10 総務

監査事務

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(自治体における監査を取り巻く環境)

  • 自治体が監査を行う意義は「行財政運営の適法性・効率性の確保」と「住民に対する説明責任の遂行と信頼の確保」にあります。自治体における監査制度は、地方公共団体の財務に関する事務の執行や経営に係る事業の管理等が、法令に適合し、正確で、経済的、効率的かつ効果的に行われているかを検証し、もって住民福祉の増進に資することを目的としています。
  • 近年、行政運営の複雑化や住民ニーズの多様化を背景に、監査の役割は従来の「適法性」のチェック(不正や誤りの発見)に留まらず、より少ない経費で最大の効果を上げているかという「経済性・効率性・有効性」の観点(パフォーマンス監査)や、行政の透明性と住民への説明責任(アカウンタビリティ)を確保するガバナンスの中核機能としての重要性が増しています。
  • 特に、令和2年4月からは改正地方自治法が施行され、監査委員による「監査基準」の策定・公表や、長による「内部統制」体制の整備が義務化されるなど、監査機能の更なる充実・強化が求められています。

意義

住民にとっての意義

行政の透明性・信頼性の確保
  • 監査は、独立した第三者の視点から行政運営をチェックし、その結果を住民に公表するプロセスです。
  • これにより、税金がどのように使われているか、行政サービスが適切に提供されているかといった情報が客観的に示され、住民は行政の活動を理解し、評価するための判断材料を得ることができます。これは行政に対する信頼の基盤となります。
不正・不当な支出の抑止
  • 監査委員による定期的な監査や、住民からの請求に基づく監査が行われること自体が、行政職員による違法・不当な公金支出や財産管理の怠慢といった行為に対する強力な抑止力として機能します。
  • これにより、住民全体の共有財産である税金が無駄なく、かつ公正に使われることが担保されます。

地域社会にとっての意義

行政サービスの質の維持・向上
  • 監査は、各事務事業が「最少の経費で最大の効果」を上げているか、社会経済情勢の変化に対応できているかといった有効性・効率性の観点から検証します。
  • この検証を通じて、業務プロセスの改善や非効率な事業の見直しが促され、限られた財源の中でより質の高い行政サービスが地域社会に提供されることにつながります。
財政の健全性維持

行政にとっての意義

事務処理の適正化と改善
内部統制機能の強化

(参考)歴史・経過

昭和22年(1947年)
  • 地方自治法の施行に伴い、長の指揮監督から独立した執行機関として「監査委員」制度が創設されました。これにより、行政のチェック機能が制度的に確立されました。
昭和38年(1963年)
平成3年(1991年)
  • 地方自治法が改正され、従来の財務監査に加え、行政運営全般の合規性・合理性・効率性を監査する「行政監査」が導入されました。これにより、監査の対象が財務会計事務から一般行政事務へと大きく拡大しました。
平成9年(1997年)
令和2年(2020年)

自治体における監査に関する現状データ

監査体制の状況
  • 東京都特別区の監査委員数は、区によって2名から4名で、平均は3.1名です。このうち、弁護士や公認会計士などの専門的知見を有する「識見委員」が占める割合は平均53.8%で、5年前(42.3%)と比較して11.5ポイント上昇しており、監査委員の専門性強化が進んでいることがうかがえます。
  • 一方で、監査実務を担う監査委員事務局の職員数は、特別区平均で6.7名と5年前(5.8名)から15.5%増加しています。しかし、人口5万人未満の市における全国調査では、事務局職員の在職年数が4年以内である割合が94.2%に達しており、専門知識の蓄積が困難な短期のローテーション人事が常態化しているという構造的な課題が存在します。このことは、専門性が高い識見委員の指導監督と、実務を担う事務局職員の経験値との間に乖離を生じさせるリスクを内包しています。
定期監査の実施状況と指摘事項
  • 令和4年度の特別区における定期監査での指摘件数は、23区合計で2,743件、1区あたり平均119.3件に上ります。
  • 指摘事項の内訳を見ると、「契約事務」が32.7%と最も多く、次いで「財産管理」(18.4%)、「補助金」(12.3%)、「現金管理」(10.8%)と、財務会計に関するものが大半を占めています。
  • 監査で指摘された事項の改善率(1年以内に改善された割合)は平均87.3%と高い水準にありますが、同一または類似の指摘が繰り返される割合も平均21.7%と依然として高い状況です。これは、監査が問題点を「発見」する機能は果たしているものの、その原因を根本的に解消し、再発を防止するという「改善」機能が十分に働いていないことを示唆しています。業務の属人化や引継ぎ不足が主な原因とされており、個別の担当者レベルでの対応に留まり、組織的な業務プロセスの見直しに至っていないケースが多いと考えられます。
住民監査請求の状況
  • 住民監査請求は、住民が直接行政の財務会計上の行為をチェックする重要な制度です。全国の市町村における請求件数は、1990年代から2000年代前半にかけて急増し、年間1,000件を超える時期もありましたが、その後は減少傾向にあります。
  • 令和4年度の特別区において、住民監査請求のうち「措置を講ずべきもの」と監査委員が判断した割合は12.6%でした。これは10年前(8.3%)と比較して4.3ポイント上昇しており、請求内容の妥当性が高まっているか、あるいは監査委員の判断がより厳格になっている可能性を示しています。制度が行政に対する有効なチェック機能として維持されていることがわかります。
監査のデジタル化状況
  • 監査業務へのデジタル技術の導入は進みつつあり、特別区の69.6%が何らかのデジタル技術を導入しています。特に「監査支援システム」(56.5%)や「データ分析ツール」(43.5%)の導入が進んでいます。
  • しかし、その活用はまだ限定的です。AIを監査に活用している区は13.0%に留まっており、多くは帳票の電子化といった「デジタイゼーション」の段階であり、データ分析を駆使して監査業務そのものを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」には至っていません。これは、膨大な行政データの中からリスクを自動的に検知するといった、より高度で効率的な監査を実現する機会を逸している状況と言えます。

