首都直下地震対策:11年ぶりの基本計画改定と「減災」への新戦略
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
エグゼクティブサマリー
令和8年(2026年)6月12日、政府は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を閣議決定により変更し、公表しました。現行計画は平成26年3月に閣議決定(平成27年3月変更)されたものであり、今回は約11年ぶりの変更となります。変更は、中央防災会議防災対策実行会議の下に令和5年12月に設置された「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」の報告書(令和7年12月19日公表)を踏まえたものです。
今回の変更の中核には、被害想定の刷新があります。被害が甚大となる「都心南部直下地震(マグニチュード7.3)」を対象とした新たな想定では、最大で死者数が約1万8千人、建築物の全壊・焼失棟数が約40万棟とされ、平成25年の想定(死者数約2万3千人、全壊・焼失棟数約61万棟)から減少しています。一方で、死者数と全壊・焼失棟数の約7割は火災によるものとされ、停電軒数は約1,200万軒から約1,600万軒へと増加が見込まれるなど、被害の質的な特徴も改めて浮き彫りになりました。経済的被害は約95兆円から約83兆円、避難者数は約720万人から約480万人とされる一方、帰宅困難者は約840万人、災害関連死者は別途最大約1万6千人から4万1千人と推計されています。
これを受け、政府は今後10年間の減災目標を「死者数・全壊棟数の半減以上」に引き上げ、進捗を測る具体目標(指標)を従来の47個から189個へと大幅に拡充しました。基本的な考え方も「行政が守る者、国民が守られる者」という発想から「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」という発想へと転換し、防災意識の「自分ごと」化、防災DXの加速化、避難所という「場所」への支援から避難者という「人」への支援への重心移動などが明確に打ち出されました。
東京都特別区の観点からは、千代田区・中央区・港区・新宿区が「首都中枢機能維持基盤整備等地区」に指定されており、23区全域が緊急対策区域に含まれる点が重要です。なお、東京都はこの計画変更に対し、被害想定の見直しに既に着手しており今年度末を目途に東京の実態に即した新たな被害想定を取りまとめる方針を示すとともに、計画の一部記載が「東京が危ない」という誤ったメッセージとなりかねないとの懸念を表明しています。国の計画と都の方針、そして区の実務という三層の関係をどう整理するかが、特別区の防災行政にとって当面の論点になると考えられます。
意義
首都直下地震対策における基本計画の位置づけ
首都直下地震緊急対策推進基本計画は、首都直下地震対策特別措置法に基づき、首都直下地震に係る地震防災上緊急に講ずべき対策の推進に関する方針・施策等を定める計画です。計画体系上、政府が作成するこの基本計画を頂点として、緊急対策区域内の都県知事が作成する「地方緊急対策実施計画」、地方公共団体が作成する「特定緊急対策事業推進計画」「首都中枢機能維持基盤整備等計画」が連なる構造になっています。つまり基本計画の変更は、上位の方針が動くことを意味し、都県・区市町村が作成・運用する各種計画の見直しの起点となり得る性格を持っています。
「いつ起きてもおかしくない」前提の再確認
今回の見直しは、現行計画の策定から約10年が経過したことを契機としています。マグニチュード7クラスの地震はいつどこで発生してもおかしくなく、地震の発生が切迫していると考えて防災対策を行う必要があるという基本認識は維持されています。減災目標を定めた計画が10年単位で点検され、最新の科学的知見と防災対策の進捗を反映して目標と指標が刷新されたこと自体が、対策の「新陳代謝」を制度として組み込もうとする意義深い動きであると考えられます。
被害の「総量」だけでなく「質」に着目する転換
新たな被害想定が示した重要な論点は、死者・全壊棟数といった被害の総量が減少傾向にある一方で、火災による被害が依然として約7割を占めることです。これは、耐震化など予防対策の進展が一定の成果を上げつつも、火災をはじめとする残された課題が依然として大きいことを示すものと考えられます。なお、停電軒数の増加など一部の指標が前回想定を上回っている点については、公表資料において詳細な要因は示されておらず、被害想定の前提条件や算定手法の見直しを反映した可能性があり、断定的な解釈は避ける必要があります。いずれにせよ、被害の総量を追うだけでなく、どの被害が、どのメカニズムで生じるのかという「質」に踏み込んで対策を設計する必要性が、データの推移から読み取れます。
歴史・経過
計画の策定から今回の変更まで
現行の首都直下地震緊急対策推進基本計画は平成26年3月に閣議決定され、平成27年3月に変更されました。あわせて、平成26年3月には首都直下地震緊急対策区域(1都9県309市区町村)が指定され、千代田区・中央区・港区・新宿区が首都中枢機能維持基盤整備等地区として指定されています。これらの枠組みが約10年間、首都圏の地震防災対策の制度的な土台となってきました。
検討体制の立ち上げと報告書の公表
令和5年12月、中央防災会議防災対策実行会議の下に「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が設置されました。同ワーキンググループは、これまでの防災対策の進捗状況等を踏まえ、被害想定の見直しと新たな防災対策の検討を進め、令和7年12月19日に報告書を公表しました。今回の基本計画変更は、この報告書を直接の根拠としています。
令和8年6月12日の閣議決定
令和8年6月12日、ワーキンググループ報告書を踏まえた基本計画の変更が閣議決定されました。被害想定の刷新、今後10年の減災目標の再設定、具体目標の大幅な拡充、基本的方針の理念転換が一体として盛り込まれており、現行計画策定から約11年を経た節目の改定といえます。
被害想定の推移が物語るもの
平成25年想定と令和7年想定を比べると、変化の方向は一様ではありません。
減少した指標
死者数は約2万3千人から約1万8千人へ、全壊・焼失棟数は約61万棟から約40万棟へ、避難者数は約720万人から約480万人へ、避難所の食糧不足(7日間)は約3,400万食から約1,300万食へ、経済的被害は約95兆円から約83兆円へと、いずれも減少しています。これらの減少には、住宅の耐震化や出火防止の取組など、この10年間に積み重ねられた予防対策の進展が寄与している可能性があります。
増加・据え置きとなった指標
他方、停電軒数は約1,200万軒から約1,600万軒へと増加が見込まれています(この増加の要因は公表資料に詳細が示されておらず、想定の前提条件や算定手法の見直しを反映した可能性があります)。帰宅困難者は約840万人とされ、依然として膨大です。さらに、上記の死者数には含まれない災害関連死者が、過去災害を基に最大約1万6千人から4万1千人と推計されている点も重要です。総量が減ってもなお、ライフラインの途絶、帰宅困難、避難生活の長期化に伴う関連死といった「都市型・長期型」の被害リスクが残されていることが読み取れます。
現状データ
新たな被害想定の全体像(都心南部直下地震・M7.3)
東京圏は人口約3,690万人、建物棟数約965万棟という、極めて膨大な集積を抱えています。新たな被害想定の最大値では、人的被害の死者約1万8千人のうち、揺れ等によるものが約0.6万人、火災によるものが約1.2万人とされています。建物被害の全壊・焼失約40万棟も、揺れ等によるものが約13万棟、火災によるものが約27万棟と、火災の寄与が大きいことが内訳から確認できます。停電は約1,600万軒、避難者は約480万人、避難所の食料不足(7日間)は約1,300万食、帰宅困難者は約840万人と見込まれています。なお、これらの被害量は一定の条件下の試算である点に留意が必要です。
減災目標の引き上げ
今後10年間の減災目標は、現行の「死者数約2万3千人からおおむね半減」「全壊棟数約61万棟からおおむね半減」から、新想定を起点として「死者数約1万8千人から半減以上」「全壊棟数約40万棟から半減以上」へと引き上げられました。加えて、災害関連死や経済的被害を最大限減らすことを目指すと明記されています。被害想定の起点が下がったうえで削減率の目標が「おおむね半減」から「半減以上」へと厳格化されたことは、目標の質的な強化を意味すると考えられます。
具体目標の拡充と主要指標の推移
進捗を測る具体目標(指標)は、現行の47個から189個へと大幅に拡充されました。「首都直下地震緊急対策区域」を対象とした具体目標が充実され、国土強靱化実施中期計画等を踏まえた目標も設定されています。以下では、特別区の実務に関わりの深い指標の推移を確認します。
防災意識の醸成・社会全体での体制構築に関する指標
各個人の備えに関しては、家具の固定率が全国で38%(令和7年)から100%(令和17年)へ、食料品を3日分以上備蓄している家庭の割合が60%(令和7年)から100%(令和17年)へ、飲料水を3日分以上備蓄している家庭の割合が70%(令和7年)から100%(令和17年)へという目標が設定されています。企業の事業継続では、BCPの策定完了率が大企業で75.8%(令和7年)から100%(令和17年)へ、中堅企業で54.8%(令和7年)から80%(令和17年)へとされています。防災DXに関しては、新総合防災情報システム(SOBO‐WEB)の利用率を、令和6年4月の運用開始(令和5年時点0%)から令和12年に100%とする目標が掲げられました。
多様な連携に関する指標
緊急対策区域の市町村を対象とした指標では、十分な救助用資機材を備えた消防団の割合が83.5%(令和6年)から100%(令和12年)へ、地域ボランティア人材育成研修等の開催完了率が2%(令和7年)から100%(令和17年)へと、現状の達成度に大きな開きがある指標も含まれています。とりわけボランティア人材育成研修の初期値が2%にとどまる点は、平時の担い手育成が今後の重点課題となる可能性を示しています。
予防による被害軽減に関する指標
建築物・施設の耐震化では、緊急対策区域の市町村(人口1万5千人未満を除く)における住宅の耐震化率が92%(令和5年)に達しており、令和17年に耐震性が不十分なものをおおむね解消することを目指すとされています。火災対策では、緊急対策区域(都県)における感震ブレーカーの設置率が20%(令和6年)からおおむね設置(令和17年)へ、著しく危険な密集市街地の面積の解消率が84%(令和6年)から100%(令和12年)へと設定されています。ライフラインでは、水道の導水管・送水管の耐震化完了率が48%(令和5年)から62%(令和12年)へ、下水道管路の耐震化完了率が71%(令和5年)から81%(令和12年)へとされています。道路関連では、緊急輸送道路上の橋梁の耐震化率が84%(令和5年)から90%(令和12年)へ、第一次緊急輸送道路における無電柱化整備完了率が68%(令和5年)から82%(令和12年)へと推移を目指す目標が掲げられています。
災害対応力の強化に関する指標
受援体制では、緊急対策区域の市町村における受援計画の策定率が84%(令和7年)から100%(令和15年)へとされています。物資管理では、新物資システム(B‐PLo、令和7年4月運用開始)の操作訓練参加率を、令和6年時点0%から令和12年に100%とする目標が設定されました。避難生活環境では、スフィア基準を満たす避難所の設置に必要なトイレ・ベッド等の災害用物資・資機材の備蓄を行っている市区町村の割合を、令和12年に100%とすることが目指されています。
災害対応ニーズの抑制・役割の分担に関する指標
在宅避難・マンション防災では、年1回以上防災訓練を実施しているマンションの割合が緊急対策区域(マンション管理組合)で51%(令和5年)から100%(令和15年)へ、地震時管制運転装置の設置率が緊急対策区域(都県)で48%(令和6年)から70%(令和17年)へとされています。広域的避難では、ホテル・旅館等を避難所として活用する際のマニュアルを作成している都県の割合を30%(令和6年)から100%(令和17年)とする目標が掲げられました。マンション居住者が多いとされる特別区にとって、これらの指標は実態と直結する論点であると考えられます。
迅速な復興・より良い復興への備えに関する指標
今回新たに項立てされた「迅速な復興・より良い復興への備え」では、災害廃棄物処理計画策定率が緊急対策区域(市町村)で94%(令和7年)から100%(令和12年)へ、優先実施地域における地籍調査の完了率が緊急対策区域(都県)で66%(令和6年)から72%(令和11年)へとされています。事前復興まちづくり計画の策定促進も明記されており、発災後の復興を平時から準備しておく発想が制度に組み込まれた点が特徴です。
政策立案の示唆
この取組を行政が行う理由
首都直下地震対策が国家的課題として位置づけられる根本的な理由は、東京圏が人口・建物・諸機能の極度の集積地であり、被害が首都中枢機能の停滞・低下を通じて国内外に波及するためです。政府機関の業務再開に一定の制約が生じる可能性、企業の本社系機能がライフラインやデータセンターの被災により停滞・低下する可能性、通信停止によるキャッシュレス決済の停止や情報入手の困難、サプライチェーンを通じた国内外への影響など、被害は単一都市の問題にとどまりません。だからこそ、国・自治体・事業者・地域が連携し、減災目標と具体目標を共有して進捗を管理する枠組みが必要とされていると考えられます。
