16 福祉

障害福祉計画・基盤整備

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

  • 本記事は、東京都特別区の公務員が障害福祉分野の政策立案を行う際の基礎資料となることを目的としています。
  • 障害福祉計画の策定・推進、関連施設の整備・運営、そしてサービス提供体制の充実は、障害の有無にかかわらず誰もが尊重され、共に生きる「共生社会」を実現するための根幹をなす施策です。
  • 本稿では、最新の公的データや調査報告に基づき、現状と課題を多角的に分析し、実効性のある具体的な支援策を提言します。

概要(障害福祉計画・基盤整備を取り巻く環境)

  • 自治体が障害福祉計画・基盤整備を行う意義は、「障害者の尊厳を保障し、地域社会の一員として自立した生活を送るための基盤を構築すること」と「共生社会の実現に向けた法的・社会的責務を果たすこと」にあります。
  • これは、障害者総合支援法や障害者基本法に基づき、体系的に推進されるべき取り組みです。
  • 近年の障害福祉政策は、従来の施設入所中心の考え方から、障害者が住み慣れた地域で生活を継続することを基本とする「地域生活移行」へと大きく舵を切っています。
  • この方針転換は理念に留まらず、国の障害福祉計画では、施設入所者数の削減や地域生活への移行者数について具体的な数値目標が掲げられており、自治体にはその着実な実行が求められています。

意義

住民にとっての意義

サービス選択の自由と質の高い生活の保障
  • グループホームや日中活動の場、就労支援など、多様なサービス基盤が整備されることで、障害のある本人やその家族は、自らの希望やライフスタイルに合った生活を選択できるようになります。これは、画一的な支援からの脱却を意味し、自己決定権の尊重に直結します。
地域での安心した暮らしの継続
  • 共同生活援助(グループホーム)や居宅介護といった地域密着型サービスが充実することで、障害者は親元や入所施設を離れても、住み慣れた地域で社会とのつながりを維持しながら生活を続けることが可能になります。これは、特に介護者である親の高齢化が進む中で、「親亡き後」の生活に対する深刻な不安を軽減する上で極めて重要です。

地域社会にとっての意義

共生社会の実現
  • 多様な障害福祉施設が地域に存在し、障害のある人々が当たり前に地域の一員として活動することは、住民の障害への理解を深め、偏見や差別をなくす土壌を育みます。これは、障害者基本法が目指す「共生社会」の具体的な姿です。
地域経済への貢献

行政にとっての意義

法的責務の履行
計画的な社会資本整備と財政の効率化
  • 場当たり的な対応ではなく、将来の需要を見据えた計画的な基盤整備を行うことで、限られた財源や人材といった行政資源を効率的かつ効果的に配分できます。特に、大規模な入所施設から多様な地域サービスへと支援の重心が移る中で、計画的な投資は中長期的な財政負担の適正化につながります。

(参考)歴史・経過

1970年(昭和45年)
  • 総合的な障害者施策の基本理念を定めた「心身障害者対策基本法」が制定されました。これが現在の障害者基本法の前身です。
1993年(平成5年)
  • 法律名が「障害者基本法」に改正され、対象として精神障害者が明確に位置づけられました。
2003年(平成15年)
2006年(平成18年)
2013年(平成25年)
  • 障害者自立支援法が抜本的に見直され、現在の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」が施行されました。対象に難病等が加わり、地域生活を支えるサービスが強化されました。
2016年(平成28年)
  • 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行され、行政機関等に「合理的配慮の提供」が義務付けられました。
2024年(令和6年)
  • 「第7期障害福祉計画」及び「第3期障害児福祉計画」がスタートしました。国の基本指針では、地域生活への移行のさらなる推進、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、障害児支援の充実などが重点項目として掲げられています。

