジタル変革)による生産性向上」が、あらゆる政策分野の根幹に据えられている点が最大の特徴です。
特に注目すべき【新規】・【拡充】項目からは、国の政策の力点がどこにあるかが見て取れます。
- 経済・労働分野では、【拡充】された「『賃上げ』支援助成金パッケージ」が象徴的です。これは、デフレマインドから完全に脱却し、構造的な賃上げを実現するという政府の強い意志の表れです。また、【新規】の「育成就労制度」への対応は、外国人材を単なる労働力ではなく、地域社会の一員として育成し、共生していくという新たなステージへの移行を示唆しています。さらに、【拡充】された就職氷河期世代支援は、従来の就労支援から、社会参加や高齢期まで見据えた包括的なライフコース支援へと大きく舵を切っており、自治体の福祉・労働施策の連携が一層求められます。
- 保健・医療・福祉分野では、分野横断的なDX推進が【新規】・【拡充】されています。これは、限られた人材で質の高いサービスを提供するための喫緊の課題であり、国が情報基盤の整備を強力に主導する姿勢を明確にしています。また、【拡充】された女性活躍促進において、新たに「女性の健康課題」への支援が明記されたことは、ジェンダー平等の観点だけでなく、労働参加を阻害する要因を取り除くという経済政策的な側面も併せ持つ重要な変化点です。
特別区への示唆
こうした国の大きな潮流を踏まえ、特別区は以下の視点を持って次年度の政策立案・予算編成に臨む必要があります。
- 国の制度の徹底活用と「翻訳」機能の強化
国の助成金や支援策はますます多様化・複雑化しています。区内の中小企業や福祉事業所がこれらの制度を最大限活用できるよう、分かりやすく情報提供し、申請をサポートする「伴走支援」の役割は、基礎自治体にとって極めて重要です。国の施策を地域の実情に合わせて「翻訳」し、届ける機能の強化が求められます。 - 「人」への投資と足腰の強い組織づくり
国の政策が「人への投資」を重視する中、自治体自身も職員の専門性向上に投資する必要があります。特に、複雑化する住民相談に対応するためのケースワーカー等の専門職の確保・育成や、全庁的なDXリテラシーの向上は待ったなしの課題です。地域住民や事業者だけでなく、行政組織自体の「人への投資」が、質の高い住民サービスの基盤となります。 - 都市部特有の課題への焦点化
国の包括的な方針を鵜呑みにするのではなく、単身高齢者の多さ、外国人住民との多文化共生、深刻な待機児童問題といった特別区特有の課題に即して、国の施策を戦略的に取捨選択・応用する視点が不可欠です。例えば、「地域包括ケアシステム」の構築においても、都市型のモデルを主体的に構想・実践していく必要があります。 - 「連携・協働」による地域課題解決力の向上
ひきこもり支援や困難を抱える女性支援など、複合的な課題に対応するためには、福祉・保健・教育・労働といった庁内の縦割りを越えた連携が不可欠です。同時に、地域のNPO、社会福祉協議会、企業、町会・自治会といった多様な主体とのパートナーシップを一層強化し、行政だけでは解決できない課題に地域全体で取り組む「プラットフォーム」としての役割を、区が積極的に担っていくことが期待されます。