子育て支援サービスの創出(企業・NPO等多様な主体との連携)

はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要(子育て支援を取り巻く環境)
- 自治体が企業・NPO等多様な主体と連携して子育て支援サービスを創出する意義は、「多様化・複雑化する子育てニーズへの的確な対応」と「持続可能で質の高い支援エコシステムの構築」にあります。
- 現代の子育て環境は、共働き世帯の増加、地域コミュニティの希薄化、そして家庭のあり方や価値観の多様化により、大きな変革期を迎えています。特に、女性の就業継続が一般的となり、保育サービスの需要が「量」だけでなく「質」や「多様性」においても高度化している一方で、かつて地域社会が自然に担っていた相互扶助の機能は弱体化しています。
- こうした状況下では、行政が単独で提供する画一的なサービスだけでは、保護者が直面する個別の課題、例えば「子どもの急な病気に対応できる預け先がない」「仕事の都合で保育園の送迎が間に合わない」「誰にも相談できず孤立してしまう」といった、きめ細かなニーズに応えることが困難になっています。
- そこで、企業が持つ経営資源(資金、人材、技術、不動産)や専門性、そしてNPOが持つ現場への密着性、柔軟性、当事者への共感力を活かした、新たな官民連携モデルの構築が不可欠です。行政がハブとなり、多様な主体を繋ぎ合わせることで、それぞれの強みを最大限に活かした、重層的で質の高い子育て支援のエコシステムを創り出すことが、現代の自治体に求められる重要な役割となっています。
意義
官民が連携して子育て支援に取り組むことは、単にサービスメニューを増やすという「補完」的な意味合いに留まりません。その真の意義は、社会全体の「子育て文化の変革」を促す点にあります。企業が子育て支援を福利厚生やCSRの一環としてではなく、重要な経営課題として捉え、男性育休の取得促進や柔軟な働き方を推進すること。NPOが地域に根差した活動を通じて、住民同士の顔の見える関係性を再構築し、「困ったときはお互い様」という地域文化を醸成すること。そして、行政がこれらの多様な取り組みを情報プラットフォームや人的ネットワークで繋ぎ、支援の輪を広げていくこと。こうした連携のプロセスを通じて、これまで個々の家庭の問題とされがちだった子育てが、社会全体の責務であり、未来への投資であるという認識が共有されていきます。これは、こども家庭庁が掲げる「こどもまんなか社会」の理念を、地域レベルで具現化していくための、極めて具体的かつ効果的なアプローチと言えます。
こどもにとっての意義
- 多様な体験機会の獲得
- 行政の提供するサービスだけでは得難い、企業の専門知識を活かした科学実験教室や、NPOが企画する自然体験キャンプなど、多様なプログラムに参加する機会が増えます。これにより、こどもの知的好奇心が刺激され、自らの興味や才能を発見するきっかけとなります。
- 多様な大人との関わりの創出
- 親や学校の先生だけでなく、NPOのスタッフや企業のボランティア、地域の高齢者など、様々な背景を持つ大人たちと関わる機会が生まれます。こうした多様な価値観に触れる経験は、こどもの社会性やコミュニケーション能力、そして困難を乗り越える力を育む上で非常に重要です。
- セーフティネットの重層化
- 家庭や学校に加えて、こども食堂や地域の居場所、学習支援の場など、信頼できる大人と出会える「第三の居場所」が増えます。この重層的なセーフティネットは、いじめや不登校、家庭内の問題などを抱えるこどもを早期に発見し、適切な支援に繋げるための重要な社会的インフラとなります。
保護者にとっての意義
- ニーズに応じたサービスの選択肢拡大
- 行政による基本的な保育サービスに加え、企業が提供するベビーシッターサービスや、NPOによる病児・病後児保育、送迎サポート、家事支援など、多様なサービスが利用可能になります。これにより、保護者は自らの就労形態や家庭の状況に応じて、最適な支援を柔軟に組み合わせることができます。
- 精神的・身体的負担の軽減と孤立の解消
- NPOが運営する子育てひろばや親子のためのサロンは、同じ悩みを持つ保護者同士が出会い、交流する貴重な場となります。また、企業が提供するオンラインコミュニティや専門家による相談サービスは、時間や場所を選ばずに利用でき、育児に関する不安や孤立感を効果的に和らげます。
- 仕事と育児の両立支援
- 企業によるテレワークや短時間勤務制度の導入は、働き方の柔軟性を高めます。これに加えて、NPO等が提供する送迎サービスや病児保育が、子どもの急な発熱といった突発的な事態に対応するセーフティネットとなり、保護者が安心して就労を継続できる環境を強力に後押しします。
地域社会にとっての意義
- 地域コミュニティの活性化
- こども食堂や地域のお祭りといった子育て支援イベントは、子育て世帯だけでなく、地域の高齢者や学生など、多様な世代が集う交流のハブとなります。こうした活動を通じて、希薄化していた地域のつながりが再生され、活気あるコミュニティが育まれます。
- 新たな雇用の創出と経済循環
- 子育て支援サービスの担い手として、有償ボランティアやNPOの常勤・非常勤職員といった新たな雇用が地域に生まれます。また、地域の企業が提供するサービスが利用されることで、地域内での経済循環が促進されます。
- シビックプライドの醸成
- 「自分たちのまちは、企業やNPO、地域住民が一体となって子育てを支えている」という実感は、住民の地域に対する愛着や誇り(シビックプライド)を育みます。これは、地域の魅力を高め、新たな子育て世帯を呼び込む好循環を生み出す原動力となります。
行政にとっての意義
- 専門性と柔軟性の獲得
- IT企業が持つデジタル技術、NPOが持つ特定の課題(発達障害、ひとり親支援など)に関する専門知識など、行政内部だけでは蓄積が難しい専門性を活用できます。また、民間ならではの柔軟な発想や迅速な対応力により、変化する住民ニーズに即応したサービス展開が可能になります。
- 財政的・人的資源の効率的活用
- 企業からの寄付(企業版ふるさと納税など)や協賛、ボランティアとして参加する社員など、民間の持つ多様な資源を活用することで、限られた行政の予算や人員を、真に行政でなければできない中核的な業務に集中させることができます。
- 政策立案・改善へのフィードバック
- 子育ての現場に最も近いNPOや、従業員のニーズを把握している企業から、日々の子育てに関する課題や新たなニーズに関する生の情報を得ることができます。この貴重なフィードバックは、より実態に即した効果的な政策の立案や、既存事業の改善に直結します。
(参考)歴史・経過
- 1990年代:エンゼルプランと「子育て支援」の黎明期
- 1990年、前年の合計特殊出生率が過去最低の1.57であったことが社会に衝撃を与え(1.57ショック)、政府は初めて「子育て支援」という言葉を使い、本格的な対策に乗り出しました。
- 1994年、文部・厚生・労働・建設の4大臣合意により「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」が策定され、「社会全体での子育て支援」という理念が初めて公式に提唱されました。保育所の増設や延長保育の推進など、主に「仕事と育児の両立支援」に重点が置かれました。
- 1999年には、さらに低下する出生率に対応するため「新エンゼルプラン」が策定され、保育サービスの拡充に向けた具体的な数値目標が設定されました。
- (出典)フローレンス「新エンゼルプランとは?」 3
- 2000年代:「待機児童ゼロ作戦」と支援の多様化
- 2001年、小泉内閣のもとで「待機児童ゼロ作戦」が打ち出され、保育所の受け皿拡大が国策として強力に推進されました。しかし、保育ニーズの増大に追いつかず、待機児童数は2000年代を通じて2万人前後で高止まりしました。
- (出典)(https://www.rengo-soken.or.jp/dio/dio279-1.pdf) 4
- (出典)構想日本「政策課題 「待機児童」」 5
- 2003年に「次世代育成支援対策推進法」が成立し、市町村が子育て支援の計画主体となることが定められました。また、地域子育て支援センター事業などが法定化され、NPO等への事業委託が可能になるなど、民間主体の役割が制度上も意識され始めました。
- 2001年、小泉内閣のもとで「待機児童ゼロ作戦」が打ち出され、保育所の受け皿拡大が国策として強力に推進されました。しかし、保育ニーズの増大に追いつかず、待機児童数は2000年代を通じて2万人前後で高止まりしました。
- 2010年代:子ども・子育て支援新制度と待機児童問題の深刻化
- 2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」が全国でスタートしました。これにより、市町村の計画に基づき、認定こども園、小規模保育、家庭的保育といった多様な保育サービスが給付対象となり、株式会社やNPO法人による保育事業への参入が本格化しました。
- (出典)門真市「子ども・子育て支援新制度について」 6
- 一方で、この時期は女性の社会進出がさらに進み、共働き世帯が急増したことで保育ニーズが爆発的に拡大。特に都市部では待機児童問題が深刻な社会問題となり、2017年には全国の待機児童数が26,081人と過去最多を記録しました。
- 2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」が全国でスタートしました。これにより、市町村の計画に基づき、認定こども園、小規模保育、家庭的保育といった多様な保育サービスが給付対象となり、株式会社やNPO法人による保育事業への参入が本格化しました。
- 2020年代:「量の拡大」から「質の向上」へ、多様な連携の本格化
- 国と自治体による集中的な保育所整備の結果、全国の待機児童数は劇的に減少し、2024年4月1日時点で2,567人まで減少しました。
- この「待機児童問題の解消」という大きな節目を受け、子育て支援の政策的重点は、施設のハコモノ整備といった「量の拡大」から、「保育の質の向上」「多様な子育てニーズへの対応」「支援の担い手確保」へと大きくシフトしています。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度 10
- (出典)東京都「東京都子供・子育て支援総合計画(第3期)」2025年 12
- 2023年にこども家庭庁が発足し、「こどもまんなか社会」の実現が国家目標として掲げられました。同庁は、従来の行政主導の枠組みを超え、企業やNPO、地域社会といった多様な主体との連携・協働を、政策推進の根幹に明確に位置づけています。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書(本文)」令和6年度 13
子育て支援サービスに関する現状データ