課題

行政の課題

専門性の不足と人材の流動性
  • 監査の品質を確保する上で、監査実務を担う事務局職員の専門性不足が深刻な課題となっています。多くの自治体では、監査委員事務局の職員が数年単位の短期的な人事異動(ジョブローテーション)の対象となっており、会計、法律、IT、データ分析といった高度な専門知識や監査技法を習得・蓄積する前に他部署へ異動してしまいます。
形骸化・マンネリ化する監査と再発防止の機能不全
  • 多くの自治体で、毎年の監査で同様の指摘事項が繰り返し挙げられる「監査のマンネリ化」が問題となっています。これは、監査が問題点を「発見」はするものの、その根本原因を解決し、業務プロセスを改善させるという「再発防止」のサイクルが機能していないことを示しています。
  • 監査の指摘が、個別の担当者による一時的な修正に留まり、組織全体としての恒久的な対策につながっていないのが実情です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 組織的なリスクが放置され続け、非効率な業務慣行が温存されることで、行政全体の信頼性が低下します。
監査のデジタル化(DX)の遅れ
  • 従来のサンプリング(抜き打ち)調査に依存した手作業中心の監査手法は、膨大な行政事務のごく一部しか検証できず、網羅性や効率性に限界があります。データ分析やAIといったデジタル技術を活用すれば、全件データを対象とした網羅的なチェックや、不正・異常の兆候の自動検知が可能になりますが、その導入は大きく遅れています。
  • この遅れは、監査の質を飛躍的に向上させる機会を逃しているだけでなく、限られた監査資源(人員・時間)を非効率な作業に費やしていることを意味します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都特別区で監査にAIを導入しているのは13.0%、データ分析ツールを活用しているのも43.5%に留まっており、多くの監査が依然として手作業に依存している実態があります。
      • 民間企業や先進的な公的機関の監査では、AIや機械学習を用いて会計仕訳や経費精算データを全件分析し、異常な取引パターンを自動で検出する手法が実用化されています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 監査の労働集約的な体質が改善されず、データ駆動型の手法なら発見できたはずの重大なリスクや非効率性が見過ごされ続けます。