減災目標を毎年フォローアップする仕組み
国は、各分野の専門家の意見を聞きながら、減災目標の達成に必要な施策の具体目標または定性的目標の進捗把握と課題共有等のフォローアップを毎年実施するとされています。10年単位の目標を毎年点検することで、施策の優先順位を機動的に組み替える「新陳代謝」の仕組みが意図されている可能性があります。指標が47個から189個へと細分化されたことも、進捗を可視化し、停滞している分野を早期に特定するための布石と捉えることができます。
行政側の意図
今回の変更で明確に打ち出された意図は、防災の主体を社会全体へと広げることです。「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」という考え方への転換、防災意識の「自分ごと」化の明記は、行政資源の限界を前提に、自助・共助の比重を高めようとする姿勢を示しています。
「場所」から「人」への支援の重心移動
避難所という「場所」の支援から、避難者という「人」への支援へと考え方を転換し、スフィア基準を考慮した避難所等の生活環境向上を進める方針が示されました。あわせて「在宅避難」「広域的避難」「フェーズフリー」といった要素が強調・追加されています。これは、避難所収容を前提とする従来型の発想だけでは、膨大な避難者と多様な被災者(高齢者、子ども、外国人、マンション住民等)に対応しきれないという現実認識に基づくものと考えられます。
首都中枢機能の「冗長性・代替性」への踏み込み
首都中枢機関にはBCPの作成のみならず実効性の向上が求められること、ライフライン・インフラについて耐震化・早期復旧だけでなく「冗長性・代替性の確保」に取り組むこと、東京圏において首都中枢機能の維持が困難となる最悪の事態も想定した一時的な代替拠点の検討を行うことが明記されました。単一拠点・単一経路に依存しないシステム設計へと、機能維持の発想が一段深化したと評価できます。
期待される効果
期待される効果は、第一に、被害の「予防による軽減」です。住宅の耐震化率が92%(令和5年)まで進み、感震ブレーカーの設置率を20%(令和6年)からおおむね設置へと引き上げる目標が示されたように、出火・倒壊そのものを減らす取組が、火災が被害の約7割を占めるという構造に正面から対応します。第二に、「災害対応力の強化」です。受援計画の策定率を84%(令和7年)から100%(令和15年)へ、新物資システムの操作訓練参加率を0%(令和6年)から100%(令和12年)へと高めることで、発災後の応急対応の速度と確実性の向上が期待されます。第三に、「災害対応ニーズの抑制と役割の分担」です。在宅避難や広域的避難、一斉帰宅抑制の普及により、避難所や帰宅困難への集中的な負荷を平準化する効果が見込まれます。ただし、これらの効果はいずれも目標が達成された場合の見通しであり、実現には継続的な投資と担い手確保が前提となる点に留意が必要です。
課題・次のステップ
課題として第一に挙げられるのは、初期値と目標値の乖離が大きい指標群です。地域ボランティア人材育成研修等の開催完了率が2%(令和7年)、主要鉄道路線等の駅・高架橋等の耐震化率が0%(令和6年)から42%(令和12年)など、達成までの道のりが長い指標が含まれており、年次のフォローアップで進捗が遅れた場合の対応が問われます。
初期値が未把握の新規目標
温かい食事の提供に関する事業者等との協定締結割合、災害対策本部周辺等の強靱化が求められる基地局の整備完了率、スフィア基準を満たす避難所の物資・資機材を備蓄している市区町村の割合など、新規目標につき初期値が把握できていない指標も少なくありません。まずは現状値を正確に把握する調査・モニタリングの体制づくりが、次のステップとして不可欠であると考えられます。
国の計画と地方の計画の整合
計画の効果的な推進にあたっては、関係都県による地方緊急対策実施計画の作成のほか、緊急対策区域の市町村、指定行政機関、指定公共機関等においても、基本計画の趣旨を踏まえ、必要に応じて地域防災計画等を見直すこととされています。国の目標と地方の実態をどのように接続し、財源・人員を確保しながら計画を更新していくかが、実務上の最大の課題になる可能性があります。
特別区への示唆
東京都特別区にとって、今回の計画変更は二重の意味で重要です。まず、千代田区・中央区・港区・新宿区が首都中枢機能維持基盤整備等地区に指定されており、これらの区は首都中枢機能の維持及び滞在者等の安全確保を図るべき地区として位置づけられています。次に、東京都の全区市町村が緊急対策区域に含まれるため、住宅の耐震化、感震ブレーカーの設置促進、密集市街地の整備、マンション防災、在宅避難・帰宅困難者対策、受援体制の整備など、拡充された具体目標の多くが各区の施策と直接結びつきます。
