17 健康・保健

特定健康診査

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(特定健康診査を取り巻く環境)

  • 自治体が特定健康診査を行う意義は「生活習慣病の重症化予防による健康寿命の延伸」と「将来世代の医療費負担の抑制による持続可能な社会保障制度の維持」にあります。
  • 特定健康診査(特定健診)は、40歳から74歳までの公的医療保険加入者を対象に、生活習慣病の発症・重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドロームに着目した健康診査です。
  • 高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者(市町村国保、健康保険組合等)に実施が義務付けられています。健診結果に基づき、生活習慣の改善が必要な方には特定保健指導が行われます。
  • 日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.3%(令和6年)に達し、令和52(2070)年には2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。このような超高齢社会において、特定健診は、個人の健康維持だけでなく、増大する医療費を抑制し、社会保障制度の持続可能性を確保するための極めて重要な政策的手段と位置づけられています。

意義

住民にとっての意義

生活習慣病の早期発見・早期治療
健康状態の客観的把握と行動変容の契機
  • 健診結果を通じて自身の健康状態を客観的な数値で把握できます。さらに、特定保健指導では専門スタッフ(保健師、管理栄養士等)から個々の状況に応じたサポートを受けられ、生活習慣を見直す具体的なきっかけとなります。

地域社会にとっての意義

健康寿命の延伸とQOLの向上
  • 住民が健康で長く活躍できることは、地域全体の活力を高め、社会参加を促進します。これは、内閣府の「高齢社会対策大綱」が目指す、年齢に関わりなく活躍し続けられる社会の構築にも寄与します。
医療・介護負担の軽減
  • 生活習慣病の重症化によって引き起こされる脳卒中や心筋梗塞、人工透析などを未然に防ぐことは、地域全体の医療機関や介護サービスの負担を軽減します。特に75歳以上人口が65~74歳人口を上回る現状では、その重要性は増すばかりです。

行政にとっての意義

医療費の適正化
  • 特定健診は、増え続ける生活習慣病の予防と医療費抑制を目的として導入された制度です。重症化に伴う高額な医療費を未然に防ぐことは、国民健康保険財政の安定化に直結します。
データに基づく保健事業の推進(データヘルス)
  • 健診結果やレセプト(診療報酬明細書)データを分析することで、地域ごとの健康課題を客観的に把握できます。これにより、証拠に基づく政策立案(EBPM)を推進し、より効果的・効率的な保健事業を展開することが可能になります。

(参考)歴史・経過

  • 2006年(平成18年)
  • 2008年(平成20年)
    • 「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、特定健診・特定保健指導が制度として開始されました。医療保険者に対し、40~74歳の加入者への実施が義務付けられました。第1期計画(平成20~24年度)がスタートし、特定健診実施率70%、特定保健指導実施率45%という野心的な目標が設定されました。
  • 2013年(平成25年)
    • 第2期計画(平成25~29年度)が開始され、引き続き実施率の向上を目指すとともに、データヘルス計画の策定準備が進められました。
  • 2018年(平成30年)
    • 第3期計画(平成30~令和5年度)が開始されました。保険者と事業主が連携して健康課題に取り組む「コラボヘルス」や、健診・レセプトデータを活用した「データヘルス計画」に基づくPDCAサイクルの推進が本格化しました。
  • 2021年(令和3年)
  • 2024年(令和6年)
    • 第4期計画(令和6~11年度)が開始されました。特定保健指導におけるアウトカム評価(腹囲・体重の減少等)の導入、健診項目の詳細化(随時血糖・随時中性脂肪の明確化)、服薬者を指導対象から除外するルールの明確化など、より成果を重視した制度へと見直しが行われました。

特定健康診査に関する現状データ

全国の実施状況(令和5年度)
東京都特別区の実施状況
  • 東京都特別区の国保加入者における特定健診の平均受診率は52.3%(令和4年度)であり、全国平均(当時59.5%)を7.2ポイント下回っています。
  • 特定保健指導の平均実施率はさらに深刻で、17.8%(令和4年度)と全国平均(24.1%)を6.3ポイントも下回り、目標値45%との乖離が極めて大きい状況です。
実施率の推移と格差

課題

住民の課題

健康への関心・危機感の低さ
  • 自覚症状がないため健診の必要性を感じていない住民が多数存在します。これは、予防医療の概念が十分に浸透していないことを示唆しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 自覚症状のないまま生活習慣病が静かに進行し、気づいた時には心筋梗塞や脳卒中など、生命に関わる重篤な状態で発見されるケースが増加します。
かかりつけ医受診による健診の重複感
時間的・物理的制約
  • 働き盛り世代や子育て世代にとって、平日の日中に健診を受けるための時間を確保することは大きな障壁となっています。