住民・地域社会の課題

監査の専門性と独立性への懸念
  • 住民の視点からは、監査委員の独立性や専門性に対して根強い懸念が存在します。監査委員は、監査対象である長が議会の同意を得て選任するという制度構造上、真に独立した厳しいチェックが機能するのかという疑問が持たれがちです。
  • また、監査委員のポストが名誉職的に扱われたり、自治体OBや議会の会派力学で選任されたりすることで、必ずしも監査に関する高い専門性や意欲を持った人材が選ばれているとは限らないという批判もあります。
    • 客観的根拠:
      • 研究論文では、監査委員の選任制度自体が独立性を保持する上での構造的な問題であると指摘されています。
      • 議選委員については、会計や法務の専門知識が不十分であることや、任期が短く専門性が蓄積されないこと、OB委員についても必ずしも監査の専門家が選任されるとは限らないことなどが、専門性の課題として挙げられています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 監査制度に対する住民の信頼が損なわれ、行政のチェック・アンド・バランス機能が有効に働いていないとの不信感が広がります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に横断的につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、新たな体制構築を要する施策より優先度を高く設定します。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果(監査の質の向上、業務効率化、財政的効果等)が大きい施策を優先します。将来的なコスト削減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 一部の部署や職員だけでなく、組織全体に便益が及び、一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する仕組みづくりにつながる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や学術研究、他分野での成功事例等、効果が実証されている、あるいは高い確度で見込まれる施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 自治体における監査機能の高度化は、「監査DX」「人材育成」「制度連携」の3つの柱を統合的に推進することが不可欠です。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:監査DXの抜本的推進」**です。これは、専門性不足や監査のマンネリ化といった根深い課題を解決するための最も強力な「武器」となるからです。データ分析やAIの導入は、監査の質と効率を飛躍的に向上させる基盤であり、他の施策の効果を最大化する上での前提条件となります。
  • 次に優先すべきは**「支援策②:監査専門人材の育成・確保」**です。DXで導入したツールを最大限に活用し、高度な判断を行うためには、それを使いこなす専門人材が不可欠です。短期的なローテーション人事から脱却し、専門職としてのキャリアパスを確立することで、持続可能な監査体制を構築します。
  • そして、これらの取り組みを実質的な成果に結びつけるために**「支援策③:内部統制と連携した『改善させる監査』への転換」**を進めます。監査で発見された課題が、確実に組織の改善につながる仕組みを制度として確立し、ガバナンスのPDCAサイクルを完成させます。
  • これら3つの支援策は相互補完的であり、一体的に進めることで、監査機能の質的転換という相乗効果を生み出します。

各支援策の詳細

支援策①:監査DXの抜本的推進による監査の高度化・効率化

目的
  • 従来の抜き打ち・手作業中心の監査から、全量データを活用した網羅的・効率的・リスクベースの監査へと質的に転換します。
  • 定型的な準拠性チェックを自動化し、監査職員をより高度な分析や判断を要する業務に集中させます。
主な取組①:全量データ分析基盤の導入
  • 会計システム等から支出、契約、給与、補助金等のデータを抽出し、全件を対象に分析できるデータ分析基盤(BIツール等)を導入します。
  • 「同一業者への短期集中発注」「随意契約上限額に近い金額での契約」「休日・深夜のシステム入力」など、あらかじめ設定したリスクシナリオに基づき、異常な取引を自動で抽出する仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 企業の会計監査では、仕訳データを多角的に分析し、他の仕訳との乖離状況から異常値を検出する手法が実用化されており、不正や誤謬のリスクが高い取引を効率的に特定できます。この手法は自治体の会計データにも直接応用可能です。
主な取組②:AIによる異常検知・不正予測の活用
  • ルールベースでは発見が困難な、より複雑なパターンの異常を検知するためにAI(機械学習)モデルを導入します。
  • 例えば、過去の不適切な経費精算のパターンを学習させ、類似の申請を自動で検出したり、契約書や仕様書のテキストデータをAIで解析し、不備やリスクのある条項を警告したりするなどの活用が考えられます。
    • 客観的根拠:
      • デジタル庁の実証事業では、文書解析AIを契約書チェックに活用した結果、形式的・実質的な不備の検出率が人手作業と比較して約2.1倍に向上したと報告されています。
主な取組③:RPAによる定型業務の自動化
  • 監査手続のうち、ルールが明確で反復性の高い定型業務(例:証憑書類の有無の確認、各種帳票間の数値突合、データの転記作業等)にRPA(Robotic Process Automation)を導入し、自動化します。
  • これにより、監査職員は単純作業から解放され、抽出された例外事項の調査や、被監査部門との対話といった、より付加価値の高い業務に時間を振り向けることができます。
    • 客観的根拠:
      • RPAは24時間365日、ヒューマンエラーなく稼働するため、定型業務の処理速度と正確性を劇的に向上させます。これにより、職員はより創造的で戦略的な業務に集中できるようになります。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 監査指摘による財政的効果額(経費節減・収入確保額)を現状比で30%向上させる。
      • データ取得方法: 監査結果報告書及びその後の措置状況報告に基づく効果測定
  • KSI(成功要因指標)
    • 主要な財務会計取引(支出・契約等)における自動分析カバー率を95%以上とする。
      • データ取得方法: データ分析基盤のシステムログによる分析対象件数の把握
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • リスクの高い取引や法令等違反の疑いがある取引の発見率を50%向上させる。
      • データ取得方法: 自動分析による発見件数と従来の抜き取り調査による発見件数の比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 実装された自動監査シナリオ数を50件以上とする。
      • データ取得方法: 監査DX推進担当によるプロジェクト管理記録
    • 定型的な準拠性チェックに要する時間を80%削減する。
      • データ取得方法: RPA導入前後の監査工数に関する実態調査