障害福祉計画・基盤整備に関する現状データ

障害者数の動向
  • 日本の障害者数(推計)は、身体障害者436万人、知的障害者109.4万人、精神障害者614.8万人で、精神障害者数が最も多くなっています。
  • 障害者数は全体として増加傾向にあり、特に精神障害者保健福祉手帳の所持者数と、知的障害を示す愛の手帳の所持者数が顕著に増加しています。これは、障害への認知度向上や発達障害の概念浸透が背景にあると考えられます。
  • 身体障害者の高齢化が著しく、在宅の身体障害者のうち65歳以上が占める割合は72.6%(2016年調査)に達し、1970年の約3割から大幅に上昇しています。障害者施策と高齢者施策の連携が不可欠であることを示しています。
障害福祉サービス事業所の状況
  • 全国の障害福祉サービス事業所数は増加を続けています。例えば、共同生活援助(グループホーム)の事業所数は、平成30年の9,772か所から令和4年には11,707か所へと、5年間で約20%増加しています。
  • 東京都特別区内においても事業所数は増加しており、令和5年度時点で約4,200か所存在します。サービス種別では、就労系サービスが最も多く、次いでグループホーム、生活介護の順となっています。
  • しかし、この事業所数の増加は、増え続ける需要に追いついていないのが実情です。特に、地域生活の核となるグループホームの不足は深刻で、計画的な供給体制の構築が追いついていません。
地域生活への移行と待機者の状況
精神科病院からの退院支援の状況

課題

住民の課題

居住の場の深刻な不足と選択肢の欠如
  • 障害者が地域で暮らすためのグループホームが絶対的に不足しており、多くの人が入所を希望しながらも入れない「待機者」となっています。特に、親の高齢化が進む中で「親亡き後」の生活の場が確保できないことへの不安は、家族にとって極めて深刻な問題です。
    • 客観的根拠:
      • NHKが実施した調査によると、全国で施設やグループホームへの入所を待つ人は延べ22,000人に上ります。
      • 東京都議会では、強度行動障害のある人が都内や近県の30カ所以上の施設に問い合わせても、満員や特性を理由に断られ、結果的に遠方の青森県の施設に入所せざるを得なかった事例が報告されています。
      • 東京都のデータでも、施設入所待機者数は長年にわたり高い水準で推移しており、問題の根深さを示しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 介護者である家族の心身の疲弊が限界に達し、虐待や介護殺人、無理心中といった悲劇につながるリスクが著しく高まります。
低い工賃と経済的自立の困難
  • 就労継続支援B型事業所における平均工賃は全国的に極めて低い水準にあり、障害基礎年金と合わせても、障害者が経済的に自立した生活を送ることは非常に困難な状況です。
    • 客観的根拠:
      • 令和2年度の就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額は15,776円です。
        • (出典)障害者専門税理士ドットコム「(https://www.dotline-jp.com/knowledge/%E3%80%90%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E7%89%88%E3%80%91%E8%A8%93%E7%B7%B4%E7%AD%89%E7%B5%A6%E4%BB%98%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E5%86%85%E5%AE%B9%E3%81%A8%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E8%80%85%E3%81%BE/)」 24
      • 一方で、徳島県は同年度に平均21,631円を達成しており、自治体や事業所の取り組み次第で工賃向上が可能であることを示唆しています。令和5年度には、算定方法の変更があったものの、徳島県は29,312円で全国第1位を維持しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 障害者の貧困が固定化し、自己肯定感の低下や社会参加への意欲減退を招き、生活全体の質が低下します。

地域社会の課題

障害福祉施設の地域偏在
  • グループホームや生活介護事業所といった障害福祉サービス施設が、特定の地域に集中し、他の地域では不足するという「地域偏在」が顕著になっています。これにより、障害者が住み慣れた地域で必要なサービスを受けられない事態が生じています。
    • 客観的根拠:
      • 特別区内において、人口10万人あたりの事業所数に最大で約2.2倍の格差が存在します。
      • このため、特別区の障害福祉サービス利用者のうち約35.8%が、居住する区以外の施設を利用しており、地域コミュニティとのつながりが分断される一因となっています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施設が不足する地域では住民のサービス選択肢が著しく狭まり、居住地による行政サービスの質の格差が拡大・固定化します。
精神障害者への支援体制の脆弱性
  • 精神障害者数は増加の一途をたどっていますが、長期入院からの地域移行を支える住まいの場や、地域での生活を継続するためのアウトリーチ(訪問支援)といったサービスが質・量ともに不足しており、支援体制が脆弱です。
    • 客観的根拠:
      • 全国の精神科病院では、約17万人が1年以上の長期入院を続けており、退院を阻む最大の要因の一つが、退院後の住居が確保できないことです。
      • 国の第7期障害福祉計画では「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」が重点課題とされていますが、その中核を担う専門人材や事業所が絶対的に不足しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 退院しても地域で孤立し、病状が悪化して再入院を繰り返す「回転ドア現象」を招き、本人のリカバリーを妨げるとともに社会的な医療コストを増大させます。