地域社会の課題

被扶養者・自営業者など特定の層へのアプローチ不足
  • 職域健診の対象とならない被用者保険の被扶養者(主婦など)や、国民健康保険に加入する自営業者・非正規雇用者など、行政からの能動的な働きかけが届きにくい層の受診率が著しく低いままです。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 制度の恩恵が正規雇用の被保険者に偏ることで健康格差が拡大・固定化し、社会全体の公平性が損なわれます。
多様な住民への対応の遅れ(外国人等)
  • 外国人住民の増加に対し、多言語での受診案内や、文化的背景に配慮した保健指導の体制が整っていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 多文化共生社会の実現が阻害されるとともに、特定のコミュニティ内で健康リスクが放置され、将来的な医療負担が増大します。

行政の課題

特定保健指導の実施率・完遂率の低迷
  • 健診でリスクが判明しても、その後の保健指導に繋がらない、あるいは指導が始まっても目標達成前に中断してしまうケースが後を絶ちません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 健診の実施にかけたコストと労力が無駄になり、制度全体の費用対効果が著しく低下します。
医療機関(かかりつけ医)との連携不足
  • 多くの住民が「かかりつけ医で定期的に診てもらっている」ことを理由に特定健診を受けない実態があるにも関わらず、行政側がその診療情報を特定健診データとして活用する仕組み(みなし健診)が十分に機能していません。
専門職の負担過多と資源不足
  • 特定保健指導を担う保健師や管理栄養士の数が、指導対象者の数に対して慢性的に不足しており、一人ひとりに質の高い、丁寧な指導を行うことが物理的に困難な状況です。
    • 客観的根拠:
      • 東京都特別区では、特定保健指導担当の専門職一人当たりの対象者数が平均372人と、適切な指導が可能とされる上限(200人)を大幅に上回っています。その結果、担当部署の職員の76.8%が「業務量が過多である」と回答しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「保健事業実施体制調査」令和5年度 11
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 保健指導の質が低下し、個別対応ではなく形式的な指導に終始することで、住民の行動変容に繋がらず、制度が形骸化します。
データ分析・活用(PDCAサイクル)の形骸化
  • 多くの区でデータヘルス計画は策定されているものの、計画(Plan)と実施(Do)のみで、効果検証(Check)と改善(Action)のサイクルが十分に回っていません。
    • 客観的根拠:
      • データヘルス計画に基づくPDCAサイクルが「十分に機能している」と回答した特別区はわずか17.4%です。また、事業の成果を評価するアウトカム評価を実施している区も34.8%に留まり、多くが実施率などのプロセス評価に終始しています。
      • (出典)厚生労働省「保健事業の効果的な実施に関する調査」令和5年度 11
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 効果の低い事業が前例踏襲で継続され、限られた予算と人材が非効率に配分され続けることになります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して、将来的な医療費削減効果など、得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、一時的ではなく長期的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や先行自治体の事例などで、効果が実証されている、あるいは強く示唆されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの課題分析から、特別区における特定健診の課題は「制度の分断(特に医療機関との連携不足)」と「画一的なアプローチ(住民の多様なニーズへの未対応)」という2点に集約されます。
  • したがって、支援策は「連携の強化」と「アプローチの多様化・個別化」を2大方針として構築します。
  • これらを踏まえ、以下の3つの支援策を提案します。優先順位は、最も根本的な課題である受診率の低迷に直接対処する施策を最優先とします。
  • 優先度【高】支援策①:受診率向上に向けたターゲット別アプローチの強化
    • 制度の入り口である受診率の低迷は、全ての課題の根源です。ここに集中的に資源を投下することが最も即効性と波及効果が高いと判断します。
  • 優先度【中】支援策②:特定保健指導の完遂率向上と質の担保
    • 健診でリスクを発見した後の「受け皿」を強化し、制度全体の費用対効果を高めるために不可欠です。受診率向上策と並行して進める必要があります。
  • 優先度【低→将来的には高】支援策③:データヘルス改革によるPDCAサイクルの確立
    • 上記①②の施策効果を測定・改善し、持続可能な仕組みを構築するための基盤です。短期的な効果は見えにくいものの、中長期的には最も重要な施策となります。