マンション・密集市街地・帰宅困難という都市型課題
特別区には、マンションにお住まいの方が多いとされ、地域によっては昼間人口が夜間人口を上回る傾向があるとされています。年1回以上防災訓練を実施しているマンションの割合を100%へ、地震時管制運転装置の設置率を70%へと高める目標や、一斉帰宅抑制・一時滞在施設の確保・徒歩帰宅支援の方針は、こうした特別区の人口構造・就業構造にとって実効性が問われる論点です。在宅避難を前提とした備蓄の普及啓発と、マンション管理組合・事業者との連携強化が、避難所への過度な集中を抑える鍵になると考えられます。
国と都の方針のはざまでの実務判断
東京都は、被害想定の見直しに既に着手しており、今年度末を目途に東京の実態に即した新たな被害想定を取りまとめ、これと国の計画を踏まえて地域防災計画の見直しを行う方針を示しています。同時に都は、二地域居住を防災目的で推進することや最悪の事態を想定した一時的な代替拠点の確保といった国の計画の一部記載について、「東京が危ない」という誤ったメッセージとなりかねないとの懸念を表明しています。特別区の実務担当者としては、国の基本計画と都の新被害想定・地域防災計画という二つの上位文書が今後並行して動くことを前提に、区の地域防災計画やマンション防災・帰宅困難者対策・受援計画の見直し時期を見極めることが求められる可能性があります。
財政・人員の確保という共通の制約
拡充された189個の具体目標の多くは、ハード整備や継続的な訓練・普及啓発を必要とし、いずれも財源と人員を伴います。特別区は都区財政調整制度の枠組みの下で財政運営を行っており、防災・減災投資の優先順位づけと、国・都の補助制度や交付金の活用可能性を平時から整理しておくことが、目標達成の現実性を高めると考えられます。初期値が未把握の新規目標については、まず各区が自らの現状を測る指標を整備し、進捗を毎年点検できる体制を組むことが、国のフォローアップと歩調を合わせるうえでも有効である可能性があります。
まとめ
今回の首都直下地震緊急対策推進基本計画の変更は、約11年ぶりに被害想定を刷新し、今後10年の減災目標を「半減以上」へと引き上げ、進捗を測る具体目標を47個から189個へと大幅に拡充した、節目の改定です。被害の総量が減少傾向を示す一方で、死者・全壊棟数の約7割が火災によること、停電軒数の増加が見込まれること、災害関連死や帰宅困難という都市型・長期型のリスクが依然として大きいことが、新たなデータから改めて確認されました。こうした被害の「質」に踏み込み、予防による被害軽減、災害対応力の強化、災害対応ニーズの抑制と役割の分担という三つの柱で対策を再構成した点に、今回の見直しの本質があると考えられます。
理念面では、「行政が守る者、国民が守られる者」から「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」への転換、防災意識の「自分ごと」化、避難所という場所から避難者という人への支援の重心移動、首都中枢機能の冗長性・代替性の確保が打ち出され、防災DXの加速化が横断的な推進力として位置づけられました。これらは、行政資源の限界を前提に、自助・共助・公助を再設計しようとする方向性として読み取ることができます。
東京都特別区にとっては、千代田区・中央区・港区・新宿区が首都中枢機能維持基盤整備等地区として位置づけられ、東京都の全区市町村が緊急対策区域に含まれるという二重の当事者性が、この計画変更の重みを高めています。同時に、東京都が年度末を目途に新たな被害想定を取りまとめ、地域防災計画の見直しを進める方針を示し、国の計画の一部記載に懸念を表明していることから、国・都・区の三層の整合をどう図るかが当面の論点となる可能性があります。マンション防災、密集市街地の整備、在宅避難・帰宅困難者対策、受援体制の整備といった都市型課題に、財源と人員の制約のなかで優先順位をつけ、初期値の把握から進捗の年次点検までを一連の流れとして組み立てていくことが、特別区の防災行政に求められていると考えられます。減災目標を毎年フォローアップする国の仕組みに歩調を合わせ、区の計画もまた継続的に「新陳代謝」させていく姿勢が、世界最大級の過密都市の安全を支える礎になると考えられます。




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