行政の課題

専門人材の深刻な不足と高い離職率
  • 障害福祉分野は、全産業平均と比較して有効求人倍率が極めて高く、慢性的な人材不足に陥っています。処遇改善加算等の施策は講じられているものの、他産業との人材獲得競争の中で、確保・定着の決め手とはなっていないのが現状です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • サービスの質の低下、既存職員のバーンアウト、事業所の倒産・撤退を招き、地域全体のサービス供給基盤が崩壊する恐れがあります。
新規施設整備における用地確保とコストの課題
  • 特に地価の高い東京都特別区において、グループホーム等の障害福祉施設を新たに整備するための用地確保は極めて困難であり、高い建築コストと合わせて、事業者の新規参入を阻む大きな障壁となっています。
    • 客観的根拠:
      • 世田谷区では、この課題に対応するため、「障害者施設整備等に係る基本方針」において、区有地や都営住宅跡地などの公有地を積極的に活用する方針を明確に打ち出しています。
      • また、事業者負担を軽減するため、土地賃借料への補助など、自治体独自の補助制度を導入する動きが先進的な自治体で見られます。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 新規施設の供給が完全に停滞し、待機者問題が永遠に解決されず、国が推進する地域移行という政策目標が達成不可能になります。
計画と実態の乖離
  • 自治体が策定する障害福祉計画において、サービスの必要量(見込量)が掲げられているものの、実際の整備状況や待機者数との間に大きな乖離が生じており、計画の実効性が十分に担保されていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 計画が「絵に描いた餅」となり行政への信頼が損なわれると共に、場当たり的な対応に終始することで非効率な財政運営を招きます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、かつ一時的ではなく長期的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や先行自治体の成功事例など、エビデンスに基づき効果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 障害福祉の基盤整備における課題は、「住まい(居住の場)」「担い手(人材)」「日中活動・所得(経済的自立)」の3つに集約されます。これらは相互に密接に関連しており、個別の対応では十分な効果は期待できません。例えば、住まいの場(グループホーム)を増やしても、それを支える担い手がいなければ運営できず、日中の活動の場や所得がなければ地域での生活は成り立ちません。
  • したがって、これら3つの課題に同時にアプローチする、包括的な支援策パッケージを一体的に推進することが不可欠です。
  • 中でも、全ての基盤となる「住まいの確保」と、それを支える「担い手の確保・育成」は、喫緊の課題であり、最優先で取り組むべき施策です。「親亡き後」の不安に直結するグループホーム不足と、サービス提供の前提となる人材不足は、放置すれば制度そのものの持続可能性を揺るがしかねません。
  • これらと並行して、生活の質と自立に不可欠な「所得向上」を強力に推進することで、3つの施策が相乗効果を生み出し、障害者の地域生活を確固たるものにします。