各支援策の詳細

支援策①:受診率向上に向けたターゲット別アプローチの強化

目的
  • 特別区で特に受診率が低い「被扶養者」「自営業者」「働き盛り世代」を重点ターゲットとし、受診率を底上げします。
  • 「かかりつけ医で受診済み」と感じている住民を制度に効果的に取り込み、未受診者数を削減します。
主な取組①:かかりつけ医連携による「みなし健診」の徹底推進
  • 区内医師会と連携協定を締結し、通院中の患者がその医療機関で受けた血液検査等の結果を、本人の同意に基づき特定健診データとして提出できる「かかりつけ医等からの情報提供事業」を本格展開します。
  • 医療機関側の事務負担を軽減するため、検査結果を転記しやすく、追加検査や請求まで1枚で完結する共通のデジタルフォーマットや専用シートを開発・提供します。
  • 住民には「かかりつけ医での検査結果を提出するだけで特定健診を受けたことになります」という分かりやすいメッセージで周知し、重複感を解消します。
主な取組②:ナッジ理論を活用した受診勧奨の高度化
  • 未受診者を属性(年齢、性別、過去の受診歴等)でセグメント化し、それぞれの層に最も効果的なメッセージを記載した勧奨通知(ハガキやSMS)を送付します。
    • 例1(社会的証明):「あなたと同じ〇〇代男性の7割が、既に今年の特定健診を受けています。」
    • 例2(損失回避):「このまま生活習慣を見直さない場合、10年後に糖尿病を発症するリスクは〇〇%です。健診で早期発見を。」
  • 封筒のデザインを「重要なお知らせ」と分かるように工夫したり(千葉市の事例)、返送期限を明確に記載したりする(つくば市の事例)ことで、開封率や反応率を高めます。
主な取組③:被扶養者・女性向け健診機会の創出
  • 主婦層や子育て世代がアクセスしやすいショッピングセンターや駅ビル等、日常生活の動線上で健診を受けられる機会を土日祝日を中心に設定します。
  • 健診会場に無料の託児サービスを併設するほか、区が実施する乳がん・子宮頸がん検診を同日に受けられる体制を標準化します。
  • 女性の関心を引く「骨密度測定」や「肌年齢チェック」などのオプション検査を低価格または無料で提供します。
主な取組④:健康無関心層へのインセンティブ付与
  • 自治体公式の健康アプリ(例:大阪市の「アスマイル」)を導入し、特定健診の受診や日々の健康活動(歩数、体重記録など)に対してポイントを付与する「健康ポイント事業」を実施します。
  • 貯まったポイントは、区内共通商品券やキャッシュレス決済のポイントに交換可能とし、健康づくりが直接的な経済的インセンティブに繋がる仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定健診受診率 60%以上(現状52.3%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
  • KSI(成功要因指標)
    • かかりつけ医からのデータ提供件数 年間5,000件以上(各区で目標設定)
      • データ取得方法: かかりつけ医等からの情報提供事業実績報告
    • 被扶養者の受診率 55%以上(健保組合の現状48.1%)
      • データ取得方法: 各保険者からの報告に基づくデータ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ナッジ勧奨対象者の受診率(非対象者比) 1.5倍以上
      • データ取得方法: 受診勧奨事業の効果測定分析
    • 健康ポイントアプリ参加者の健診受診率 70%以上
      • データ取得方法: アプリ利用ログデータと健診受診データの突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • かかりつけ医連携協定締結医療機関数 区内対象医療機関の80%以上
      • データ取得方法: 事業実績報告
    • 商業施設等での休日・夜間健診の実施回数 年間20回以上
      • データ取得方法: 事業実施計画・報告