支援策②:監査専門人材の育成・確保と組織体制の強化

目的
  • 短期的な人事異動による専門性の低下という構造的課題を解決し、データ駆動型の高度な監査を継続的に実施できる専門人材集団を組織内に構築・維持します。
  • 監査の品質を属人的な能力に依存するのではなく、組織として担保する体制を確立します。
主な取組①:監査専門職制度・キャリアパスの創設
  • 一般行政職とは別に「監査専門職」という職種を人事制度上、明確に位置づけます。
  • 監査委員事務局での長期的な勤務を前提とし、専門性や経験に応じた昇進・昇格が可能なキャリアパスを設計します。これにより、職員が監査分野で専門性を高めるインセンティブを創出します。
    • 客観的根拠:
主な取組②:体系的な研修プログラムの構築と資格取得支援
  • 全国市長会や自治大学校等が提供する監査専門研修への職員派遣を義務化・制度化します。
  • 内部で、監査の基本、財務分析、データ分析、IT監査、パフォーマンス監査といった分野を網羅する段階的な研修プログラムを開発・実施します。
  • 公認内部監査人(CIA)や公認情報システム監査人(CISA)等の国際的な専門資格の取得を奨励し、受験費用や研修費用を支援する制度を設けます。
主な取組③:外部専門家(監査専門委員)の戦略的活用とナレッジトランスファー
  • IT、建築、法律といった高度な専門性が求められる分野では、引き続き外部の専門家を「監査専門委員」として積極的に活用します。
  • その際、単に調査を委託するだけでなく、内部職員との共同監査を義務付け、OJT形式での知識・ノウハウの移転(ナレッジトランスファー)を契約要件に盛り込むことで、組織内の能力向上につなげます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 同一・類似の指摘事項の再発率を現状の21.7%から5%未満に低減させる。
      • データ取得方法: 毎年度の監査結果報告書の分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 監査委員事務局職員の平均在職年数を5年以上とする。
      • データ取得方法: 人事部門の職員データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 監査関連の専門資格(CIA等)を保有する事務局職員の割合を30%以上とする。
      • データ取得方法: 人事部門の資格保有状況データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 高度監査研修(データ分析、IT監査等)の修了者数を、対象職員の100%とする。
      • データ取得方法: 研修受講記録
    • 外部専門家との共同監査の実施件数を年間5件以上とする。
      • データ取得方法: 監査計画及び実施報告書

支援策③:内部統制と連携した「改善させる監査」への転換

目的
  • 監査の指摘が単なる報告で終わることなく、被監査部門における確実かつ持続的な業務改善につながる仕組みを制度として確立します。
  • 地方自治法で定められた「監査」と「内部統制」を実質的に連携させ、ガバナンスのPDCAサイクルを有効に機能させます。
主な取組①:監査指摘事項に対する改善措置の追跡・評価制度の強化
  • 全ての監査指摘事項に対し、被監査部門に具体的な改善策、責任者、完了期限を明記した「改善計画書」の提出を義務付けます。
  • 監査委員事務局は、この計画の進捗状況を定期的に追跡・管理し、完了報告を検証する体制を構築します。改善が遅延または不十分な場合は、監査委員名で再度勧告できる仕組みとします。
    • 客観的根拠:
      • 指摘事項の再発率が21.7%と高い水準にあることは、現在のフォローアップ体制が不十分であることを示しています。改善計画の策定と追跡管理の制度化は、この問題に対する直接的な処方箋です。
主な取組②:内部統制評価と監査の連携
  • 監査で発見された指摘事項、特に繰り返し発生するものや組織横断的なものは、長の責任で整備される「内部統制システムの不備」として正式に位置づけます。
  • 監査委員は、内部統制評価報告書の審査において、これらの指摘事項が適切に評価され、改善策が講じられているかを重点的に検証し、意見を述べます。
主な取組③:リスクベース監査計画の徹底
  • 毎年度の監査計画の策定にあたり、形式的な部署のローテーションではなく、全庁的なリスク評価を基に、監査資源を重点的に配分する「リスクベースアプローチ」を徹底します。
  • このリスク評価には、過去の監査での指摘事項、内部統制の評価結果、データ分析によって明らかになった高リスク領域の情報を統合的に活用します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 住民意識調査における「行政の透明性・信頼性」に関する満足度を75%以上とする。
      • データ取得方法: 毎年度実施する住民意識調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 監査指摘事項にかかる改善計画の1年以内の達成率を95%以上とする。
      • データ取得方法: 監査委員事務局による改善措置の追跡管理システム
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 監査の指摘を契機として業務プロセスが改善・見直しされた主要事務の割合を年間20%以上とする。
      • データ取得方法: 各所属からの業務改善報告書の集計・分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 文書化されたリスク評価に基づいて策定された監査計画の割合を100%とする。
      • データ取得方法: 毎年度の監査計画書の検証
    • 監査委員と内部統制推進部署との合同会議の開催数を年間4回以上とする。
      • データ取得方法: 議事録による確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