各支援策の詳細

支援策①:多様な居住の場の確保と地域移行の加速

目的
主な取組①:公有地活用と戦略的補助による重度障害者向けグループホームの整備促進
  • 区有地や都有地、学校の余裕教室などをグループホーム整備用地としてリスト化し、事業者へ積極的に情報提供するとともに、低廉な価格で貸与・売却します。
  • 世田谷区の先進事例を参考に、特に医療的ケアや強度行動障害のある人など、支援ニーズの高い障害者を受け入れるグループホームに対し、以下の区独自の補助制度を創設・拡充します。
    • 土地・建物の賃借料補助
    • 防音・バリアフリー化等の改修費補助
    • 国の基準を上回る手厚い人員配置を可能にするための運営費への上乗せ補助
  • 客観的根拠:
    • 世田谷区は「障害者施設整備等に係る基本方針」において、公有地活用と重度障害者向けグループホームの整備を重点課題と位置づけています。
    • 同区の「障害者グループホーム等整備費補助金交付要綱」は、事業者への具体的な財政支援策を定めており、有効なモデルとなります。
主な取組②:精神科病院からの退院支援と住まいの場の連携強化
  • 精神科病院の長期入院者の退院を支援する「地域移行支援事業所」と、受け皿となるグループホームやアパートの斡旋を行う「居住支援法人」との連携協議会を区が主宰し、情報共有とマッチングを促進します。
  • 豊島区の事例を参考に、ひきこもりや受療中断など、支援が届きにくい精神障害者等に対して専門チームが自宅等を訪問するアウトリーチ支援事業(例:「豊島区C-NET」)を区の委託事業として実施し、医療や福祉サービスへの橋渡しを行います。
  • 客観的根拠:
    • 国の第7期障害福祉計画では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が重点項目とされています。
    • 豊島区の「C-NET(地域生活支援ネットワーク)」は、保健所や社会福祉協議会、医療機関が連携し、アウトリーチによって多くの困難ケースを支援につなげている全国的な成功事例です。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内の障害福祉施設(グループホーム等)の待機者数を3年間で50%削減、5年間でゼロにする。
    • データ取得方法: 区内の相談支援事業所及び基幹相談支援センターを通じて、待機者リストを年2回更新・集計。
  • KSI(成功要因指標)
    • 重度障害者対応型グループホームの新規整備箇所数(年間目標値を設定)。
    • データ取得方法: 障害福祉主管課による事業所指定状況の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 施設入所者の地域生活への移行率(国の目標値に準拠)。
    • データ取得方法: 区内障害者支援施設からの定期報告。
    • 精神科病院からの退院後1年以内の地域定着率。
    • データ取得方法: 地域移行支援事業所及び基幹相談支援センターによるモニタリング結果の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公有地を活用した整備事業の公募件数及び成約件数。
    • データ取得方法: 資産活用所管課及び障害福祉主管課による実績集計。
    • 区独自の家賃補助・運営費補助の対象となった事業所数。
    • データ取得方法: 障害福祉主管課による補助金交付実績の集計。

支援策②:障害福祉を支える人材の確保・育成と処遇改善

目的
主な取組①:「福祉・介護職員処遇改善加算」の取得・活用コンサルティング事業
  • 社会保険労務士等の専門家チームを区が委託し、区内事業所を対象に、令和6年度から一本化された「福祉・介護職員等処遇改善加算」の計画書作成、賃金改善のシミュレーション、就業規則・給与規程への反映、事務作業の効率化等を無料で支援します。
  • 特に、加算分を一時金や手当ではなく基本給に組み込むことで月給の安定化と魅力向上を図る手法や、キャリアパス要件と連動した賃金体系の構築を重点的に指導し、加算の効果を最大化します。
  • 客観的根拠:
主な取組②:区独自の体系的な人材育成・キャリアパス支援研修の実施
  • 練馬区の先進事例を参考に、区が主体となって、区内事業所の職員を対象とした体系的な研修プログラムを無料で提供します。
  • 研修内容は、新人職員向けの基礎研修、中堅職員向けの専門性向上研修、管理者向けのマネジメント研修など、キャリアパスに応じた階層別の構成とします。
  • 介護福祉士や精神保健福祉士などの資格取得支援講座や、医療的ケア、強度行動障害など、特にニーズの高い専門分野の研修を重点的に実施します。
  • 客観的根拠:
    • 練馬区の「練馬福祉人材育成・研修センター」は、年間100回以上の無料研修を提供し、スキルアップとキャリアアップを地域一体で支援する全国でも先進的な事例です。
      • (出典)練馬福祉人材育成・研修センター「事業案内35
    • 東京都福祉保健財団も、法人責任者や管理者向けの人材マネジメント研修を実施しており、公的機関による体系的な研修の重要性を示しています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内障害福祉事業所の職員離職率を3年間で全国平均以下に低減させる。
    • データ取得方法: 区内事業所を対象とした年1回の雇用状況調査(区独自実施)。
  • KSI(成功要因指標)
    • 福祉・介護職員等処遇改善加算(新加算)の区内事業所における取得率95%以上を達成。
    • データ取得方法: 国保連データ及び区への届出状況から集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 区内障害福祉職員の平均勤続年数の伸長。
    • データ取得方法: 区内事業所を対象とした雇用状況調査。
    • 採用応募者数の対前年比増加率。
    • データ取得方法: 区内主要法人へのヒアリング調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 処遇改善コンサルティングの実施事業所数。
    • データ取得方法: 区の委託事業者からの事業実績報告。
    • 区が主催する階層別研修の延べ参加者数。
    • データ取得方法: 研修事業の申込・参加実績データ。

支援策③:経済的自立と社会参加を促進する就労支援の強化

目的
  • 就労継続支援B型事業所の平均工賃を全国トップレベルに引き上げ、利用者の経済的自立を支援します。
  • 障害者の多様な働き方を創出し、本人の希望と適性に応じた一般就労への移行を促進します。
主な取組①:「共同受注窓口」の設置と運営支援
  • 徳島県の成功事例をモデルに、区内の就労継続支援B型事業所等が連携する「共同受注窓口」の設立を区が支援します。
  • 窓口は、企業や官公庁からの大口の仕事(データ入力、軽作業、清掃等)を一括で受注し、各事業所の能力に応じて再配分する役割を担います。
  • 併せて、各事業所が製造する自主製品(菓子、雑貨等)の品質管理、共同での商品開発、統一ブランドでのマーケティング、ECサイト運営等も行い、付加価値と販売力を高めます。
  • 区は、窓口の立ち上げ費用、運営費、専門人材(経営アドバイザー、デザイナー等)の配置費用を補助します。
  • 客観的根拠:
    • 徳島県は、共同受注窓口の活用や農福連携の推進等により、B型事業所の平均工賃月額で長年全国第1位を維持しており、極めて有効なモデルです。
      • (出典)徳島県「工賃(賃金)実績について」令和6年 25
      • (出典)障害者専門税理士ドットコム「(https://www.dotline-jp.com/knowledge/%E3%80%90%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E7%89%88%E3%80%91%E8%A8%93%E7%B7%B4%E7%AD%89%E7%B5%A6%E4%BB%98%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E5%86%85%E5%AE%B9%E3%81%A8%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E8%80%85%E3%81%BE/)」 24
    • 国の工賃向上計画支援事業においても、共同受注窓口の体制整備は重要な支援メニューと位置づけられています。
主な取組②:農福連携・工福連携のマッチング推進
  • 区内の農業公園やJA、商工会議所、工業団体等と連携し、障害福祉事業所と地域の農家・企業とのマッチング会を定期的に開催します。
  • 農福連携では、農作物の栽培・収穫・加工・販売といった一連のプロセスに障害者が関わる機会を創出します。
  • 工福連携では、事業所が生産した部品や加工品を地元企業が活用するサプライチェーンの構築や、企業からの施設外就労の受け入れを促進します。
  • 客観的根拠:
    • 徳島県の工賃向上計画では、農福連携による障がい者の就農促進が重点項目として掲げられています。
    • 厚生労働省も、自治体の農政部局と福祉部局が連携して施設外就労を推奨した事例を好事例として紹介しており、分野横断的な連携の有効性を示しています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内B型事業所の平均工賃月額を3年間で30%向上させる。
    • データ取得方法: 各事業所からの工賃実績報告(障害福祉主管課が集計)。
  • KSI(成功要因指標)
    • 共同受注窓口経由の年間受注総額。
    • データ取得方法: 共同受注窓口からの事業実績報告。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 就労継続支援事業所から一般就労への移行者数(国の目標値に準拠)。
    • データ取得方法: 各事業所からの実績報告及びハローワークとの連携データ。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 共同受注窓口の設立数(当面は1か所)。
    • データ取得方法: 障害福祉主管課による設立支援実績。
    • 農福連携・工福連携のマッチング成立件数。
    • データ取得方法: マッチング会等のイベント実績報告。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「公有地活用と独自補助による重度障害者グループホーム整備」

  • 世田谷区は、地価の高さという都心部共通の課題に対し、区有地や都営住宅跡地を戦略的に活用してグループホームの整備を促進しています。特に、医療的ケアや強度行動障害など、特に支援ニーズの高い重度障害者を受け入れる事業者に対しては、国の基準に上乗せする形で運営費を区独自に補助する制度を設けています。これにより、事業者の参入障壁を下げ、採算性の確保が難しい重度者向け施設の整備を誘導しています。これは、待機者の解消と地域の施設偏在是正を目指す、具体的かつ実効性の高い取り組みとして評価できます。

豊島区「精神障害者へのアウトリーチ支援チーム(C-NET)の展開」

  • 豊島区は、ひきこもりや治療中断など、既存の支援制度では対応が困難な精神障害者等に対し、多職種によるアウトリーチ(訪問支援)チーム「C-NET(地域生活支援ネットワーク)」を展開しています。保健所、社会福祉協議会、医療機関、相談支援事業所などが連携し、精神科医・保健師・精神保健福祉士等からなる専門チームが本人の自宅等を訪問します。本人の意向を丁寧に聞き取りながら、医療や福祉サービスに繋げ、地域生活への移行・定着を包括的に支援するこのモデルは、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの具体的な形として全国から注目されています。

練馬区「地域一体での福祉人材育成・研修システムの構築」

  • 練馬区は、福祉人材の確保・育成という業界全体の課題に対し、区が主体となって「練馬福祉人材育成・研修センター」を設置・運営しています。このセンターでは、区内の介護・障害福祉サービス事業所の職員を対象に、年間100回以上の専門研修を無料で提供しています。新人向けの基礎研修から、中堅職員向けのスキルアップ研修、管理者向けのマネジメント研修まで、キャリアパスに応じた体系的なプログラムが組まれており、資格取得支援も行っています。個々の事業所の努力に任せるのではなく、地域全体で人材の質と定着率の向上を図る先進的な取り組みです。
    • 客観的根拠:
      • (出典)練馬福祉人材育成・研修センター「事業案内35
      • (出典)練馬福祉人材育成・研修センター「研修のご案内41

全国自治体の先進事例

徳島県「共同受注窓口を核とした工賃向上モデル」

  • 徳島県は、長年にわたり就労継続支援B型事業所の平均工賃月額で全国トップクラスを維持しています。その成功の核となっているのが、県と社会福祉法人等が連携して設置した「共同受注窓口」です。この窓口が、県内の事業所の製品・サービスの品質管理、共同での商品開発、統一ブランド(「awanowa」)でのマーケティング、企業や官公庁からの受注調整を一元的に担っています。これにより、個々の事業所の営業力の弱さを補い、高付加価値化と販路拡大を実現しています。工賃向上という成果に直結した、極めて戦略的な官民連携モデルです。

浜松市「デジタル技術を活用した移動支援の充実」

  • 浜松市は、スマートシティ構想の一環として、AI活用型オンデマンドバスや自動運転技術を導入した「浜松版MaaS(Mobility as a Service)」を推進しています。これにより、公共交通機関が不便な地域に住む障害者や高齢者の移動手段を確保し、通院や買い物、社会参加を支援しています。官民データ連携基盤を構築し、多様な主体との協働によって地域課題を解決するこのモデルは、障害者の生活範囲を広げ、QOLを向上させる上で有効なアプローチです。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区における障害福祉計画と基盤整備は、障害者人口、特に精神・知的障害者の増加とニーズの多様化・重度化という大きな変化に直面しています。施設の待機者問題、深刻な人材不足、経済的自立を阻む低い工賃という根深い課題を解決するためには、既存の枠組みを超えた戦略的な行政支援が不可欠です。本報告書で提言した「住まいの確保」「人材育成」「所得向上」を三位一体で推進し、先進事例に学ぶことで、誰もが地域で安心して暮らせる共生社会の実現を目指すべきです。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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