支援策②:特定保健指導の完遂率向上と質の担保

目的
  • 特定保健指導の最大の課題である「途中脱落」を防ぎ、最後まで支援を受けきってもらうことで、行動変容と健康改善の成果を確実なものにします。
  • 多忙な働き盛り世代や、対面での指導に抵抗がある層でも参加しやすい、柔軟な指導体制を構築します。
主な取組①:ICTを活用した遠隔保健指導の標準化
  • 全ての特定保健指導対象者が、初回面接から中間評価、最終評価まで、希望すれば全てオンライン(ビデオ通話等)で完結できる選択肢を標準サービスとして提供します。
  • 健康管理アプリを導入し、対象者が日々の食事や運動、体重などを記録し、保健師・管理栄養士がそのデータをリアルタイムで確認・フィードバックできる体制を構築します。チャット機能による随時相談も可能とします。
主な取組②:リピーター向けプログラムの複線化
  • 毎年、特定保健指導の対象となる「リピーター」に対し、画一的な指導を繰り返すのではなく、複数の選択肢を用意します。
    • Aコース:標準プログラム(初回対象者向け)
    • Bコース:改善度に応じたショートプログラム(前年度より数値が改善した方向け)
    • Cコース:テーマ特化型グループ指導(「減塩」「運動習慣化」など共通の課題を持つ数名でのグループワーク)
  • 前年度の指導記録や改善状況に基づき、対象者に最適なコースを提案します。
主な取組③:アウトカム評価に基づくインセンティブ設計の導入
  • 特定保健指導を外部委託する際、従来の実施件数に応じた支払いだけでなく、「指導対象者の腹囲が平均〇cm減少」「体重が平均〇%減少」といったアウトカム(成果)に応じた成功報酬型の支払い方式を導入します。
  • これにより、委託事業者はより成果の出るプログラム開発や指導方法の改善に注力するようになり、市場原理を通じて指導の質全体の向上を促します。
    • 客観的根拠:
      • 国が推進する第4期特定健診・特定保健指導計画では、プロセス評価からアウトカム評価への転換が大きな柱とされています。この方針を行政の契約手法にも反映させることが重要です。
      • (出典)社会保険診療報酬支払基金「実績報告に関するQ&A」令和6年度 9
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定保健指導実施率 45%以上(現状17.8%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
  • KSI(成功要因指標)
    • 特定保健指導完遂率(途中脱落率の逆数) 80%以上(現状67.3%)
      • データ取得方法: 保健指導実施記録データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 指導による平均体重減少率 5%以上(現状2.3%)
      • データ取得方法: 特定保健指導データベースの分析
    • ICT活用指導の利用者満足度 85%以上
      • データ取得方法: 特定保健指導終了後アンケート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • オンライン指導の選択可能率 100%
      • データ取得方法: 保健指導実施体制調査
    • リピーター向けプログラムのコース数 3コース以上
      • データ取得方法: 事業計画書

支援策③:データヘルス改革によるPDCAサイクルの確立

目的
  • 勘や前例踏襲に頼った保健事業から脱却し、データという客観的根拠に基づいて効果的な事業を立案・評価・改善するPDCAサイクルを組織文化として定着させます。
主な取組①:地域診断に基づく健康課題の「見える化」
  • 特定健診データ、レセプトデータ、介護保険データを連結分析し、地域ごと(町丁目単位)、年齢階級別、性別の健康課題を地図上にマッピングする「地域診断」を実施します。
  • 「どの地域に高血圧の人が多いか」「どの年代で肥満が増えているか」などを可視化し、全庁で共有することで、課題認識の統一と重点的な介入エリアの特定に繋げます。
主な取組②:アウトカム指標を中核とした事業評価への転換
  • データヘルス計画における事業評価の指標を、従来の「受診率」「実施率」といったプロセス指標中心から、「メタボリックシンドローム該当者及び予備群の割合の減少率」「重症化予防による医療費抑制効果額」といったアウトカム指標中心へと転換します。
  • 事業ごとに明確なアウトカム目標を設定し、達成度に応じて次年度の予算配分や事業内容の見直しを行う仕組みを制度化します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合を5年間で10%減少させる
      • データ取得方法: 特定健診データの経年分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 全ての主要保健事業におけるアウトカム評価の導入率 100%
      • データ取得方法: データヘルス計画の進捗管理報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • データ分析に基づいて立案された新規・改善事業の割合 30%以上
      • データ取得方法: 政策・事業評価シートの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域健康課題マップの年次更新・全部署公開
      • データ取得方法: 事業実施報告
    • 全職員(係長級以上)を対象としたデータリテラシー研修の実施
      • データ取得方法: 研修実施記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区「データヘルス計画に基づく働き盛り世代への集中アプローチ」

  • 足立区はデータ分析を通じて、40~50歳代の男性の特定健診受診率が特に低く、一方で肥満者の割合が高いという深刻な健康課題を特定しました。
  • この明確なターゲットに対し、事業所への積極的な連携働きかけ、夜間・休日健診の拡充、若者にも届きやすいSNSを活用した情報発信など、集中的なアプローチを展開しています。
  • 成功要因は、全世代への画一的なアプローチではなく、データに基づき最もリスクが高く、かつアプローチが手薄だった層を特定し、そこに資源を集中投下する戦略的な事業展開にあります。
    • 客観的根拠:
      • 足立区のデータヘルス計画では、40歳代男性の肥満者率が40.5%に達する一方、同年代の健診受診率は20.5%に留まるというデータを明示し、この世代への重点的な受診勧奨を課題として掲げています。
      • (出典)足立区「第3期足立区国民健康保険データヘルス計画」令和6年度 14

練馬区「着実な受診率向上と多角的な健康施策との連携」

  • 練馬区は、特定健診制度開始以来、受診率を着実に向上させ、特別区平均と同水準を維持しています。
  • その特徴は、特定健診を単独の事業として捉えるのではなく、区が実施するがん検診や成人歯科健診と一体的に推進し、住民に「総合的な健康チェックの機会」として提供している点にあります。
  • 成功要因は、住民の利便性を高める「ワンストップ型」の発想と、生活習慣病だけでなく、がんや歯周病といった他の重要な健康課題と結びつけてアピールすることで、健康への関心を多角的に喚起している点です。
    • 客観的根拠:
      • 練馬区の資料では、特定健診の実施率が平成21年度以降4割以上で安定的に推移していることが示されています。同時に、各種がん検診や成人歯科健診の受診状況も詳細に分析しており、複合的な視点での健康づくりを推進していることがうかがえます。
      • (出典)練馬区「練馬区の健診(検診)等の実施状況」平成29年度 12

港区「現実的な目標設定とICT活用による将来展望」

  • 港区は、特定健診の受診率(令和4年度43.0%)および特定保健指導の実施率(同15.6%)が目標値に達していない現状を直視しています。
  • その上で、第4期データヘルス計画において、令和11年度までに受診率45%、実施率30%という、実現可能性を考慮した段階的な目標値を設定しました。
  • 成功要因は、理想論ではなく現状のデータに基づいた現実的なロードマップを描き、目標達成の手段としてICTの活用など新たな手法の導入を具体的に検討している点にあります。これにより、着実な改善を目指す姿勢が明確になっています。

全国自治体の先進事例

大阪市「健康アプリ『アスマイル』と強力なインセンティブによる行動変容促進」

  • 大阪府と府内市町村が共同で運営するスマートフォンアプリ「アスマイル」は、住民の健康づくりにゲーミフィケーションと強力なインセンティブを導入した画期的な事例です。
  • 毎日の歩数や体重記録、健診の受診といった健康活動を行うとポイントが貯まり、そのポイントを電子マネーや商品券に交換できます。特に特定健診の受診は高ポイントが付与され、受診への強力な動機付けとなっています。
  • 成功要因は、「健康」という抽象的な価値を、「ポイント」という具体的で分かりやすい価値に転換した点です。また、府と市町村が連携することで、広域的なプラットフォームを構築し、多くの住民が参加できる仕組みを作り上げたことも大きな要因です。
    • 客観的根拠:
      • 大阪市の国保加入者は、特定健診を初めて受診すると3,000円相当のポイントが付与されます。さらに東大阪市などでは市独自のポイントを上乗せし、合計で最大6,000円相当のインセンティブを提供しており、健康無関心層を動かす強力な誘因となっています。
      • (出典)東大阪市「おおさか健活マイレージ アスマイル」令和6年度 23大阪府「アスマイル」令和6年度 24

北海道函館市「ハガキによる個別受診勧奨の地道な改善」

  • 函館市は、限られた予算と人員という制約の中で、最も費用対効果の高い手法として「未受診者へのハガキによる個別勧奨」に注力しました。
  • 単に通知を送るだけでなく、ターゲットに「自分ごと」として捉えてもらうため、ハガキのレイアウト、色使い、メッセージの内容などを毎年見直し、改善を重ねました。
  • 成功要因は、最新技術に頼るのではなく、既存のツールを徹底的に磨き上げる「ローテクの高度化」にあります。地道なPDCAサイクルを回し続けることで、低コストながら着実に成果を上げています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区の特定健診は、受診率・保健指導実施率ともに全国平均を下回り、制度の効果を十分に発揮できていません。成功の鍵は、画一的なアプローチから脱却し、「かかりつけ医との連携強化による未受診者対策」と「住民の多様な状況に応じたターゲット別アプローチ」を両輪で進めることです。ナッジやICT、インセンティブ等の新たな手法を積極的に導入し、データに基づくPDCAサイクルを確立することで、住民の健康寿命延伸と持続可能な社会保障の実現に貢献できます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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