20 スポーツ・文化

文化芸術創造・表現活動支援

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(文化芸術創造・表現活動を取り巻く環境)

  • 自治体が文化芸術創造・表現活動支援を行う意義は「住民のウェルビーイング(心豊かな生活)の向上」と「都市の魅力と活力の創出による持続可能な地域社会の実現」にあります。
  • 文化芸術は、個人の創造性や感性を育むだけでなく、人々の交流を促進し、地域への愛着を醸成します。さらに、文化観光やクリエイティブ産業の振興を通じて経済を活性化させる力も持ち合わせています。
  • しかし、コロナ禍を経て、文化芸術の担い手の脆弱な活動基盤や、鑑賞機会の減少といった課題が浮き彫りになりました。東京都特別区においては、これらの課題に対応し、文化芸術の持つ多面的な価値を最大限に引き出すための戦略的な支援が求められています。

意義

住民にとっての意義

心豊かな生活の実現 (QOL向上)
  • 文化芸術に触れる機会は、人々に感動や安らぎを与え、創造性や豊かな人間性を涵養することで、生活の質(QOL)を向上させます。
    • 出典)文化庁「第2期文化芸術推進基本計画」平成30年度
    • 出典)文化審議会「今後の文化政策の在り方について(第一次答申)」平成18年度
自己実現と社会参加の促進
  • 創作活動や発表の場は、住民の自己実現を促します。また、文化活動を通じたコミュニティへの参加は、社会的孤立の防止にも繋がります。
    • 出典)一般社団法人地域創造「フォーラムレポート」
    • 出典)文化庁「劇場・音楽堂等の活性化に関する検討会議(第1回)配付資料」令和4年度
学習機会の提供
  • 子どもたちが質の高い文化芸術に触れることは、豊かな人間性を涵養し、将来の文化の担い手や鑑賞者を育む上で不可欠です。
    • 出典)文化庁「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第一次)について」平成14年度
    • 出典)文化庁「令和元年度 文化政策の実施状況に関する年次報告」令和2年度

地域社会にとっての意義

地域アイデンティティの形成とシビックプライドの醸成
  • 地域固有の文化資源(歴史、伝統芸能、景観等)を活用した活動は、地域のアイデンティティを明確にし、住民の地域への愛着と誇り(シビックプライド)を育みます。
    • 出典)港区「港区文化芸術振興プラン(令和5年度改定)」令和5年度
    • 出典)参議院「文化芸術振興による地域活性化」平成23年度
    • 出典)公益財団法人 人材開発センター「文化のまちづくりとシビックプライド」令和4年度
コミュニティの活性化と共生社会の実現
  • 芸術祭や文化イベントは、多様な人々が集い交流する機会を創出し、コミュニティの活性化に貢献します。また、文化芸術は、国籍や障害の有無などを超えた相互理解を促進し、共生社会の実現に寄与します。
    • 出典)港区「港区文化芸術振興プラン(令和5年度改定)」令和5年度
    • 出典)目黒区「めぐろ芸術文化振興プラン(改定)」平成27年度
    • 出典)文化庁「劇場・音楽堂等の活性化に関する検討会議(第1回)配付資料」令和4年度
経済的価値の創出
  • 文化施設やイベントは、来訪者を増やし、文化観光を促進します。また、アーティストやクリエイターの集積は、クリエイティブ産業の振興や新たなビジネスの創出に繋がり、地域経済を活性化させます。
    • 出典)文化庁「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について」平成30年度
    • 出典)内閣官房・文化庁「文化経済戦略」平成29年度
    • 出典)文化庁「文化芸術創造拠点形成事業報告書」平成21年度

行政にとっての意義

都市魅力の向上と都市間競争力の強化
  • 魅力的な文化芸術活動は、都市のイメージを向上させ、住民や企業から「選ばれる都市」としての競争力を高めます。
    • 出典)文化庁「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次)」平成27年度
    • 出典)横浜市「創造都市とは」令和6年度
他分野の政策課題解決への貢献
  • 文化芸術は、観光、まちづくり、福祉、教育、国際交流といった他分野の政策課題と連携することで、相乗効果を生み出し、より効果的な課題解決に貢献します。
    • 出典)文化庁「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について」平成30年度
    • 出典)西東京市「西東京市第2期文化芸術振興計画」平成31年度
    • 出典)政府「文化芸術基本法の改正について」平成29年度
持続可能な支援モデルの構築
  • 官民連携(PPP/PFI)や寄付文化の醸成を通じて、行政の財政負担を軽減しつつ、持続可能な文化芸術支援の仕組みを構築することが可能です。
    • 出典)内閣官房・文化庁「文化経済戦略」平成29年度
    • 出典)文化庁「文化経済戦略推進事業」
    • 出典)文化庁「我が国の文化政策の変遷」