新宿区「PDCAサイクルによる継続的改善の試み」

  • 新宿区の監査では、「支出の遅延」という課題が繰り返し指摘されてきました。これに対し、区は支払管理表の導入や請求の積極的な督促といった再発防止策を講じ、指摘件数を減少させるなど、監査結果を受けてPDCAサイクルを回し、業務改善に取り組む姿勢が見られます。この事例は、監査が単なる指摘に終わらず、具体的な改善活動につながるプロセスを構築する重要性を示しています。

江戸川区「多様な監査手法と積極的な情報公開」

  • 江戸川区は、定期財務監査に加え、財政援助団体等監査や専門的な工事監査を体系的に実施しています。さらに、監査結果だけでなく、監査の実施要領や審査意見書をウェブサイトで詳細に公開しており、監査プロセスの透明性を高めることで住民の理解と信頼を得るための優れた取り組みを行っています。
    • 客観的根拠:
      • 同区のウェブサイトでは、定期財務監査、財政援助団体等監査、工事監査など、各種監査の実施要領と結果報告書が体系的に公開されており、住民が監査活動の全体像を容易に把握できます。

中央区「住民監査請求への丁寧な対応と制度の周知」

  • 中央区は、住民監査請求の制度概要、対象となる行為、請求方法などをウェブサイトで分かりやすく解説し、住民が制度を利用しやすくするための情報提供に努めています。これにより、住民による行政監視という監査の重要な側面を実質的に支えており、開かれた行政運営のモデルとなります。
    • 客観的根拠:
      • 同区のウェブサイトでは、住民監査請求の対象となる財務会計上の行為が具体的に例示され、請求書の書式見本も提供されるなど、住民のアクセスビリティを高める工夫がなされています。

全国自治体の先進事例

鎌倉市「職員研修をテーマとした行政監査の実施」

  • 鎌倉市は、「人材育成」という組織の根幹に関わるテーマで行政監査を実施しました。職員アンケートなどを通じて研修制度の課題を多角的に分析し、研修方針の理解徹底や制度改善に関する具体的な意見を提示しています。これは、監査が財務だけでなく、組織力向上という経営的視点からも貢献できることを示す先進的な事例です。
    • 客観的根拠:
      • 同市の行政監査報告書では、職員育成基本方針に基づき研修が体系的に実施されていることを評価しつつ、職員アンケートの結果から研修の周知方法や内容の改善点を具体的に指摘しています。

つくば市「AI活用による議事録作成の自動化」

  • 監査業務そのものではありませんが、つくば市ではAI音声認識を活用して議事録作成を自動化し、職員の負担を大幅に軽減しました。この技術は、監査におけるヒアリングや会議の記録作成にも直接応用可能です。定型的な記録業務をDXで効率化し、監査職員がより分析的・専門的な業務に集中できる環境を整備する上での好事例です。

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
東京都・特別区関連資料
その他自治体・研究機関等資料

まとめ

 東京都特別区における監査機能は、専門性不足や監査のマンネリ化といった構造的な課題に直面し、大きな変革の岐路に立たされています。従来の定型的・事後的なチェックから脱却し、行政の質向上に貢献する戦略的機能へと進化するためには、抜本的な改革が不可欠です。その方向性は、監査DXの推進による監査手法の高度化、専門職制度の創設による人材基盤の強化、そして内部統制との連携によるガバナンスサイクルの確立という3つの柱に集約されます。これらの支援策を統合的に進めることで、監査は真に住民の信頼に応え、持続可能な行政運営を支えるための羅針盤としての役割を果たすことができるでしょう。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました