masashi0025
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要(日本語指導が必要な児童生徒を取り巻く環境)
- 自治体が日本語指導が必要な児童生徒への支援を行う意義は「こどもの学習権の保障と将来の自立支援」と「多文化共生社会の実現による地域活力の維持・向上」にあります。
- 在留外国人の増加に伴い、日本語の指導を必要とするこども(以下、JSL児童生徒)は全国的に、そして東京都特別区においても急増しています。これは単なる言語教育の問題ではなく、こどもの人権、教育の機会均等、さらには将来の日本社会の担い手育成と地域コミュニティの持続可能性に関わる重要な行政課題です。
- 本記事では、最新の公的データを基に現状と課題を多角的に分析し、東京都特別区が取り組むべき具体的支援策を提言します。
意義
こどもにとっての意義
学習権の保障と学力向上
- 日本語能力の不足による学習の遅れを防ぎ、全てのこどもが等しく教育を受ける権利を保障します。これにより、学年相当の学力を習得し、学習意欲を維持することが可能になります。
学校生活への適応と心理的安定
- 円滑なコミュニケーションは、友人関係の構築や学校行事への参加を促し、孤立感の解消と自己肯定感の醸成につながります。
将来の自立と社会参加
- 基礎学力と日本語能力の習得は、高校進学や将来の就労に不可欠であり、経済的自立と日本社会への円滑な参加の基盤となります。
保護者にとっての意義
学校との円滑な連携
- 通訳支援や多言語での情報提供により、保護者が学校からの連絡を正確に理解し、面談や行事に参加しやすくなります。これにより、こどもの教育に積極的に関与できるようになります。
教育に関する不安の軽減
- こどもが学校で適切な支援を受けているという安心感は、保護者の精神的負担を軽減し、日本での生活への適応を助けます。
学校・教師にとっての意義
教育活動の円滑化
- 専門的な日本語指導員や支援員の配置は、担任教師の負担を軽減し、クラス全体の児童生徒への指導に集中できる環境を整えます。
多文化理解教育の推進
- JSL児童生徒の存在は、他のこどもたちが多様な文化に触れる機会となり、国際理解教育を実践する上で貴重な資源となります。
地域社会にとっての意義
多文化共生社会の実現
- 外国人住民とそのこどもたちが地域社会に円滑に溶け込むことは、文化的な豊かさを生み出し、活力ある共生社会の基盤を築きます。
将来的な地域経済への貢献
- 適切な教育を受けたこどもたちは、将来的に地域の労働力となり、地域経済の担い手として貢献することが期待されます。
行政にとっての意義
社会的コストの抑制
- 教育段階での適切な支援は、将来の失業や生活保護受給といった社会保障コストの増大を防ぐ、最も効果的な先行投資です。
持続可能な地域づくり
- 多様な人材が定着し活躍できる環境を整備することは、人口減少社会における自治体の持続可能性を高める上で不可欠な戦略です。
(参考)歴史・経過
1990年
- 「出入国管理及び難民認定法」の改正により、日系人に「定住者」の在留資格が創設されました。これにより、南米等からの日系人のこどもが日本の公立学校に多数編入するようになり、日本語指導の必要性が社会的に認知される大きな契機となりました。
2000年代
- 文部科学省による「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況に関する調査」が定期的に開始され、対象となるこどもの数や在籍状況がデータとして可視化されるようになりました。これにより、政策的な対応の必要性が明確になりました。
2014年(平成26年)
- 学校教育法施行規則が改正され、JSL児童生徒に対して「特別の教育課程」を編成・実施することが正式に可能となりました。これにより、在籍学級から別の教室で個別指導を行う「取り出し指導」が制度的に明確に位置づけられ、各学校での柔軟な指導体制構築が促進されました。
2019年
- 「日本語教育の推進に関する法律」が議員立法により成立・施行されました。この法律では、外国人等を「日本語教育の対象者」として明確にし、国、地方公共団体、事業主の責務を定めるなど、日本語教育の推進が国の重要な政策として法的に位置づけられました。
2020年代
- 在留外国人のさらなる増加と国籍の多様化を背景に、JSL児童生徒数は過去最多を更新し続けています。この急激な量的拡大と質的多様化に対し、指導者の確保や支援体制の地域間格差など、量・質両面での体制拡充が全国的な、そして喫緊の行政課題となっています。
日本語指導が必要な児童生徒に関する現状データ
全国のJSL児童生徒数の急増
- 公立の小・中・高等学校等に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数は、令和5年5月1日時点で69,123人に達しました。これは、前回調査である令和3年度の58,307人から10,816人(18.6%)増加したことになり、過去最多を更新しています。この急激な増加は、支援体制の拡充が追いついていない現状を浮き彫りにしています。
- 客観的根拠:
東京都特別区の状況
- 東京都全体では、日本語指導が必要な児童生徒は合計6,312人在籍しており、これは愛知県、神奈川県に次いで全国で3番目に多い数字です。このうち、外国籍が5,373人、日本国籍が939人となっています。特別区がこの大部分を占めていると推察され、東京が全国有数のJSL児童生徒集住地域であることがデータから明らかです。
- 客観的根拠:
- 学校種別で見ると、外国籍の児童生徒では小学校が3,426人、中学校が1,130人、高等学校が733人と、義務教育段階に集中しています。
- 使用言語別(外国籍)では、中国語が2,296人と突出して多く、全体の約43%を占めています。次いで英語(500人)、フィリピノ語(447人)と続いており、支援策を検討する上で、特に中国語への対応が重要な視点となります。
- (出典)文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)概要」令和6年
支援を受けていない児童生徒の存在
- 全国的に、日本語指導が必要と認定されながらも、学校で何らかの「特別の配慮に基づく指導」を受けられていない児童生徒が一定数存在します。これは行政として看過できない「支援の空白」であり、教育の機会均等を揺るがす重大な問題です。
- 客観的根拠:
- 外国籍の児童生徒のうち、特別な指導を受けている割合は90.4%です。これは裏を返せば、9.6%にあたる約5,500人のこどもが必要な支援を受けられていないことを意味します。
- 日本国籍の児童生徒では、指導を受けている割合はさらに低く86.6%にとどまり、13.4%にあたる約1,500人が支援の対象から漏れている状況です。
- (出典)(https://acrasweb.jp/?p=2462)
集住化と散在化の同時進行
- JSL児童生徒の在籍状況は、特定の都府県や市町村に集中する「集住化」と、これまで在籍者が少なかった地域にも広く点在するようになる「散在化」という二つの傾向が同時に進行しています。この二極化は、支援体制を構築する上での大きな課題となっています。
- 客観的根拠:
課題
こどもの課題
学習言語の壁による学力不振
- 来日して間もないこどもはもちろん、日本で生まれ育ったこどもであっても、友達との日常会話は流暢にできても、学習の場面で使われる抽象的な語彙や複雑な表現、いわゆる「学習言語(アカデミック・ランゲージ)」の習得に困難を抱えるケースが非常に多く見られます。この「見えない壁」が、学年が上がるにつれて深刻な学力不振の根本原因となります。
- 客観的根拠:
- 文部科学省は、指導対象者を「日本語で日常会話が十分にできない児童生徒」だけでなく、「日常会話ができても,学年相当の学習言語能力が不足し,学習活動への取組に支障が生じている」児童生徒も含むと明確に定義しています。これは、日常会話能力だけでは学力の定着を測れないという問題意識の表れです。
- 算数や数学の「展開」「関数」、理科の「地層」「飽和水蒸気量」、社会科の「封建制度」といった教科特有の用語は、その多くが漢字の熟語であり、これらの意味を正確に理解できなければ、教科書を読んだり、問題を解いたりすることが極めて困難になります。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 基礎学力の欠如が常態化し、こどもの将来の進路選択の幅を著しく狭めます。
高校進学・卒業の困難と不安定な将来
- 学習言語の壁に起因する学力不振は、中学校卒業後の進路選択に直接的な影響を及ぼします。全生徒と比較して高校等への進学率が低いだけでなく、進学できたとしても、高校の授業についていけずに中途退学に至る割合が著しく高いという深刻な実態があります。
- 客観的根拠:
- 令和4年度に中学校等を卒業したJSL生徒の高校等進学率は89.9%であり、全中学生の99.2%と比較して約9ポイントもの大きな隔たりがあります。
- さらに深刻なのは、進学も就職もしていない者の割合が5.0%に達し、全中学生の0.6%と比べて8倍以上も高いという事実です。これは、義務教育終了後に社会から孤立してしまうこどもが多数存在することを示唆しています。
- 過去の調査では、日本語指導が必要な高校生の中途退学率は全高校生の7.4倍、就職者における非正規就職率は9.3倍という衝撃的なデータも報告されており、初期の教育支援の失敗が、将来の経済的困窮に直結する「負の連鎖」を生み出している構造がうかがえます。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 低学歴・不安定就労の連鎖が生じ、貧困や社会的孤立のリスクが高まります。
アイデンティティ形成の葛藤と心理的孤立
- 言葉の壁や文化的な背景の違いから、クラスメイトとの円滑な人間関係を築くことが難しく、学校で孤立感を抱えることがあります。また、家庭で使用する言語(母語)と学校で使用する日本語との間で、「自分は何者なのか」というアイデンティティの形成に葛藤を抱えるこどもも少なくありません。
- 客観的根拠:
- 文部科学省は、日本語指導の目的として、単なる言語能力の向上だけでなく、「学習や生活に必要な心理的安定のための情意面の支援」が不可欠であると指摘しています。これは、JSL児童生徒が抱える心理的な側面の課題を重視していることの表れです。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 不登校や引きこもりにつながる可能性があり、精神的な健康を損なうリスクが増大します。
保護者の課題
学校とのコミュニケーション不全
- 保護者自身も、こどもと同様に日本語能力が十分でない場合が多く、学校から配布されるお便りや緊急連絡の内容を正確に理解できなかったり、三者面談や電話連絡で教員と十分な意思疎通が図れなかったりする状況が頻繁に発生します。
- 客観的根拠:
- 学校現場では、こどもの母語が分かる支援者が、通訳・翻訳を通じて学校と保護者との連絡調整を担うことの重要性が強く認識されています。これは、裏を返せば、そのような支援がなければコミュニケーションが成立しにくいという課題が存在することを示しています。
- 保護者の国際結婚により家庭内で使用される言語が日本語以外である場合など、家庭環境は多様化しており、保護者自身の日本語能力や日本社会への適応も大きな課題となっています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- こどもの学習状況や学校での問題を家庭で把握できず、学校と家庭が連携した支援が困難になります。
日本の教育システムへの不理解
- PTA活動、部活動、保護者会、さらには高校受験の仕組みや内申書といった、日本独自の学校文化や教育制度に関する情報が保護者に十分に伝わっておらず、こどもの教育にどのように関与すれば良いか分からずに戸惑うことがあります。
- 客観的根拠:
- 保護者の出身国における教育観と日本の教育観が異なる場合も多く、その違いが学校との間に認識のズレを生み、学校関係者の苦労の一因になっていると推察されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- こどもの進路選択といった重要な局面で適切な助言や支援ができず、こどもの将来の機会損失につながる可能性があります。
学校・教師の課題
専門的な指導者の圧倒的不足
- JSL児童生徒への指導には、日本語教育に関する専門的な知識やスキルが必要ですが、そうした専門性を持つ教員や支援員が全国的に、そして特別区においても圧倒的に不足しています。特に、対象生徒が1人か2人しか在籍しない「散在校」では、専門家が配置されず、対応が困難を極めています。
- 客観的根拠:
- 多くの学校現場から「日本語指導の専門教員がいない」「個別に対応するための人材が絶対的に不足している」といった切実な声が上がっており、急増するニーズに対して専門人材の育成や配置が全く追いついていないのが現状です。
- 国の教員加配措置は、例えば「日本語指導が必要な児童生徒45人につき1人」といったように、一定の在籍人数を基準としています。そのため、自治体の財政力によっては、国の基準以上の教員を独自に配置することができず、結果として専門家のいない学校では担任任せになるという構造的な問題が生じています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 支援の質が教師個人の経験や熱意、善意といった属人的な要素に大きく依存してしまい、こども間で受けられる教育の質に著しい格差が生じます。
担任教師への過重な負担
- 専門の担当者が配置されていない学校では、学級担任が通常の学級経営や教科指導に加え、JSL児童生徒への日本語指導、個別の教材作成、多言語での保護者対応まで、本来は専門外である業務を一手に引き受けざるを得ない状況にあります。これは、心身ともに極めて大きな負担となります。
- 客観的根拠:
- 日本語のプレスクールといった地域における受け皿が不足している現状では、その負担が公立学校の教員に一方的に偏り、重くのしかかっていると指摘されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 担任教師の疲弊は、JSL児童生徒への支援の質の低下を招くだけでなく、クラスに在籍する他の全てのこどもたちへの教育活動にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
多様なニーズへの対応困難
- JSL児童生徒と一括りに言っても、その背景は千差万別です。母語、来日時期、来日前の就学経験の有無、読み書き能力のレベル、家庭環境などが非常に多様化・複雑化しており、画一的な指導方法では効果的な支援を行うことが困難になっています。
- 客観的根拠:
- JSL児童生徒の背景は多様化しており、一人ひとりの状況を丁寧に見極めた上で、家庭環境やライフステージに応じた個別の支援計画を立てることが不可欠です。
- 適切な指導を行うためには、日本語能力だけでなく、生活面や学習面での適応状況、学習への姿勢など、多面的な観点からこどもの実態を把握する必要があります。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 個々のこどもの具体的な課題に合わない画一的な支援が行われ、十分な効果が上がらないまま時間だけが経過し、貴重な学習機会が失われてしまいます。
地域社会の課題
支援リソースの地域間格差
- 外国人住民が多く暮らす「集住地域」では、比較的NPOや大学、ボランティア団体による支援活動が活発で、学校外での学習機会も確保しやすい傾向にあります。しかし、対象者が点在する「散在地域」では、そうした地域の社会資源が乏しく、学校や家庭が孤立しがちです。
- 客観的根拠:
- JSL児童生徒の教育はもはや集住地域だけの問題ではないと指摘されている一方で、地域社会における受け皿の整備は、特に散在化が進む地域では全く追いついていないのが実情です。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 居住する地域によって受けられる支援の質と量が大きく異なり、教育格差が固定化・拡大します。
多文化共生への意識・理解不足
- 一部の地域では、外国人住民の増加という現実に対して、受け入れ側である日本人住民の理解や協力体制が十分に醸成されておらず、文化や生活習慣の違いからくる潜在的な摩擦のリスクを抱えています。
- 客観的根拠:
- この問題は学校現場だけでなく、企業活動においても多文化共生が重要な経営課題として認識されており、地域社会全体で取り組むべき課題であることが示唆されます。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 外国人家庭が地域社会で孤立し、こどもの健全な育成環境が損なわれるだけでなく、地域全体の活力低下につながる可能性があります。
行政の課題
財源不足と支援の地域間格差
- JSL児童生徒支援の充実は、国の重要な政策課題であるにもかかわらず、そのための財政支援は十分とは言えません。結果として、支援体制の整備は各地方公共団体の財政力に大きく依存してしまい、自治体間で深刻な支援格差が生じています。
- 客観的根拠:
- 公立学校の教員給与は国と自治体がそれぞれ負担するため、財政的に厳しい自治体は、国が示す加配基準以上に教員を配置するための追加の財政負担を躊躇し、結果として最低限の人数しか要請しないという実態があります。
- 自治体の財政力が高いほど、外国籍の児童・生徒への支援が手厚くなる傾向があるという調査結果も示唆されており、財政力が教育の質に直結している構造がうかがえます。
- 文部科学省の関連予算は増額傾向にあり、令和6年度予算案では約16.1億円が計上されていますが、急増する対象者数と全国に広がるニーズに対応するには、依然として不十分な規模です。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 憲法が保障する教育の機会均等が脅かされ、居住する自治体による「教育のガチャ」が、こどもの将来格差に直結してしまいます。
縦割り行政による連携不足
- JSL児童生徒と家庭が抱える課題は、教育分野に留まりません。在留資格、労働、医療、福祉など、複数の分野にまたがる複合的な課題であることがほとんどです。しかし、行政の対応は教育委員会、福祉部局、国際交流担当部局、産業振興部局などが縦割りで個別に対応しており、総合的な支援体制が構築できていません。
- 客観的根拠:
- 効果的な支援のためには、教育(文科省管轄)だけでなく、在留資格の問題(法務省管轄)や家庭が抱える福祉的な課題(こども家庭庁・厚労省管轄)が複雑に絡み合うため、省庁や部局を横断したシームレスな連携が不可欠です。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 本来受けられるはずの支援が適切なタイミングで届かず、こどもや家庭が「制度の狭間」に落ちてしまい、問題が深刻化してしまいます。
実態把握と政策評価の仕組みの欠如
- JSL児童生徒が義務教育を卒業した後、どのような進路をたどり、社会でどのように生活しているのか、その実態を継続的に追跡調査する仕組みがほとんどありません。そのため、これまで実施してきた様々な支援策が、実際にこどもの自立にどの程度効果があったのかを科学的に検証できず、EBPM(証拠に基づく政策立案)が極めて困難な状況にあります。
- 客観的根拠:
- 高校卒業後の進路状況など、断片的なデータは文部科学省の調査で把握されていますが、投じられた支援策(インプット)と、その後の社会的成果(アウトカム)との因果関係を分析するような、体系的な縦断的追跡調査は不足しています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 効果の低い施策に貴重な予算や人材が投入され続け、限られた行政資源が有効に活用されない非効率な状態が継続します。
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
- 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
- 即効性・波及効果
- 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題(例:こどもの学力向上と教員の負担軽減)や多くの関係者(こども、保護者、学校)に良い影響が及ぶ施策を高く評価します。
- 実現可能性
- 現在の法制度や行政システムの中で、比較的少ない障壁で実行に移せる施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、全く新しい体制構築が必要な施策よりも優先度が高くなります。
- 費用対効果
- 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる教育的・社会的効果が大きい施策を優先します。特に、初期投資によって将来発生しうる、より大きな社会的コスト(失業、生活保護等)の削減に繋がる施策を重視します。
- 公平性・持続可能性
- 特定の地域や学校に限定されず、区内全域のこどもが等しく裨益できる仕組みであり、かつ単年度で終わる一過性の事業ではなく、継続的に実施可能な制度設計となっている施策を高く評価します。
- 客観的根拠の有無
- 国の調査結果で示された課題に直接対応する施策や、他の自治体の先進事例でその有効性が既に示されている施策を優先します。
支援策の全体像と優先順位
- JSL児童生徒支援は、個別の課題に対して場当たり的に対応する「点」の支援から、関係機関が有機的に連携し、就学前から卒業後まで切れ目なく支援を提供する「面」の支援へと、発想を根本から転換する必要があります。
- この観点から、**【優先度:高】として、全ての支援の質を左右する根幹的な基盤である「支援策①:指導・支援体制の抜本的強化」**を最優先に位置づけます。専門性を持つ人材の確保・育成・適正配置なくして、質の高い支援は決して実現できません。これは、全ての施策の土台となる最重要課題です。
- 次に**【優先度:中】として、リソースの地域間格差という構造的な課題を是正し、支援の裾野を地理的に広げるための「支援策②:ICT活用と地域連携による支援ネットワークの構築」**を位置づけます。これは、特に専門家の配置が困難な「散在校」の児童生徒への支援に極めて有効であり、公平性の観点から重要です。
- そして、長期的な視点で「負の連鎖」を断ち切り、こどもの自立を確実なものにするために、**【優先度:中】として「支援策③:就学前から高校卒業までの一貫した支援体制の確立」**を位置づけ、予防的・継続的な支援の重要性を強調します。
- これら3つの支援策は、それぞれが独立しているのではなく、相互に深く関連しています。例えば、強化された指導体制(施策①)がICT活用(施策②)の担い手となり、一貫した支援(施策③)の質を保証するといったように、統合的に進めることで最大の相乗効果を生み出すことを目指します。
各支援策の詳細
支援策①:指導・支援体制の抜本的強化
目的
- 全てのJSL児童生徒に対し、その日本語能力や学習状況に応じた質の高い教育機会を公平に提供します。
- 専門性の高い指導体制を構築することにより、学級担任の過重な負担を軽減し、学校全体の教育力を向上させることを目指します。
- 客観的根拠:
主な取組①:日本語指導担当教員の計画的配置と専門性向上
- 国の教員加配措置に加えて、特別区独自の予算を確保し、日本語指導を専門とする正規教員や経験豊富な非常勤講師を増員します。
- 特にJSL児童生徒が集中する「集住校」には複数名を固定配置し、対象生徒が少ない「散在校」には複数の学校を定期的に巡回して指導・助言を行う「巡回指導教員」を配置するハイブリッド体制を構築します。
- 大学の日本語教員養成課程や専門機関と連携し、現職教員を対象とした体系的な日本語指導研修プログラム(初任者向け基礎コース、中堅教員向け応用・教科指導連携コース等)を開発・実施し、区内で専門性を有する教員を計画的に育成・確保します。
- 客観的根拠:
主な取組②:多言語支援員の配置拡充と役割の明確化
- こどもの多様な母語に対応できる「多言語支援員(通訳・翻訳サポーター)」を、教育委員会が一括して公募・採用・登録し、各学校からの要請に応じて迅速に派遣する「人材バンク(プール制)」を導入・拡充します。
- 支援員の役割を、単なる授業の通訳補助に限定せず、①保護者懇談会や家庭訪問での通訳、②学校からの配布物の翻訳、③来日初期のこどもの心理的サポート、④日本の学校文化を保護者に伝える橋渡し役など、多岐にわたる重要な役割として明確に位置づけ、処遇の改善も図ります。
- 客観的根拠:
- 学校と保護者との円滑な連絡調整や、母語による心理的な支援を行う指導補助者の重要性は、国の指針でも指摘されています。
- 江戸川区では、教育委員会が日本語指導員を直接募集・登録し、学校へ派遣する制度を既に実施しており、有効なモデルとなります。
主な取組③:拠点校・サポートセンターの設置と機能強化
- 区内の地理的バランスを考慮して、数校の小・中学校を「日本語教育拠点校」として指定します。拠点校には、専門教員や多言語支援員を重点的に配置します。
- 拠点校は、自校の児童生徒への指導に加え、近隣の学校に在籍するJSL児童生徒への巡回指導、担当教員からの相談対応、効果的な教材の開発・共有、地域の教員向け研修の企画・実施など、地域全体の支援レベルを底上げするセンター的機能を担います。
- 教育委員会内には「多文化共生教育サポートセンター」を設置、または既存の部署を強化します。このセンターは、人材バンクの運営、通訳・翻訳ニーズへの一括対応、在留資格等に関する外部専門家(弁護士等)との連携、保護者からの総合相談窓口など、区全体の支援を統括するワンストップの司令塔としての役割を果たします。
- 客観的根拠:
- 東京都教育委員会は、TEPRO(公益財団法人東京都教育支援機構)に委託し、都立学校を対象としたワンストップ相談窓口「多文化共生スクールサポートセンター」を運営しています。この包括的な支援モデルを、特別区の小中学校の実情に合わせて導入・強化することが有効です。
- (出典)(https://www.tepro.or.jp/nihongo/)
主な取組④:個別の教育支援計画(JSL版)の作成と活用の徹底
- 全てのJSL児童生徒を対象に、DLA(対話型言語能力評価)等の客観的なアセスメントツールを用いて日本語能力を正確に把握した上で、「個別の教育支援計画」を作成し、活用することを全校で徹底します。
- この計画には、①長期・短期の具体的な支援目標(例:「3ヶ月後までに、教室で使われる基本的な指示が理解できる」)、②具体的な指導内容・方法(例:取り出し指導週4時間、在籍学級でのペアワーク支援)、③評価方法と時期を明記します。
- 計画の作成と見直しは、担任、日本語指導担当者、多言語支援員、そして保護者が連携して行う「チーム支援」の体制を確立し、定期的に(例:学期ごと)評価・見直しを行うPDCAサイクルを制度として定着させます。
- 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- JSL児童生徒の高校進学率:98%以上(現状の全国平均は約89.9%)
- データ取得方法: 教育委員会による全卒業生の進路状況追跡調査(年1回実施)
- KSI(成功要因指標)
- 特別な指導を受けていないJSL児童生徒の割合:0%(現状の全国平均は約10%)
- データ取得方法: 教育委員会による全JSL児童生徒の支援状況調査(年次調査)
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- JSL児童生徒のDLA(日本語能力評価)の平均スコア上昇率:対象児童生徒全員が年間15%以上向上
- データ取得方法: 対象児童生徒のDLAスコアの定点観測データ(学期ごと)
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 区独自の日本語指導担当教員・支援員の配置時間数:対前年度比で20%増
- データ取得方法: 教育委員会の人事課・教育指導課の配置実績・予算データ
- 教員向け日本語指導専門研修ののべ参加者数:年間100人以上
- データ取得方法: 研修実施報告書および参加者名簿
支援策②:ICT活用と地域連携による支援ネットワークの構築
目的
- ICTを効果的に活用することにより、指導者不足や地理的制約といった課題を克服し、特に「散在校」に在籍する児童生徒にも質の高い学習機会を公平に提供します。
- 学校・行政・NPO・大学・企業などが持つリソースを有機的に結びつける支援ネットワークを構築し、学校だけに負担を偏らせず、地域全体でこどもを支える持続可能な体制を築きます。
- 客観的根拠:
主な取組①:オンライン日本語学習プラットフォームの構築・提供
- 特別区が主体となり、レベル別(初期、基礎、応用)のオンデマンド動画教材、ライブ形式のオンライン個別・グループ指導、学習進捗管理機能などを備えた、統一のオンライン学習プラットフォームを開発・導入し、区内全校が利用できる環境を整備します。
- 特に「散在校」に在籍する児童生徒は、このプラットフォームを通じて、拠点校に在籍する専門教員から定期的な遠隔指導を受けられるようにします。これにより、どこに住んでいても専門的な支援へのアクセスを保障します。
- 客観的根拠:
- ICTを活用した遠隔日本語教室は、交通費などの経済的負担をかけることなく、質の高い学習機会を提供できる点で、複数の自治体で成功事例が報告されています。
- (出典)(https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/115866.php)
- Zoomのブレイクアウトルーム機能や共有ホワイトボード機能などを活用すれば、オンラインであっても対面授業に近い双方向の対話環境を構築することが可能です。
- (出典)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/nihongo_122/pdf/93968601_08.pdf)
主な取組②:翻訳アプリ・デジタル教材の積極的活用
- 授業中にこどもが主体的に活用できるよう、音声入力・読み上げ機能付きの多言語翻訳アプリを導入したタブレット端末を整備します。
- 全ての教科において、デジタル教科書の導入を推進し、読み上げ機能やルビ振り機能、辞書連携機能などを活用して、学習言語の理解を支援します。
- 教員向けに、これらのICTツールを効果的に活用した授業デザインに関する研修会を定期的に実施します。
- 客観的根拠:
- 多言語翻訳アプリの活用は、こどもが自身の母語を手がかりに日本語の表現を能動的に学ぶ助けとなり、主体的な学習態度を引き出す効果があることが、群馬県の実践事例などで報告されています。
- (出典)(https://www.pref.gunma.jp/site/harmony/176102.html)
主な取組③:NPO・大学との連携協定による支援プログラムの共同実施
- 外国にルーツを持つこどもたちの支援に豊富な実績を持つNPO法人や、日本語教育・教員養成課程を持つ地域の大学と、包括的な連携協定を締結します。
- 協定に基づき、①放課後や長期休暇中の学習支援教室(宿題サポート、日本語補習)、②日本人学生との交流を通じたメンタリングプログラム、③保護者向けの多言語による進路相談会や日本の学校制度に関するセミナー、④教員向けの実践的な研修などを共同で企画・実施します。
- 大学の教職課程や日本語教師養成課程の学生を、学習支援ボランティアとして積極的に受け入れ、将来の担い手育成にもつなげます。
- 客観的根拠:
- 認定NPO法人カタリバは、学習支援、居場所づくり、保護者支援、専門家との連携を組み合わせた包括的な支援モデルを実践しており、有効な参考事例となります。
- 新宿区では、公益財団法人新宿未来創造財団という外郭団体がNPOとして日本語学習支援事業の中核を担っており、行政とNPOの協働モデルとして先進的です。
主な取組④:地域日本語教室との情報共有・連携
- 区内で活動するボランティア日本語教室の情報を集約したポータルサイトを作成し、学校や保護者が容易にアクセスできるようにします。
- 学校(担任・日本語指導担当)と地域の日本語教室の担当者が参加する定期的な連絡会(年2回程度)を開催し、こどもの学習状況や課題について情報共有を図る仕組みを作ります。
- 学校から地域の日本語教室へ、またその逆の、こどもの状況に応じた円滑な紹介(リファラル)体制を構築します。
- 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 「散在校」に在籍するJSL児童生徒の標準学力調査における平均正答率を、区全体の平均値との格差5ポイント以内に是正する。
- データ取得方法: 全国学力・学習状況調査等の結果の学校類型別(集住校/散在校)分析
- KSI(成功要因指標)
- オンライン日本語学習プラットフォームの利用率(対象児童生徒ベース):80%以上
- データ取得方法: プラットフォームのログイン・利用時間等のアクセスログ分析
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- NPO・大学等との連携による放課後学習支援への年間・のべ参加者数:200人以上
- データ取得方法: 各連携事業の実施団体からの参加者実績報告
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- オンライン日本語学習プラットフォームに搭載する新規学習コンテンツ数:年間50本以上
- データ取得方法: プラットフォームのコンテンツ管理システムのデータ
- NPO・大学等との包括的連携協定の締結数:3団体以上
- データ取得方法: 教育委員会の協定書管理簿
支援策③:就学前から高校卒業までの一貫した支援体制の確立
目的
- 小学校入学時点での言語や学校生活のつまずきを未然に防ぐため、就学前の段階から切れ目のない支援を提供します。
- 最も課題が大きいとされる中学校から高校への移行期(トランジション)における支援を重点的に強化し、高校中退を防止するとともに、卒業後の安定した社会移行を促進します。
- 客観的根拠:
主な取組①:「プレスクール(就学前日本語・学校生活適応支援教室)」の全区展開
- 区立小学校への入学を予定している外国にルーツを持つ未就学児とその保護者を対象に、入学前の数か月間(例:1月から3月)、週1〜2回程度の「プレスクール」を、区内全域の身近な場所(幼稚園、保育園、児童館等)で実施します。
- プログラム内容としては、①あいさつや「トイレに行きたい」等の基本的な表現を学ぶサバイバル日本語、②日本の学校のルールや習慣の紹介、③保護者向け学校説明会などを、多言語対応で行います。
- 運営は、地域の保育園・幼稚園、教育委員会、そして日本語教育のノウハウを持つNPO等が連携して行います。
- 客観的根拠:
主な取組②:中学校・高校連携による進路ガイダンスの強化
- JSL生徒が多く在籍する区立中学校と、近隣の都立高校(特に外国人生徒の受け入れに積極的な高校)が連携し、中学3年生とその保護者を対象とした合同の進路ガイダンスや高校見学会を、多言語通訳付きで実施します。
- 都立高校の「在京外国人生徒対象の選抜(特別枠)」などの入試制度や、各高校の支援体制について、早期から具体的かつ正確な情報を提供し、生徒と保護者が安心して進路目標を設定できるよう支援します。
- 客観的根拠:
- 国は、外国人生徒の多様性を積極的に評価し、高等学校の入学者選抜において特別な配慮を行うことを各教育委員会に求めています。
- 神奈川県では、高校合格から入学までの期間に、日本語や学校生活について学ぶ「プレスクール」を開催しており、中学から高校への円滑な接続を支援する有効な取り組みです。
主な取組③:キャリア教育と母語を活かした学習機会の提供
- 地域の企業(特に外国人社員が活躍している企業)と連携し、多様な働き方や職業観に触れるためのキャリア教育プログラム(職場見学、外国人社員による出前授業や講演会等)を中学校段階で実施します。
- 生徒が持つ母語や文化的背景を、コンプレックスではなく「強み」として認識できるよう、総合的な学習の時間などを活用し、母国の文化や社会について調べて発表するプロジェクト学習や、地域のイベントで通訳ボランティアとして活躍する機会などを積極的に提供し、自己肯定感を高めます。
- 客観的根拠:
- JSL児童生徒が持つ言語や文化の多様性を、本人の学習だけでなく、他の児童の学習にも生かすようにすることが大切であると、国の指針でも示されています。
主な取組④:卒業後の追跡調査と支援ネットワークの構築
- 教育委員会が中心となり、個人情報の保護に配慮した上で、JSL生徒の高校卒業後の進路(大学・専門学校への進学状況、就職先、就労形態等)を可能な範囲で追跡調査する仕組みを構築します。
- この調査結果を分析し、小中学校段階での支援策の効果を検証し、EBPMのサイクルを確立します。
- 地域のハローワーク、大学・専門学校のキャリアセンター、外国人支援NPO等と連携し、卒業生が就職やキャリアに関する困難に直面した際に、気軽に相談できるネットワークを構築・周知します。
- 客観的根拠:
- 現状では、義務教育・高校卒業後の実態把握が不十分であり、効果的な政策改善を行うためには、データ収集基盤の構築が急務です。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- JSL生徒の高校中退率を、全国の高校生全体の平均値(約1%)と同等レベルまで低減させる。
- データ取得方法: 教育委員会による卒業生の進路・在籍状況に関する追跡調査
- KSI(成功要因指標)
- 中学校から高校への進学準備プログラム(プレスクール、合同ガイダンス等)への参加率(対象生徒ベース):90%以上
- データ取得方法: 各プログラムの実施報告書および参加者リスト
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- プレスクール参加児童の小学校1年次における学校生活適応度(担任教員による5段階評価):平均4.0以上
- データ取得方法: プレスクール参加児童・非参加児童の担任教員に対するアンケート調査
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 就学前プレスクールの区内開設拠点数:各小学校区に1か所以上、またはオンラインで全域をカバー
- データ取得方法: 教育委員会の事業実施状況報告書
- 多言語対応の進路ガイダンスの年間開催回数:区内全中学校区で年1回以上実施
- データ取得方法: 各中学校からの実施報告
先進事例
東京都特別区の先進事例
新宿区「NPOとの連携による重層的な支援体制」
- 新宿区は、教育委員会が学校内で実施する母語を活用した「日本語サポート指導」に加え、その公的支援が終了した後のこどもを対象として、区の外郭団体である公益財団法人新宿未来創造財団が放課後の学習支援事業(SJS事業)を実施しています。これにより、学校内と学校外、公的支援と準公的な支援が連携し、切れ目のない重層的な支援体制を構築しています。
- 成功要因: このモデルの強みは、行政の支援が届きにくい「支援終了後」のフォローアップを、専門性を持つNPO(外郭団体)が担うことで、継続的な学習機会を保障している点です。また、支援員を養成するための講座も定期的に開催しており、地域内で支援人材を育成・確保するサイクルを生み出しています。
- 客観的根拠:
- 教育委員会による日本語サポート指導は、平成17年度時点で9か国143名の児童・生徒に実施されるなど、長年の実績があります。
- 新宿未来創造財団による放課後支援では、原則として支援員1名が生徒1名に対応する手厚いマンツーマン体制を敷いており、質の高い支援を提供しています。
江戸川区「官民連携による就学前支援『入学前にほんごひろば』」
- 江戸川区は、区立小学校への入学を予定している日本語が話せない未就学児とその保護者を対象に、民間の大手日本語教育機関である東京中央日本語学院(TCJ)と連携し、入学前の日本語・学校生活適応支援プログラム「入学前にほんごひろば」を実施しています。
- 成功要因: 行政が単独で実施するのではなく、日本語教育の専門的なノウハウ、教材開発力、講師陣を持つ民間事業者と協働することで、質の高い早期介入を効率的に実現している点です。あいさつや体調の伝え方など、学校生活に不可欠な「サバイバル日本語」に特化したプログラムにより、入学後のスムーズな学校生活への移行を効果的に促しています。
- 客観的根拠:
- 江戸川区では、年間約250人の外国にルーツを持つ児童が入学しており、この事業は年々増加するニーズに対応するために開始されました。
- 事業は好評で、2022年度の実施4校から2023年度には5校に拡大するなど、地域に定着・発展しています。
東京都教育委員会「TEPROによる都立学校向けワンストップ支援」
- 東京都教育委員会は、広域にわたる都立学校の多様なニーズに対応するため、公益財団法人東京都教育支援機構(TEPRO)に委託し、「多文化共生スクールサポートセンター」を運営しています。このセンターは、各都立学校からの日本語指導に関するあらゆる相談・依頼にワンストップで対応するハブ機能を果たしています。
- 成功要因: 専門的なノウハウを持つ外部機関を活用することで、行政組織の枠を超えた機動的かつ専門的な対応を可能にしている点です。「日本語を教えられる人が見つからない」「三者面談の通訳がいない」といった学校現場の具体的な困りごとに対し、指導支援員や通訳の紹介・派遣、校内研修のサポート、電話通訳サービスの提供など、具体的なソリューションを迅速に提供しています。
- 客観的根拠:
全国自治体の先進事例
愛知県(豊橋市等)「集住地域におけるNPO・地域主体の重層的支援」
- 全国で最もJSL児童生徒が多く在住する愛知県では、行政による公的支援に加え、NPOや大学、さらにはブラジル人コミュニティなどの当事者団体が主体となった、多様で重層的な支援活動が活発に展開されています。これは、長年の外国人住民受け入れの歴史の中で培われた地域の力と言えます。
- 成功要因: 行政、学校、NPO、大学、当事者コミュニティが、それぞれの強みを活かして役割分担し、有機的な支援ネットワークが地域全体で構築されている点です。特に、外国人住民自身が支援の受け手であると同時に、新たな支援の担い手となっている点が、持続可能な支援体制の大きな特徴です。
- 客観的根拠:
- 豊橋市ではNPO法人が月曜から金曜まで毎日、放課後学習支援を実施しています。
- 瀬戸市では、外国人住民への食料支援活動がきっかけとなり、市民活動が行政を動かして市全体を対象とした新たな補助金制度が創設されるなど、地域住民の主体的な活動が政策形成にまで影響を与えています。
神奈川県(横浜市等)「制度化された体系的支援『国際教室』」
- 神奈川県および横浜市では、JSL児童生徒への支援を個々の学校や自治体の裁量に任せるのではなく、明確な基準に基づいて制度化している点が特徴です。具体的には、日本語指導が必要な児童生徒が一定数(例:5人)以上在籍する学校に「国際教室」を設置し、専門の担当教員を1名(20名以上の場合は2名)加配する制度が確立されています。
- 成功要因: 支援体制を明確な基準で「制度化」することにより、支援の公平性、継続性、安定性が担保されている点です。これにより、教員は安心して専門性を発揮でき、こどもは居住地に関わらず一定水準の支援を受けることができます。さらに、多文化教育コーディネーターの配置や、高校生向けの週末日本語支援、入学前プレスクールなど、支援内容も体系的に整備されています。
- 客観的根拠:
- 横浜市では、約40年前から国際教室が設置されており、長年にわたる実践の歴史とノウハウの蓄積があります。
- 神奈川県は、外国につながる生徒が多く在籍する県立高校28校30課程を重点支援対象校と定め、多文化教育コーディネーターを派遣するなど、戦略的な支援を展開しています。
参考資料[エビデンス検索用]
文部科学省
こども家庭庁
文化庁
- (https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo/kokugo_86/pdf/94016601_03.pdf)
- 「日本語教育の推進に関する法律」
東京都・特別区
その他研究機関・NPO
まとめ
日本語指導が必要な児童生徒への支援は、もはや一部の外国人家庭のための特別な福祉的措置ではなく、日本の公教育が直面する普遍的な行政課題です。東京都特別区においては、対象となる児童生徒数の急増と背景の多様化という現実に直面しており、従来の対応の延長線上では限界が明らかです。本記事で提言した、専門人材の確保・育成を核とする「指導・支援体制の抜本的強化」、ICTと地域資源の活用による「支援ネットワークの構築」、そして「就学前から高校卒業までの一貫した支援体制の確立」という三本柱の施策を、相互に連携させながら統合的に推進することが、全てのこどもの学習権を実質的に保障し、将来の地域社会を支える多様な人材を育成する、すなわち真の多文化共生社会を実現するための鍵となります。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。
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