(参考)歴史・経過

  • 日本の文化政策は、戦後の文化財保護中心の姿勢から、文化の持つ多面的な価値を社会経済の発展に活かす戦略的なアプローチへと大きく転換してきました。この歴史的変遷は、自治体が単なる助成金交付や施設管理に留まらず、より統合的・戦略的な支援策を講じることの正当性と法的根拠を与えています。
    • 1950年代~1960年代(文化財保護の時代)
      • 戦時中の文化統制への反省から、国は文化振興に消極的で、文化財保護が政策の中心でした。
      • 出典)東北芸術工科大学「文化政策論概説」
      • 出典)文化庁「我が国の文化政策の変遷」
    • 1970年代~1980年代(地方の時代とハコモノ行政)
      • 「地方の時代」が叫ばれ、自治体レベルで文化振興の機運が高まりました。
      • 全国で劇場やホールといった公立文化施設(ハコモノ)の建設が急増しました。
      • 出典)東北芸術工科大学「文化政策論概説」
      • 出典)文化庁「我が国の文化政策の変遷」
      • 出典)アーツカウンシル東京「東京アートポイント計画事業検証報告書」令和元年度
    • 2001年(文化芸術振興基本法の制定)
      • 議員立法により「文化芸術振興基本法」が制定され、初めて国及び地方公共団体の責務が法的に明確化されました。これにより、文化芸術振興が国の正式な政策課題として位置づけられました。
      • 出典)衆議院「法律第百四十八号(平一三・一二・七)」
      • 出典)文化庁「文化芸術振興施策の歴史」
      • 出典)文化庁「文化芸術立国を目指して」平成21年度
    • 2017年(文化芸術基本法への改正とパラダイムシフト)
      • 法律名から「振興」が外れ、「文化芸術基本法」へと改正されました。これは、単なる振興に留まらず、文化芸術を観光、まちづくり、国際交流、福祉、産業など他分野と連携させ、社会全体の課題解決に活用するという戦略的な視点への転換を象徴しています。
      • 出典)文化庁「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について」平成30年度
      • 出典)文化庁「文化芸術振興基本法から文化芸術基本法へ」
      • 出典)文化庁「文化庁の組織再編と文化財保護行政の新たな展望について」平成31年度
    • 2017年(文化経済戦略の策定)
      • 文化への投資が新たな価値を創出し、それが文化に再投資される「文化と経済の好循環」の実現を目指す「文化経済戦略」が策定されました。これにより、文化政策と経済政策の連携が本格化しました。
      • 出典)文化庁「文化経済戦略」
      • 出典)内閣官房・文化庁「文化経済戦略」平成29年度
      • 出典)三十三銀行「文化経済戦略」平成30年度

文化芸術創造・表現活動に関する現状データ

住民の文化芸術活動への参加状況

  • コロナ禍の影響が薄れた後も、文化芸術への参加が単純に回復しているわけではなく、経済的要因や関心の低下といった新たな課題が浮上しています。これは、一過性の回復期が終わり、文化芸術が他の余暇活動との厳しい競争に直面していることを示唆しており、単なるイベント開催支援から、参加の動機付けを強化する政策への転換が必要です。
外出を伴う鑑賞活動の減少
  • 過去1年間に文化芸術イベントを外出を伴う形で鑑賞した人の割合は45.3%(令和5年度)で、前年度の52.2%から6.9ポイント減少しています。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
  • 特に小学生から高校生の子どもの鑑賞率は、令和4年度の63.8%から令和5年度には47.8%へと16ポイントも大幅に減少しており、次世代の鑑賞者育成に警鐘を鳴らしています。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
  • 鑑賞しなかった理由として、コロナ禍を理由とする回答が大幅に減少した一方、「関心がない」(23.6%)、「近所で公演や展覧会などが行われていない」(15.6%)、「入場料・交通費など費用がかかり過ぎる」(14.0%)が上位を占めています。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
鑑賞以外の文化活動の停滞
  • 創作活動や地域の祭りへの参加など、鑑賞以外の活動を行った人の割合は13.3%(令和5年度)で、前年度(13.0%)からほぼ横ばいとなっており、文化の担い手層の拡大が停滞している状況がうかがえます。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
文化的環境への満足度の低下
  • オンラインでの鑑賞等も含めた自身の文化的環境に「満足している」と回答した人の割合は35.3%(令和5年度)で、前年度の41.1%から5.8ポイント減少しています。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
  • 地域の文化的環境に満足していない理由としては、「魅力的な活動・イベントがない」が54.0%と最も高くなっています。
    • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度

文化芸術市場の規模と動向

  • 日本のアート市場は、2019年以降、世界平均を上回る成長を見せるなどポテンシャルを秘めている一方で、経済規模に比して依然小さく、直近では縮小に転じるなど、経済状況に左右されやすい脆弱性も併せ持っています。市場の裾野を広げる取り組みと、高価格帯市場を支える基盤強化の両面からのアプローチが求められます。
市場規模の推移
  • 日本の美術品市場規模は、2019年の2,580億円からコロナ禍で一時落ち込みましたが、2021年には2,186億円と回復傾向にありました。
    • 出典)一般社団法人アート東京「日本のアート産業に関する市場調査2019」令和2年度
    • 出典)一般社団法人アート東京「日本のアート産業に関する市場レポート2022」
  • しかし、文化庁による最新の調査では、2023年のアート市場規模は946億円(6億8,100万ドル)と推定され、前年比で10%減少しました。
    • 出典)文化庁「日本のアート市場の規模等に関する調査分析レポート「The Japanese Art Market 2024」」令和6年度
    • 出典)美術手帖「日本のアート市場の現状は? 2023年の売上高は946億円」
  • 一方で、2019年以降の市場成長率(+11%)は、世界のアート市場の成長率(+1%)を上回っており、国内市場の潜在的な成長力を示しています。
    • 出典)文化庁「日本のアート市場の規模等に関する調査分析レポート「The Japanese Art Market 2024」」令和6年度
市場の構造
  • 日本のアート市場の総売上高の68%をディーラーやギャラリーが占めています。
    • 出典)文化庁「日本のアート市場の規模等に関する調査分析レポート「The Japanese Art Market 2024」」令和6年度
  • アート作品の購入目的として「好きな作品を(居住空間に)飾りたいから」という回答が多く、個人のライフスタイルとの密接な関連が日本の市場の特徴です。
    • 出典)エートーキョー株式会社・一般社団法人芸術と創造「日本のアート産業に関する市場調査2021」

国・東京都の文化関連予算の動向

  • 国の文化戦略の重要性がうたわれる一方で、国の一般会計に占める文化予算の割合は長年0.1%程度で横ばいという実態があります。これは、国の政策が特定の大型プロジェクトに重点を置く一方で、文化セクター全体の基盤を底上げする恒常的な支援が不足していることを示唆しています。そのため、特別区は国の予算に過度に依存せず、独自の財源を戦略的に活用し、国の支援が届きにくい創造活動の根幹を支える役割を担うことが重要です。
国の文化予算
  • 文化庁の令和6年度当初予算額は1,062億円(前年度比+0.1%)であり、国の一般会計予算全体に占める割合は約0.1%と、依然として極めて低い水準で推移しています。
    • 出典)美術手帖「過去最大となる一般会計予算114兆円。文化予算はわずか0.1パーセント」
    • 出典)美術手帖「文化庁令和6年度予算は1062億円に。」
    • 出典)文化庁「令和7年度 文化庁関係予算(案)の概要」令和6年度
  • 令和7年度の概算要求額は、デジタル庁一括計上分を含め1,400億円(前年度比+31.8%)と大幅増を要求しており、特に「国立文化財修理センター」の整備や「新進芸術家の海外研修」の拡充などが盛り込まれています。
    • 出典)美術手帖「文化庁の令和7年度概算要求が発表。総額1400億円」
東京都の文化振興予算
  • 東京都生活文化スポーツ局の令和7年度予算案における文化振興関連の予算は、約303億円です。
    • 出典)東京都生活文化スポーツ局「令和7年度 生活文化スポーツ局主要事業」令和6年度
  • 主な内訳として、「東京文化戦略2030」の実現に向けた取組に約35億円、アーツカウンシル東京等による文化の創造・発信に約24億円、都立文化施設の運営に約118億円などが計上されています。
    • 出典)東京都生活文化スポーツ局「令和7年度 生活文化スポーツ局主要事業」令和6年度

課題

住民の課題

文化芸術へのアクセス障壁
  • 経済的・地理的・情報的な理由から、文化芸術を鑑賞・参加したくてもできない住民が一定数存在します。
    • 客観的根拠:
      • 文化芸術を鑑賞しない理由として「入場料・交通費など費用がかかり過ぎる」が14.0%、「近所で公演や展覧会などが行われていない」が15.6%を占めています。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
      • 地域の文化的環境への不満の理由として「魅力的な活動・イベントがない」が54.0%、「近くに文化施設がない」が27.5%と高くなっています。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民間の文化的な体験格差が拡大し、QOLの不均衡や社会的な分断を生む一因となります。
関心の低下と参加意欲の減退
  • 特に若年層を含む一部の層で、文化芸術そのものへの関心が低下しており、将来の担い手・鑑賞者人口の先細りが懸念されます。
    • 客観的根拠:
      • 文化芸術を鑑賞しない最も多い理由は「関心がない」(23.6%)です。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
      • 小学生から高校生の子どものライブ鑑賞率が1年で63.8%から47.8%へ大幅に減少しており、子どもたちが文化芸術から離れつつある傾向が見られます。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 文化市場の縮小と文化の多様性の喪失を招き、社会全体の創造性が低下します。

地域社会(文化芸術の担い手)の課題

創造・表現活動の担い手の脆弱な活動基盤
  • 多くのアーティストやクリエイターは、不安定な収入や社会保障の不備といった課題を抱えており、持続的な活動が困難な状況にあります。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁の第2期基本計画の評価において、コロナ禍で「文化芸術の担い手の活動基盤が脆弱であることが明らかとなった」と指摘されています。特に、適切な契約締結が浸透していない点が課題として挙げられています。
      • 出典)文化庁「第2期文化芸術推進基本計画の実施状況及び達成状況の評価について」令和5年度
      • コロナ禍の緊急支援策「文化芸術活動の継続支援事業」では、フリーランス等の個人事業主からの申請が約7.4万件(A-①、A-②の合計)にのぼり、極めて多くの個人が不安定な状況下で活動している実態が明らかになりました。
      • 出典)文化庁「文化芸術活動の継続支援事業について」令和2年度
      • 出典)舞台芸術制作者オープンネットワーク「文化芸術活動の継続支援事業」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 優れた才能が分野外へ流出し、文化創造の源泉が枯渇してしまいます。
担い手の高齢化と後継者不足
  • 伝統芸能や工芸分野をはじめ、多くの分野で担い手の高齢化が進行し、技術や知識の継承が危機的な状況にあります。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁の基本方針では「地方においては過疎化や少子高齢化等の影響により、地域コミュニティの衰退と文化芸術の担い手不足が指摘されている」と言及されています。
      • 出典)文化庁「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次)」平成27年度
      • 文京区の計画策定資料でも「文化芸術の担い手が高齢化している中で、鑑賞と活動の両面で次代の文化の担い手の育成が必要」と課題認識が示されています。
      • 出典)文京区「文京区文化振興推進会議 第1回会議資料」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域固有の文化が失われ、文化的多様性が損なわれることで、地域の魅力が低下します。

行政の課題

公立文化施設の老朽化と経営課題
  • 1980年代の建設ラッシュ期に整備された多くの公立文化施設が築30~40年を迎え、大規模改修の時期に差し掛かっていますが、財源確保が大きな課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 全国公立文化施設協会の調査では、築約20年以上の施設が8割近くを占め、施設・設備の老朽化が喫緊の課題であると指摘されています。
      • 出典)公益社団法人全国公立文化施設協会「劇場・音楽堂等はいま…」令和3年度
      • 鳥取市の事例では、人口減少による税収減と社会保障費の増大により、公共施設への投資がより厳しくなることが想定されています。これは多くの自治体に共通する課題です。
      • 出典)鳥取市「鳥取市中心市街地の将来の文化芸術施設に関する基本的な考え方(案)」
      • コロナ禍により貸館経営が大きな打撃を受け、施設の収益性がさらに悪化しました。
      • 出典)文化庁「劇場・音楽堂等の活性化に関する検討会議(第1回)配付資料」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施設の安全性低下や機能不全を招き、住民の文化活動の場が失われるとともに、莫大な更新費用が将来世代の負担となります。
縦割り行政による連携不足と効果測定の困難さ
  • 文化政策が観光、まちづくり、福祉等の他分野と連携する重要性が高まる一方、行政の縦割り構造がそれを阻害しています。また、文化政策の成果を客観的に測定・評価する手法が確立されていません。
    • 客観的根拠:
      • 文化審議会では、文化が教育、福祉、観光等と密接な関連をもつことから、関係府省が連携して施策を実施できる体制整備が求められると指摘されています。
      • 出典)文化審議会「今後の文化政策の在り方について(第一次答申)」平成18年度
      • 行政事業レビューでは、文化事業のようなイベントや広報活動の効果測定において、アウトプット指標(開催回数等)だけでなく、アウトカム指標(参加者の認識・行動変容)を設定する必要性が示されています。
      • 出典)内閣官房行政改革推進本部事務局「令和4年秋の年次公開検証(秋のレビュー) 論点等一覧」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 政策の相乗効果が生まれず非効率なままとなり、成果が不明確なため事業の継続や発展に向けた住民や議会の理解が得られにくくなります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果:
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性:
      • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
    • 費用対効果:
      • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性:
      • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。
    • 客観的根拠の有無:
      • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 文化芸術支援は、「①担い手の安定(基盤固め)」→「②地域の魅力創造(活用・展開)」→「③住民の参加促進(裾野拡大)」という好循環を生み出す視点で体系化することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は**「支援策①:創造・活動基盤の強化と担い手支援」**です。文化を生み出す源泉であるアーティストや団体の活動基盤が脆弱であれば、質の高い文化芸術は持続的に生まれません。コロナ禍で露呈したこの脆弱性を解消することが、全ての文化政策の土台となります。
  • 次に、**「支援策③:誰もが文化芸術に親しめる環境整備」**を推進します。鑑賞・参加人口の減少は市場の縮小に直結する喫緊の課題であり、特に次世代を担う子どもたちへのアプローチは即効性と長期的な波及効果が期待できます。
  • これらと並行して、中長期的な視点で**「支援策②:地域文化資源の活用と新たな魅力創出」**に取り組みます。これは、文化をまちづくりや経済活性化に繋げる応用的な施策であり、①と③で固められた基盤の上で大きな効果を発揮します。

各支援策の詳細

支援策①:創造・活動基盤の強化と担い手支援

目的
  • アーティストや文化芸術団体が安定して創造活動に専念できる環境を整備し、持続可能な文化生産のサイクルを確立します。
  • 次代を担う多様な人材を育成し、文化芸術分野の空洞化を防ぎます。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁は、コロナ禍を経て「文化芸術の担い手の活動基盤が脆弱であることが明らかとなった」と総括しており、活動の安定化は国レベルの課題です。
      • 出典)文化庁「第2期文化芸術推進基本計画の実施状況及び達成状況の評価について」令和5年度
      • 文化庁の「新進芸術家海外研修制度」や「メディア芸術クリエイター育成支援事業」は、人材育成が国の重要施策であることを示しており、令和7年度概算要求でも拡充が求められています。
      • 出典)文化庁「メディア芸術クリエイター育成支援事業」
      • 出典)文化庁「新進芸術家海外研修制度」
      • 出典)美術手帖「文化庁の令和7年度概算要求が発表。総額1400億円」
主な取組①:特別区版「アーツ・アクティビティ・サポート」の創設
  • コロナ禍の「文化芸術活動の継続支援事業」を参考に、フリーランスのアーティストや小規模団体を対象とした、活動経費を直接支援する助成制度を恒常的に設置します。
  • 申請手続きを簡素化し、稽古場の確保、資料購入、スキルアップのための研修受講など、日々の地道な創造活動を対象とします。
    • 客観的根拠:
      • 国の「文化芸術活動の継続支援事業」では、上限20万円の個人向け支援(A-①区分)だけで約4万件の交付決定があり、小規模な直接支援に対する膨大なニーズが明らかになりました。
      • 出典)文化庁「文化芸術活動の継続支援事業について」令和2年度
      • 出典)舞台芸術制作者オープンネットワーク「文化芸術活動の継続支援事業」
主な取組②:クリエイティブ・スペースの確保と提供支援
  • 区有施設の未利用スペースや、民間が所有する空き店舗・倉庫等を区が借り上げ、安価な賃料でアトリエや稽古場としてアーティストに提供する「創造拠点バンク」制度を創設します。
  • 横浜市の「BankART1929」のように、歴史的建造物をリノベーションし、アーティストの集積と地域の新たな魅力創出を両立させる創造拠点の整備を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 横浜市の創造都市政策では、歴史的建造物等を活用したNPOとの協働事業により、アーティストの集積に成功し、まちの活性化に繋がっています。
      • 出典)地方創生推進事務局「地域再生計画」
      • 出典)立教大学「クリエイティブシティ・ヨコハマ」
主な取組③:伴走型経営・法務・労務サポートの実施
  • アーツカウンシル東京や区の文化振興財団等に専門相談窓口を設置し、文化芸術団体に対し、助成金申請書類の作成支援、契約書の作成・確認、労務管理、著作権処理などの専門的なアドバイスを無料で提供します。
  • 協同組合日本俳優連合がコロナ禍で取り組んだように、フリーランスの社会的地位向上や労災問題に関する啓発・支援を行います。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁は担い手の課題として「適切に契約を締結することが十分に浸透していない点」を挙げており、専門知識の不足が活動の不安定化に繋がっています。
      • 出典)文化庁「第2期文化芸術推進基本計画の実施状況及び達成状況の評価について」令和5年度
      • 出典)協同組合日本俳優連合「文化芸術活動の継続支援事業完了報告書」令和3年度
主な取組④:次世代クリエイター育成プログラムの拡充
  • 若手アーティストを対象としたコンペティションや発表の機会を増やすとともに、制作費を支援するプログラムを拡充します。
  • 文化庁の「大学における文化芸術推進事業」と連携し、区内の大学が実施するアートマネジメント人材育成プログラム等を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁は「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」などを通じ、若手育成を重点的に支援しています。
      • 出典)文化庁「文化芸術による子供の育成事業」
      • 出典)大阪公立大学「EJ ART」人材育成プログラム」
      • アーツカウンシル東京の助成事業でも、活動基盤形成期の若手からの申請が多く、支援ニーズが高いことが示されています。
      • 出典)アーツカウンシル東京「2025年度 第1期 東京芸術文化創造発信助成 カテゴリーI[単年助成]採択結果の概況」令和6年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内在住・在勤アーティストの活動継続意向率: 90%以上
      • データ取得方法: 支援対象者への年次アンケート調査
    • 区内の文化芸術分野の事業者数(個人事業主含む): 5年間で10%増加
      • データ取得方法: 経済センサス、事業者へのヒアリング調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 支援を受けたアーティストの平均活動収入: 3年間で20%向上
      • データ取得方法: 支援対象者への年次アンケート調査(確定申告等のデータに基づく自己申告)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 伴走型サポートの利用者満足度: 90%以上
      • データ取得方法: サポート利用者へのアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「アーツ・アクティビティ・サポート」の年間交付件数: 200件
      • データ取得方法: 助成事業の実績報告
    • 「創造拠点バンク」を通じて提供されたスペース数: 30箇所
      • データ取得方法: 事業実施部署による実績管理

支援策②:地域文化資源の活用と新たな魅力創出

目的
  • 地域に埋もれた有形・無形の文化資源を掘り起こし、現代的な魅力として再構築することで、地域のアイデンティティを強化し、新たな賑わいを創出します。
  • 文化芸術を核としたまちづくりを推進し、文化観光の促進や地域経済の活性化に繋げます。
    • 客観的根拠:
      • 文化芸術基本法では「各地域における文化芸術の振興及びこれを通じた地域の振興を図る」ことが国の施策として明記されています。
      • 出典)文化庁「文化芸術基本法」
      • 出典)政府「文化芸術基本法の改正について」平成29年度
      • 金沢市や横浜市の事例は、文化を核とした都市戦略が成功することを示しています。
      • 出典)金沢市「金沢市の国際観光施策」
      • 出典)横浜市「創造都市とは」令和6年度
主な取組①:「まちごとミュージアム」構想の推進
  • 商店街の空き店舗、公園、駅前広場、寺社の境内などを活用し、若手アーティストの作品展示やパフォーマンスの場として提供します。
  • 新宿区の「新宿芸術天国」や墨田区の「すみだストリートジャズフェスティバル」のように、地域全体を舞台に見立てたアートプロジェクトを、地域団体や商店街と連携して企画・実施します。
    • 客観的根拠:
      • 墨田区のジャズフェスティバルは、来場者約15万人、経済波及効果約7.8億円という成果を上げており、地域イベントの経済的インパクトを示しています。
      • 出典)行政情報ポータル「文化イベントの開催・誘致」
主な取組②:デジタル・アーカイブと情報発信プラットフォームの構築
  • 地域の歴史、古写真、伝統行事の映像、区ゆかりの文化人の資料などをデジタル化し、誰でもアクセスできるオンライン・アーカイブを構築します。
  • このアーカイブと連携し、区内の文化イベント、施設、文化資源などを一元的に紹介するポータルサイトやアプリを開発・運用します。
    • 客観的根拠:
      • 文化芸術活動をしない理由に「近所で公演等が行われていない」(15.6%)という情報不足の側面があり、情報発信プラットフォームの構築は参加のきっかけ作りとして有効です。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
      • 出典)大和市「第2次大和市文化芸術振興基本計画」
主な取組③:文化資源を活用した観光コンテンツ開発支援
  • 地域の歴史や物語をテーマにしたガイドツアー、伝統工芸の体験ワークショップ、アニメの「聖地巡礼」マップ作成など、文化資源を観光客向けにコンテンツ化する民間事業者やNPOを支援します。
  • 豊島区の「トキワ荘マンガミュージアム」のように、地域の文化資源を核とした集客施設と周辺のまちづくりを連動させます。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁は「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業」に令和7年度予算として14億円を要求しており、文化観光は国の重点施策です。
      • 出典)文化庁「令和7年度 文化庁関係予算(案)の概要」令和6年度
主な取組④:公民連携による文化施設の運営改革
  • 老朽化した区立文化施設について、単純な改修ではなく、図書館や子育て支援施設などを併設した複合施設への転換を検討します。
  • 施設の運営にPFI/PPP手法を導入し、民間のノウハウを活用した魅力的な企画の実施や効率的な管理を目指します。
    • 客観的根拠:
      • 江東区の複合施設化の事例では、年間維持管理コストを約32%削減しつつ、利用者満足度を21.3ポイント向上させており、公民連携による施設改革の有効性を示しています。
      • (出典)江東区「公共施設再編成効果検証報告書」令和4年度(参考事例より引用)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区の文化資源への区民の愛着度: 5年間で15ポイント向上
      • データ取得方法: 区民意識調査
    • 文化観光を目的とした区への来訪者数: 5年間で20%増加
      • データ取得方法: 観光統計調査、主要文化施設・イベントの来場者データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 地域文化イベントへの区民参加率: 5年間で10%向上
      • データ取得方法: イベント毎の参加者数集計、区民意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • デジタル・アーカイブの年間アクセス数: 10万PV
      • データ取得方法: ウェブサイトのアクセス解析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「まちごとミュージアム」の年間展示・公演数: 50件
      • データ取得方法: 事業実施部署による実績管理
    • 支援により開発された文化観光コンテンツ数: 年間10件
      • データ取得方法: 補助金交付実績の集計

支援策③:誰もが文化芸術に親しめる環境整備

目的
  • 経済的・物理的・心理的な障壁を取り除き、子ども、高齢者、障害のある人、外国人など、全ての人が文化芸術を享受できるインクルーシブな環境を実現します。
  • 学校教育や社会教育との連携を強化し、次代の文化の担い手と鑑賞者を育成します。
    • 客観的根拠:
      • 2017年に改正された文化芸術基本法では「年齢、障害の有無又は経済的な状況」にかかわらず鑑賞等ができる環境整備が基本理念として追加されました。
      • 出典)政府「文化芸術基本法の改正について」平成29年度
      • 渋谷区の「ちがいを ちからに 変える街」という基本構想もこの理念に合致しています。
      • 出典)政治山「渋谷発の芸術、文化を世界に発信―多様な個性の育成を」
主な取組①:学校教育と連携した鑑賞・体験プログラムの体系化
  • 文化庁の「文化芸術による子供育成推進事業」と連携し、区内全ての小中学校で、プロの芸術家による巡回公演やワークショップを在学中に一度は体験できるプログラムを導入します。
  • 地域の文化施設や芸術団体と学校をマッチングするコーディネーターを配置し、継続的・体系的な連携を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁は「文化芸術による子供育成推進事業」に令和7年度予算として91億円を要求しており、学校連携は極めて重要な施策です。
      • 出典)文化庁「令和7年度 文化庁関係予算(案)の概要」令和6年度
      • 子どもの鑑賞率の大幅な低下(令和4年度63.8%→令和5年度47.8%)は、この取組の緊急性を示しています。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
主な取組②:アクセシビリティ向上支援
  • 区内の劇場・ホール、美術館等が、バリアフリー改修(スロープ設置、多目的トイレ整備等)や、情報保障(手話通訳、音声ガイド、多言語対応等)を導入する際の経費を助成します。
  • 障害のあるアーティストの創作活動や発表を支援する「アール・ブリュット」等の振興を専門NPOと連携して行います。
    • 客観的根拠:
      • 東京都は「芸術文化事業における鑑賞・参加時のアクセシビリティ向上の取組に対する支援を拡充」する方針を示しており、都の施策との連携が可能です。
      • 出典)東京都生活文化スポーツ局「令和7年度 生活文化スポーツ局主要事業」令和6年度
主な取組③:参加しやすい料金設定とチケット購入支援
  • 区主催・共催の文化事業において、子ども・若者(例:18歳以下)の無料招待枠や、高齢者・障害者向けの割引制度を導入します。
  • 区内の文化施設で共通して使える「文化芸術活動応援クーポン」を、子育て世帯などに配布します。
    • 客観的根拠:
      • 鑑賞しない理由として「費用がかかりすぎる」(14.0%)が上位にあり、経済的負担の軽減は直接的な参加促進策となります。
      • 出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度
主な取組④:デジタルデバイド解消とオンライン鑑賞の推進
  • 高齢者等を対象に、スマートフォンの操作やオンラインチケットの購入方法などを教える「デジタル文化講座」を地域の公民館等で実施します。
  • 区立文化施設の公演や展覧会の一部を、高品質な映像でオンライン配信し、来場が困難な人にも鑑賞機会を提供します。
    • 客観的根拠:
      • コロナ禍でオンライン鑑賞が普及しましたが、デジタルデバイドによりその恩恵を受けられない層も存在します。全ての人がアクセスできる環境整備が共生社会の観点から重要です。
      • 出典)目黒区「めぐろ芸術文化振興プラン(改定)」平成27年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区民の文化芸術鑑賞・参加率: 5年間で10ポイント向上
      • データ取得方法: 区民意識調査、文化庁「文化に関する世論調査」との比較分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 子ども(小中学生)の年間文化芸術鑑賞体験率: 95%以上
      • データ取得方法: 教育委員会を通じた学校へのアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 支援対象事業における若者(18歳以下)の参加者数: 対前年比20%増
      • データ取得方法: 各事業のチケット販売・来場者データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 学校連携プログラムの実施校数: 区内全小中学校の100%
      • データ取得方法: 事業実施報告
    • アクセシビリティ向上支援の助成件数: 年間15件
      • データ取得方法: 助成事業の実績報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

豊島区「国際アート・カルチャー都市構想」

  • 「消滅可能性都市」の指摘をバネに、「まち全体が舞台の、誰もが主役になれる劇場都市」をコンセプトとして掲げ、文化を軸とした都市再生を強力に推進しています。旧区役所跡地を公民連携で再開発し、8つの劇場を持つ複合施設「Hareza池袋」を整備したほか、池袋西口公園の野外劇場化など、ハード整備とソフト事業を一体的に展開しています。
  • 成功要因
    • 明確で強力なビジョンとトップのリーダーシップ
    • 公民連携(PPP)手法の積極的な活用による財政負担の抑制と民間活力の導入
    • マンガ・アニメといったサブカルチャーを含む多様な文化を尊重し、まちの強みとして活用
    • 文化施設整備を公園のリニューアルなど周辺のまちづくりと連動させた点
  • 客観的根拠
    • 2019年の「東アジア文化都市」事業では397事業が実施され、延べ350万人が参加しました。
    • 出典)豊島区「国際アート・カルチャー都市 実現戦略推進事業」
    • 旧庁舎跡地の活用など、区有資産を有効活用し、財政負担を抑えながら新たな文化拠点を創出しています。
    • 出典)豊島区「国際アート・カルチャー都市 実現戦略推進事業」
    • 出典)officee magazine「2020年に向けて池袋が大きく変わる!」

渋谷区「多様性とインクルージョンを核とした文化振興」

  • 「ちがいを ちからに 変える街」を基本構想に掲げ、文化芸術を通じて多様性を尊重し、共生社会を実現する取り組みを推進しています。ジェンダーやセクシュアリティ、人権に関する拠点施設「渋谷インクルーシブシティセンター〈アイリス〉」を設置し、相談事業や学習・交流機会を提供。日本財団との包括連携協定により、民間と連携したソーシャルイノベーションを文化面でも展開しています。
  • 成功要因
    • 文化芸術を社会課題解決(人権、多様性尊重)の手段として明確に位置づけている点
    • NPOや企業など、行政以外の多様な主体との強力なパートナーシップ
    • 当事者の視点を重視した拠点づくりとプログラム提供
  • 客観的根拠
    • 「渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例」(令和6年施行)など、理念を具体的な制度として裏付けています。
    • 出典)渋谷区「男女平等・多様性社会推進行動計画」
    • 「アイリス」ではLGBT専門相談など、具体的なニーズに応えるサービスを提供しています。
    • 出典)渋谷区文化総合センター大和田「渋谷インクルーシブシティセンター〈アイリス〉」

墨田区「すみだ北斎美術館を核とした地域連携」

  • 世界的な知名度を誇る葛飾北斎の生誕地という地域資源を最大限に活用。「すみだ北斎美術館」の建設を、ふるさと納税等を活用した寄付キャンペーンで「みんなで建てた」美術館として実現し、区民のシビックプライドを醸成しました。美術館を核として、周辺の「北斎通り」の景観整備や、地域の商店・団体と連携したイベントを展開し、点から面への広がりを生み出しています。
  • 成功要因
    • 地域が誇るキラーコンテンツ(北斎)への選択と集中
    • 建設段階からの巧みなファンドレイジングとPR戦略による区民・国民の巻き込み
    • 美術館という「点」の整備と、周辺のまちづくりという「面」の整備を戦略的に連動させたこと
  • 客観的根拠
    • 開館から約2年3ヶ月で来場者数60万人を突破するなど、高い集客力を実現しています。
    • 出典)インパクトラボ「共感が地域に拡がり、未来への懸け橋に」
    • 美術館建設にあたり、ふるさと納税を含む寄付金を積極的に活用し、官民一体でのプロジェクトを成功させました。
    • 出典)総務省「ピックアップ!ふるさと納税|東京都 墨田区」

全国自治体の先進事例

横浜市「創造都市(クリエイティブシティ)横浜」

  • 歴史的建造物や港湾倉庫など、都市のストックを創造活動の拠点として活用する「創造界隈」を形成しています。NPO法人「BankART1929」との連携による拠点の運営や、現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」の開催など、行政がプラットフォームを提供し、民間の専門性や活力を最大限に引き出す手法で、アーティストやクリエイターが集まるエコシステムを構築しています。
  • 成功要因
    • 「都市デザイン」の歴史的文脈を継承し、文化を都市戦略の中心に据えた一貫性
    • 行政は「場」を提供し、運営は専門性を持つNPOに委ねるという効果的な官民の役割分担
    • 歴史的建造物等の既存ストックを保存・活用し、新たな価値を付加するリノベーションまちづくり
  • 客観的根拠
    • BankART1929などの活動により、4年間で約16億円の来場者消費による経済波及効果が生まれたと試算されています。
    • 出典)文化庁「文化芸術創造拠点形成事業報告書」平成21年度
    • アーティスト・クリエーターの活動拠点を新たに150組形成することを目標に掲げるなど、具体的な数値目標を伴う戦略を推進しています。
    • 出典)横浜市「クリエイティブシティ・ヨコハマの新たな展開に向けて」

金沢市「伝統と現代が融合する文化創造都市」

  • 加賀藩以来の伝統工芸や伝統芸能、茶の湯文化といった豊かな歴史文化を保存・継承するだけでなく、現代アートの拠点「金沢21世紀美術館」を設置することで、伝統と現代を融合させた独自の都市魅力を創出しています。ユネスコ創造都市ネットワーク(クラフト&フォークアート分野)に加盟し、国際的なブランドを確立。市民が日常的に文化に親しむ「もてなし」の精神がまち全体に根付いています。
  • 成功要因
    • 地域固有の歴史・伝統文化という「本物」の強みを最大限に活かしている点
    • 伝統文化の保存施策と、現代アートの振興施策を両輪で進め、相乗効果を生み出していること
    • 「金沢市民芸術村」のような、市民が24時間利用できる創造活動の場を提供するなど、担い手育成にも注力
  • 客観的根拠
    • 国の重要伝統的建造物群保存地区が4地区あり、全国最多です。
      • 出典)金沢市「金沢市の国際観光施策」
    • 2009年に世界で初めてユネスコ創造都市のクラフト分野で認定され、国際的な評価を確立しています。
      • 出典)金沢市「金沢市の国際観光施策」

参考資料[エビデンス検索用]

  • 文化庁
    • 「文化に関する世論調査」令和5年度((出典)文化庁「文化に関する世論調査(令和5年度調査)」令和6年度)
    • 「文化芸術基本法」(平成13年法律第148号、平成29年改正)((出典)文化庁「文化芸術基本法」ほか)
    • 「第2期文化芸術推進基本計画」及びその進捗状況に関する評価((出典)文化庁「第2期文化芸術推進基本計画の実施状況及び達成状況の評価について」令和5年度)
    • 「文化経済戦略」(平成29年)((出典)内閣官房・文化庁「文化経済戦略」平成29年度)
    • 令和7年度文化庁概算要求((出典)美術手帖「文化庁の令和7年度概算要求が発表。総額1400億円」)
    • 令和6年度文化庁予算((出典)美術手帖「文化庁令和6年度予算は1062億円に。」)
    • 「文化芸術活動の継続支援事業」実績報告((出典)文化庁「文化芸術活動の継続支援事業について」令和2年度)
    • 「日本のアート市場の規模等に関する調査分析レポート」((出典)文化庁「日本のアート市場の規模等に関する調査分析レポート「The Japanese Art Market 2024」」令和6年度)
  • 東京都
    • 生活文化スポーツ局 令和7年度予算案((出典)東京都生活文化スポーツ局「令和7年度 生活文化スポーツ局主要事業」令和6年度)
    • アーツカウンシル東京「東京芸術文化創造発信助成」採択結果((出典)アーツカウンシル東京「2025年度 第1期 東京芸術文化創造発信助成 カテゴリーI[単年助成]採択結果の概況」令和6年度)
  • その他
    • 一般社団法人アート東京「日本のアート産業に関する市場調査」各年度版((出典)一般社団法人アート東京「日本のアート産業に関する市場調査2019」令和2年度)
    • 各特別区・自治体の文化振興計画、先進事例に関する報告書((出典)豊島区「国際アート・カルチャー都市 実現戦略推進事業」ほか)

まとめ

 東京都特別区の文化芸術支援は、コロナ禍で露呈した担い手の脆弱性を克服し、持続可能な創造の生態系を構築する段階に移行すべきです。具体的には、個々のイベント助成から、アーティストの活動基盤を直接支える恒常的な支援へと軸足を移す必要があります。さらに、文化をまちづくりや福祉、教育と統合し、地域資源の活用とアクセシビリティ向上を両輪で進めることで、全ての住民が心豊かな生活を享受し、都市の活力を生み出す好循環を実現できます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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