東京都特別区における子育て支援の現状は、一見矛盾する二つの大きな潮流によって特徴づけられています。それは、「少子化の進行」と「子育て支援ニーズの高度化・多様化」が同時に、かつ深刻なレベルで進行しているというパラドックスです。特別区の合計特殊出生率は全国で最も低い水準で推移し、子どもを持つという選択自体が難しくなっている現状があります。その一方で、出産を選択した家庭では女性の就業継続が一般的となり、保育サービスの利用希望は依然として高い水準を維持しています。この構造は、子育て支援に対するニーズが、「子どもを産むか迷う層」への経済的支援や環境整備と、「既に子どもを育てながら働く層」への質の高い多様な保育・育児サービスの提供という、二つの異なるベクトルに分化していることを示唆しています。この二極化したニーズ構造を的確に捉えなければ、効果的な政策を立案することはできません。単なる出生率対策でも、単なる待機児童対策でもない、両方の現実に目を向けた戦略的なアプローチ、特に後者の「かゆいところに手が届く」支援を実現する上で、官民連携は極めて重要な鍵となります。
- 出生数・合計特殊出生率の動向
- 日本の出生数は減少に歯止めがかからず、2023年には72万7,288人と、統計開始以来の最少を記録しました。合計特殊出生率も1.20と過去最低を更新し、少子化は危機的な状況にあります。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度 10
- 東京都の合計特殊出生率は、令和3年(2021年)時点で1.08と、全国平均(1.30)を大きく下回っています。特別区全体でみても、近年は低下傾向が続いており、全国で最も子どもを産み育てることが難しい地域の一つとなっています。
- (出典)中野区「中野区の人口の現状と将来」 14
- (出典)特別区長会事務局「少子化対策に関する調査研究報告書」令和6年3月 15
- 日本の出生数は減少に歯止めがかからず、2023年には72万7,288人と、統計開始以来の最少を記録しました。合計特殊出生率も1.20と過去最低を更新し、少子化は危機的な状況にあります。
- 共働き世帯の増加と女性の就業状況
- 1997年に夫婦ともに雇用者の「共働き世帯」が「専業主婦世帯」を上回って以降、その差は一貫して拡大しています。特に2010年以降はその増加ペースが加速しており、共働きが子育て世帯の標準モデルとなっています。
- 第1子出産前後における女性の就業継続率は53.1%(2015-2019年調査)に達し、特に正規の職員に限れば69.1%と約7割が就業を継続しています。これは、出産後も働き続けたいという女性の強い意志と、それを支える社会のニーズが高いことを示しています。
- (出典)男女共同参画局「男女共同参画白書 平成18年版」 17
- (出典)内閣府「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018」 18
- 保育サービスの利用状況と待機児童数
- 国と自治体の強力な整備推進により、全国の待機児童数は2017年のピーク時(26,081人)から劇的に減少し、2024年4月には2,567人となりました。
- しかし、東京都では2024年4月1日時点で361人と、前年の286人から微増に転じました。特に利用ニーズの高い1・2歳児の待機児童が増加しており、保育の受け皿確保が完了したとは言えない状況です。
- 特別区内でも、2024年時点で世田谷区が58人、荒川区が33人など、地域によっては依然として待機児童が発生しており、局所的な保育ニーズへの対応が課題となっています。
- 子育てにおける孤立感・負担感
- 地域コミュニティアプリの調査によると、子育てを経験した女性の74.2%が「孤独・孤立を感じたことがある」と回答しており、これは男性(35.5%)の2倍以上の数値です。特に、初めての育児となる第一子が0歳の時に、57.9%が孤独を最も強く感じています。
- (出典)PIAZZA株式会社「孤育て経験に関する調査」令和6年度 22
- 内閣官房が実施した全国調査では、30歳代の孤独感が他のどの年代よりも高いという結果が出ており、まさに子育て世代が社会的に孤立しやすい状況にあることがデータで裏付けられています。
- 地域コミュニティアプリの調査によると、子育てを経験した女性の74.2%が「孤独・孤立を感じたことがある」と回答しており、これは男性(35.5%)の2倍以上の数値です。特に、初めての育児となる第一子が0歳の時に、57.9%が孤独を最も強く感じています。
課題
こどもの課題
- 多様な遊びや体験機会の不足
- 都市化、少子化、そして安全への過度な配慮などから、こどもたちが自由に集い、異年齢で交流しながら遊べる「空き地」のような空間が失われています。また、習い事などで多忙なこどもも多く、学校と家庭以外の多様なコミュニティに触れる機会が減少しています。これは、こどもの社会性や創造性、困難に立ち向かう力といった非認知能力の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
- 客観的根拠:
- こども家庭庁は、こども施策の基本方針である「こども大綱」の中で、「多様な遊びや体験、活躍できる機会づくり」をライフステージを通した重要事項として明確に位置づけています。これは、国としてこの課題の重要性を認識している証左です。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度 10
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- こどもの社会性やコミュニケーション能力の低下、自己肯定感の低い若者の増加に繋がる恐れがあります。
- こどもの貧困と教育格差
- 家庭の経済状況が、こどもの教育や体験の機会に直接的な格差をもたらしています。塾や習い事に通えないだけでなく、家庭の文化資本(蔵書数、文化活動への参加等)の差が学力に影響を及ぼすことも指摘されています。NPOによる学習支援やこども食堂などの取り組みは存在するものの、支援を必要とする全てのこどもに届いているとは言えない状況です。
- 客観的根拠:
- 2022年の国民生活基礎調査に基づくこどもの相対的貧困率は11.5%であり、約9人に1人のこどもが貧困状態にあります。特に、ひとり親世帯においては44.5%と、極めて深刻な状況です。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度 10
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 貧困の世代間連鎖が固定化し、社会全体の活力と公正性が損なわれるリスクがあります。
保護者の課題
- 「孤育て」による精神的負担の増大
- 都市部における高い匿名性、核家族化の進行、そして地域コミュニティの希薄化が重なり、多くの保護者、特に母親が育児の悩みや不安を誰にも相談できずに一人で抱え込む「孤育て」状態に陥っています。特に転入者が多い特別区では、身近に頼れる親族や友人がいないケースも多く、問題はより深刻です。
- 客観的根拠:
- ある調査では、子育て中の女性の実に74.2%が「孤独・孤立を感じたことがある」と回答しています。孤独を感じる最大の理由の一つが「大人と話す機会がない」ことであり、日中こどもと二人きりで過ごす時間の精神的負担の大きさがうかがえます。
- (出典)PIAZZA株式会社「孤育て経験に関する調査」令和6年度 22
- 港区が実施した調査では、困った時に子どもをみてもらえる親族・知人が「いずれもいない」と回答した保護者の割合が30.1%に達し、5年前の前回調査(24.7%)から5.4ポイントも増加しており、孤立化が進行している状況が示されています。
- (出典)港区「港区子ども・若者・子育て支援に関する実態調査報告書 概要版」令和5年度 24
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 産後うつの発症リスク増大や、ストレスが引き金となる児童虐待の発生に繋がる危険性があります。
- 仕事と育児の両立の困難さ
- 待機児童問題が一定の緩和を見たとはいえ、保護者が直面する両立の壁は依然として高いです。保育園に入れたとしても、こどもの急な発熱や感染症による登園停止、保育園の送迎時間の制約、頻繁な保護者会や行事への参加など、日常的に仕事との調整を迫られます。病児保育施設は数が少なく予約も困難であり、多くの保護者が有給休暇の消化や、祖父母等の属人的なサポートに頼らざるを得ないのが実情です。
- 客観的根拠:
- 子育て世代の中心である30歳代男性の約4分の1が週60時間以上の長時間労働に従事しており、物理的に家事・育児へ参画する時間を確保することが困難な構造があります。
- (出典)厚生労働省「子ども・子育て応援プラン」平成16年度 25
- 保護者が本当に頼りたい支援と、実際に利用できる支援の間には大きなギャップが存在します。調査では、女性の52.1%がファミリーサポートなどの「行政サービス」を頼りたいと回答していますが、実際に頼れているのは2割未満に留まっています。
- (出典)PIAZZA株式会社「孤育て経験に関する調査」令和6年度 22
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 女性のキャリア中断(マミートラック)や離職に繋がり、ジェンダーギャップの固定化と世帯収入の減少を招きます。
地域社会の課題
- 地域コミュニティの機能不全
- 都市部を中心に地縁的なつながりが希薄化し、自治会・町内会への加入率低下や活動の停滞が顕著です。これにより、かつて地域社会が自然に有していた「おせっかい」機能、すなわち、こどもの見守りや子育て家庭への声かけ、災害時の安否確認といった相互扶助の仕組みが失われつつあります。
- 客観的根拠:
- 全国の市区町村を対象としたアンケート調査では、自治会が抱える課題として「役員・運営の担い手不足」(86.1%)、「役員の高齢化」(82.8%)、「近所付き合いの希薄化」(59.2%)が上位を占めており、コミュニティの持続可能性そのものが揺らいでいます。
- (出典)総務省「地域コミュニティに関する研究会報告書」平成19年度 26
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 災害時の共助機能の低下による被害拡大や、孤独死、児童虐待の発見の遅れなど、地域全体の安全・安心が脅かされます。
- 支援の担い手不足と固定化
- こども食堂や子育てひろばといった地域の自発的な子育て支援活動は、その多くが特定の意欲ある個人や団体の善意と自己犠牲によって支えられています。活動資金の確保や後継者育成は常に大きな課題であり、担い手の高齢化や燃え尽きにより、活動が先細りしていくケースも少なくありません。
- 客観的根拠:
- 京都市の調査では、自治会・町内会の運営課題として「参加者の固定化」が挙げられており、これは地域の子育て支援活動にも共通する構造的な課題であると推察されます。新たな担い手が参入しにくい環境は、活動の硬直化と持続可能性の低下を招きます。
- (出典)京都市「新たな地域コミュニティ活性化ビジョン」令和4年度 27
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 貴重な地域の子育て支援拠点が次々と失われ、行政サービスだけではカバーできない支援の空白地帯が拡大する可能性があります。
行政の課題
- 縦割り行政による支援の分断(サイロ化)
- 子育て支援は、福祉部門(保育、児童相談)、保健部門(母子保健、健診)、教育部門(学校、学童)など、複数の部局にまたがる複合的な領域です。しかし、多くの自治体では部局間の情報共有や連携が不十分な「縦割り行政」が根強く残っており、支援が分断されています。これにより、利用者は同じ内容を複数の窓口で説明させられたり、制度と制度の狭間に落ちて必要な支援を受けられないといった事態が生じています。
- 客観的根拠:
- 専門家は、公的な子育て支援制度が画一的であるため、単独では必然的に「支援の切れ目」が生じると指摘しています。この切れ目を埋めるためには、NPOなど民間組織との連携による柔軟な対応が不可欠です。
- (出典)構想日本「政策バンク」 28
- 横浜市が実施したSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)事業の報告書では、サービス提供団体と行政の連携の重要性が強調される一方、患者の流動性が高い都市部においては、区や市をまたいだ自治体間の連携も大きな課題となることが示唆されています。
- (出典)総務省「データ利活用型地域社会モデル構築事業成果報告書」平成30年度 29
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 特に複数の困難を抱えるハイリスク家庭への対応が遅れ、問題が深刻化してから介入せざるを得なくなり、結果としてより大きな行政コストが発生します。
- 多様な民間主体との連携ノウハウの不足
- 企業やNPOと対等なパートナーとして連携し、効果的な協働事業を企画・運営するためのノウハウや専門知識を持つ行政職員は依然として少ないのが現状です。民間とは異なる行政特有の会計ルールや契約手続きの煩雑さ、成果を客観的に評価する指標の欠如などが、円滑な官民連携を阻む見えない壁となっています。
- 客観的根拠:
- こども家庭庁が「地域少子化対策重点推進交付金」の要件を大幅に緩和し、自治体の創意工夫や官民連携を促す方針を打ち出したことは、裏を返せば、これまでの制度が柔軟な連携の足かせとなっていた実態を示唆しています。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度 10
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 地域に存在する貴重な民間の資源(アイデア、資金、人材、技術)を課題解決に活かすことができず、行政サービスの質の停滞と非効率な財政運営が続くことになります。
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
- 即効性・波及効果
- 施策の実施から効果発現までの期間が比較的短く、かつ、子育て支援という直接的な目的の達成に留まらず、地域経済の活性化、行政業務の効率化、住民のシビックプライド醸成など、他の政策分野にも正の波及効果をもたらす施策を高く評価します。
- 実現可能性
- 大規模な法改正や条例制定、巨額の初期投資を必要とせず、現行の法制度や予算、人員体制の範囲内で比較的速やかに着手・実行できる施策を優先します。特に、既存の事業やリソースを有効活用できる施策は、優先度が高くなります。
- 費用対効果
- 投入する予算や人員といった行政コストに対して、得られる社会的便益(保護者の子育て負担軽減、こどもの健全な育成、将来的な社会的コストの削減など)が大きい施策を優先します。短期的な支出だけでなく、中長期的な視点での効果を重視します。
- 公平性・持続可能性
- 一部の特定の層だけでなく、所得や就労状況、居住地域に関わらず、支援を必要とする幅広い子育て家庭に裨益する公平性を備えた施策を優先します。また、一過性のイベントや単年度の補助金で終わらず、事業として自走し、長期的に継続可能な仕組みを持つ施策を高く評価します。
- 客観的根拠の有無
- 国の白書や統計調査、学術研究等によってその効果が示唆されている、あるいは、他の自治体における先進事例として成功実績が報告されているなど、効果を裏付ける客観的なエビデンスが存在する施策を最優先します。
支援策の全体像と優先順位
- 多様化・複雑化する子育てニーズに、企業やNPO等と連携して効果的に応えていくためには、単発の事業を積み重ねるのではなく、戦略的な視点に基づいた総合的な支援基盤を構築する必要があります。本報告書では、そのための具体的な方策として、「①デジタル基盤の整備」「②人的ネットワークの構築」「③持続可能な資金調達」という、相互に連携し補完しあう3つの支援策を柱として提案します。
- これらのうち、最優先で取り組むべきは「支援策①:地域子育てDXプラットフォームの構築と推進」です。これは、保護者の情報格差を解消し、行政の業務効率を向上させると同時に、多様な民間主体が参画するための共通基盤となるためです。このデジタル基盤がなければ、他の支援策の効果も限定的なものになってしまいます。
- 次に、DXの推進と並行して「支援策②:「地域子育てコーディネーター」を核とした協働ネットワークの強化」を強力に推進します。デジタルだけでは届かない、個別の事情を抱えた家庭への「顔の見える」丁寧な支援を実現し、地域資源を繋ぎ合わせることで、デジタルとアナログが融合したハイブリッドな支援体制を構築します。
- そして、これらの先進的な取り組みを安定的に継続・発展させていくために、「支援策③:企業版ふるさと納税・SIB等を活用した持続可能な資金調達モデルの導入」を進め、行政の一般財源だけに依存しない、多様で強靭な財政基盤を確立します。
各支援策の詳細
支援策①:地域子育てDXプラットフォームの構築と推進
目的
- 情報へのアクセシビリティ向上
- 行政(福祉・保健・教育など各部署)、NPO、子育て支援に取り組む企業等が発信する多種多様な子育て支援情報を一つのプラットフォームに集約します。保護者はスマートフォンアプリなどを通じて、自分や子どもの状況に合った必要な情報に、いつでもどこでも、簡単かつ確実に入手できる環境を整備します。
- 客観的根拠:
- 子育て支援アプリ「母子モ」は全国650以上の自治体で導入実績があり、自治体からのお知らせ配信機能や予防接種スケジューラー等が保護者の利便性向上に大きく貢献しています。
- (出典)(https://www.mti.co.jp/?page_id=22020) 30
- 客観的根拠:
- ソフトバンクグループが提供する「てくてく」も同様の機能を持ち、情報過多や誤った情報による育児不安を解消し、正しい情報を適切なタイミングで届けることを目指しています。
- (出典)(https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2022/20220512_02/) 31
- 官民連携の基盤構築
- 地域のNPOや企業が、自らの活動内容やイベント情報を簡単な操作で登録・発信できる機能を提供します。また、利用者からの問い合わせや申し込みを直接受けられる仕組みを設けることで、多様な主体が行政を介さずにダイレクトに地域住民と繋がれる、開かれたプラットフォームを構築します。
- 客観的根拠:
- アスコエパートナーズが提供する「子育てタウン」は、自治体職員だけでなく、地域の民間サークル団体なども情報発信できる機能を有しており、官民の情報連携を円滑にする有効なツールとなっています。
- (出典)株式会社アスコエパートナーズ「子育てタウン」 32
主な取組①:伴走型情報提供機能の実装
- 母子手帳アプリ「母子モ」などが既に実装している機能を参考に、利用者が登録した妊娠週数や子どもの月齢・年齢に応じて、その時期に必要となる情報をプッシュ通知で自動配信する「伴走型」の機能を中核に据えます。
- 具体的には、「〇週目に妊婦健診の案内」「〇歳〇か月に予防接種のお知らせ」「〇歳になったので、この助成金が申請可能です」「お住まいの近くで今週末、こんな親子イベントがあります」といったパーソナライズされた情報を提供します。
- これにより、保護者の「知らなかった」ことによる申請漏れや機会損失を防ぎ、特に社会的に孤立しがちな家庭へも行政側から能動的に情報を届けるアウトリーチを強化します。
- 客観的根拠:
- 山口県防府市では、「母子モ」を活用した妊娠後期面談のオンラインアンケート提出率が70~80%に達しています。これは、プッシュ通知によるリマインドとオンライン手続きの組み合わせが、多忙な保護者にとって非常に有効であることを示しています。
- (出典)(https://www.mchh.jp/boshimo-kosodatedx) 33
主な取組②:地域資源マップと施設予約機能の統合
- 区内に点在する子育て関連施設(認可・認証保育園、幼稚園、地域子育て支援拠点、おでかけひろば、児童館、公園、こども食堂、図書館、医療機関等)や、民間企業・NPOが提供するサービス拠点(授乳・おむつ替えスペース、イベント会場等)を、網羅的に地図上にマッピングします。
- 利用者はGPS機能を活用し、現在地周辺の施設をカテゴリ別に簡単に検索できるようにします。
- さらに、一時預かりや子育てひろばのイベント、各種相談会などについて、施設の空き状況をリアルタイムで表示し、アプリ上から直接予約・キャンセルができる機能を導入します。
- 客観的根拠:
- 「子育てタウン」は、GPSを活用した施設マップ機能や、一時預かり施設の空き状況を可視化する機能を提供しており、保護者の利便性向上と施設の利用促進に繋がっています。
- (出典)株式会社アスコエパートナーズ「子育てタウン」 32
- 市民参加とテクノロジー活用を推進するCode for Japanが開発した「ikunowa」は、自治体が公開するオープンデータを活用して施設情報を提供しており、行政のDX推進と住民サービス向上を両立するモデルケースです。
- (出典)Code for Japan「ikunowa」 34
主な取組③:NPO・企業向けの情報発信・連携機能
- 地域のNPOや子育て支援に積極的な企業向けに、専用の管理画面を提供します。これにより、行政の承認を待つことなく、自らのタイミングでイベント情報や活動報告、ボランティア募集などを自由に登録・発信できるようにします。
- 民間団体がブログ形式で活動の様子を写真付きで紹介したり、参加者の声を発信したりできる「子育てサークル紹介」のようなコーナーを設け、活動の魅力を見える化し、新たな参加者や担い手の獲得を支援します。
- 客観的根拠:
- 「子育てタウン」では、自治体だけでなく民間のサークル団体が主体的に情報発信できる機能が実装されており、これが官民の情報連携を促進し、地域の支援活動の活性化に貢献しています。
- (出典)株式会社アスコエパートナーズ「子育てタウン」 32
主な取組④:オンライン相談・ピアサポート機能
- アプリ内に、保護者が匿名で育児の悩みや疑問を投稿し、他の保護者からアドバイスや共感を得られるオンライン掲示板を設置します。これにより、時間や場所を問わず、気軽に悩みを吐き出し、支え合えるピアサポートのコミュニティを醸成します。
- 投稿内容をモニタリングし、専門的な回答が必要な場合や、支援が必要と思われるケースについては、保健師や子育てコーディネーター等の専門職が介入・回答できる仕組みを構築し、オンライン上の相談を現実の支援に繋げます。
- 客観的根拠:
- 月間130万件以上の投稿があるQ&Aアプリ「ママリ」は、保護者同士の支え合いがサービスの大きな価値となっています。横浜市は、このプラットフォームの有効性に着目し、運営企業と連携して市内中小企業の従業員家族への伴走支援に活用しています。
- (出典)コネヒト株式会社「横浜市との連携協定締結について」2021年 35
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 区の子育て支援サービス全体に対する保護者の満足度:85%以上
- データ取得方法: 区が実施する住民意識調査またはアプリ利用者アンケート(年1回)
- 「子育て中に孤立を感じる」と回答する保護者の割合:15%以下(港区の現状約30%から半減)
- データ取得方法: 区が実施する住民意識調査(子育て世帯対象、年1回)
- 区の子育て支援サービス全体に対する保護者の満足度:85%以上
- KSI(成功要因指標)
- 子育てDXプラットフォーム(アプリ)のアクティブユーザー率:区内の未就学児を持つ世帯の80%以上
- データ取得方法: アプリ管理システムのログデータ分析
- プラットフォームに活動情報を登録しているNPO・企業・地域団体数:100団体以上
- データ取得方法: プラットフォーム上の登録団体データベースの集計
- 子育てDXプラットフォーム(アプリ)のアクティブユーザー率:区内の未就学児を持つ世帯の80%以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- プッシュ通知をきっかけとした行政手続き(各種申請、イベント申込等)の完了率:通知配信数に対し30%以上
- データ取得方法: 電子申請システムおよびアプリのアクセスログ解析
- アプリ経由での一時預かり等、地域子育て支援事業の予約・利用件数:前年度比30%増
- データ取得方法: 各事業の利用実績データおよび予約システムのログデータ
- プッシュ通知をきっかけとした行政手続き(各種申請、イベント申込等)の完了率:通知配信数に対し30%以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- プラットフォームを通じて発信された情報件数(行政・民間合計):月間200件以上
- データ取得方法: プラットフォームのコンテンツ管理システムによる投稿データ集計
- オンライン予約機能に対応する区内子育て関連施設数:50施設以上
- データ取得方法: プラットフォーム上の登録施設データベースの集計
- プラットフォームを通じて発信された情報件数(行政・民間合計):月間200件以上
支援策②:「地域子育てコーディネーター」を核とした協働ネットワークの強化
目的
- 顔の見える相談支援体制の構築
- デジタルツールだけでは拾いきれない複雑な悩みや、自らSOSを発することが難しい家庭に対して、専門的な知識と地域情報に精通したコーディネーターが「顔の見える関係」を築きながら寄り添います。信頼関係を基盤に、一人ひとりの状況に合わせた最適な支援へと丁寧につなぐ役割を担います。
- 客観的根拠:
- 港区の「子育てコーディネーター事業」は、NPOと行政が協働で専門の相談員を育成・配置する先進的なモデルです。利用者の個別ニーズに寄り添った柔軟な対応を強みとしており、制度の狭間を埋める重要な役割を果たしています。
- (出典)NPO法人あい・ぽーとステーション「港区子育てコーディネーター事業」 36
- 地域資源のネットワーキング
- 地域に点在する行政サービス、NPOの活動、企業の社会貢献、学校、医療機関、民生委員といった多様な支援資源を、コーディネーターがハブとなって有機的に繋ぎ合わせます。これにより、単体の支援の総和を超えた、地域全体で家庭を包括的に支える重層的な支援ネットワークを構築します。
- 客観的根拠:
- こども家庭庁は、地域全体でこどもの居場所づくりに取り組む体制を構築するための中核人材として「こどもの居場所づくりコーディネーター」の配置を全国的に支援しており、その重要性は国レベルで認識されています。
- (出典)こども家庭庁「令和7年版こども白書(本文)」令和6年度 13
主な取組①:コーディネーターの配置と役割の明確化
- 区内各地区に設置されている子ども家庭支援センターや、利用者の多い地域子育て支援拠点(おでかけひろば等)に、「地域子育てコーディネーター」を専任で配置します。
- その役割を、①保護者からの個別相談に応じ、適切な支援計画を作成する「伴走支援機能」、②地域の支援サービスや活動団体を常に把握・開拓し、情報を整理する「リソース把握機能」、③支援を必要とする家庭と提供者を繋ぐ「マッチング機能」、④多様な主体が連携した新たな支援プロジェクトを企画・運営する「協働促進機能」の4つに明確に定義します。
- 客観的根拠:
- フィンランドの「ネウボラ」をモデルにした大阪府大東市の取り組みや、横浜市の「母子保健コーディネーター」は、専門職が妊娠期から就学期まで切れ目なく一貫して支援する体制を構築しています。これらの事例は、コーディネーターの高い専門性と役割の明確化が事業成功の鍵であることを示しています。
- (出典)ジチタイワークス「【子育て支援の事例】全国の自治体による10の取り組みを紹介」 37
主な取組②:NPO等へのコーディネート業務委託
- コーディネーターの採用、専門研修の実施、日々の活動管理といった運営業務全体を、地域の子育て事情に精通し、高い専門性とネットワークを持つ実績ある子育て支援NPO等に委託します。
- これにより、行政の直接雇用では難しい、多様なバックグラウンド(元保育士、ソーシャルワーカー、企業経験者など)を持つ人材の確保や、固定観念にとらわれない利用者視点の柔軟な事業運営を可能にします。
- 客観的根拠:
- 港区は、NPO法人あい・ぽーとステーションと協働でコーディネーターの育成・認定から配置までを行っており、行政とNPOのパートナーシップが有効に機能するモデルを確立しています。
- (出典)NPO法人あい・ぽーとステーション「港区子育てコーディネーター事業」 36
- 全国で展開されている「ホームスタート」事業は、各地の子育て支援NPOが地域の運営主体となり、研修を受けたボランティアによる家庭訪問支援を実施しています。これは、支援の担い手育成と運営をNPOが担うスキームが全国規模で確立されていることを示しています。
- (出典)ホームスタート・ジャパン「ホームスタートの仕組み」 38
主な取組③:官民連携による「地域子育て支援協議会(仮称)」の設置
- 地域子育てコーディネーターが事務局機能を担い、行政(子ども・保健・教育等の各担当課)、地域のNPO・ボランティア団体、子育て支援に積極的な企業、学校・PTA、医療機関、民生委員・児童委員、そして子育て当事者である保護者等が定期的に参画する「(仮称)地域子育て支援協議会」を各地区に設置・運営します。
- この協議会を、地域の課題やニーズを共有し、情報交換を行い、新たな連携事業を企画・立案するための公式なプラットフォームとして位置づけ、実効性のある協働を推進します。
- 客観的根拠:
- 世田谷区では、市民活動から始まった「せたがや区民版子ども子育て会議」が10年以上にわたり、区民、支援団体、行政、企業等が対等な立場で地域の課題解決に向けた連携を話し合う場として機能しており、ボトムアップ型の協議会モデルの成功例です。
- (出典)特定非営利活動法人せたがや子育てネット「プレスリリース」2025年 39
主な取組④:企業との連携プログラム開発
- 地域子育てコーディネーターが、企業のCSR担当者や経営層と積極的に対話し、企業の持つ強み(専門的な人材、技術、ノウハウ、施設、資金等)を地域の子育て支援に活かすための具体的な連携プログラムを共同で企画・実施します。
- 例えば、IT企業社員による小学生向けプログラミング教室、食品メーカーによる食育セミナー、不動産会社の所有する空きスペースを活用した親子ひろばの開設、地域の商店街と連携した子育て応援セールの開催などを推進します。
- 客観的根拠:
- 渋谷区は食品メーカーの江崎グリコと連携協定を締結し、同社が開発した夫婦間コミュニケーションアプリの活用や、父親向けの育児ワークショップを共催するなど、企業の製品・ノウハウを直接的に支援策に組み込んでいます。
- (出典)(https://www.advertimes.com/20190604/article292416/) 40
- 杉並区では、子育て支援に積極的に取り組む企業を「すぎなみ子育て優良事業者」として表彰する制度を設けており、企業の地域貢献活動を促進するインセンティブとして機能しています。
- (出典)杉並区「すぎなみ子育て優良事業者表彰」 41
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 支援が必要な家庭(要支援児童対策地域協議会の対象等)への早期アウトリーチ成功率:90%以上
- データ取得方法: 子ども家庭支援センターのケース記録およびコーディネーターの活動報告の分析
- 支援介入後の保護者の育児不安の軽減度(エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)スコア等で測定):介入前後で平均20%改善
- データ取得方法: 支援対象者への定量的調査(介入前後の比較分析)
- 支援が必要な家庭(要支援児童対策地域協議会の対象等)への早期アウトリーチ成功率:90%以上
- KSI(成功要因指標)
- コーディネーター1人当たりが構築した連携機関数(NPO、企業、学校、医療機関等):年間30機関以上
- データ取得方法: コーディネーターの活動日報および連携先管理データベース
- 官民協働によって新たに創出された子育て支援プログラム・イベント数:年間10件以上
- データ取得方法: 地域子育て支援協議会の議事録および事業実施報告書
- コーディネーター1人当たりが構築した連携機関数(NPO、企業、学校、医療機関等):年間30機関以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- コーディネーターを介して専門機関や他の支援サービスへ繋がった(リファーラル)件数:年間200件以上
- データ取得方法: コーディネーターの相談記録の集計・分析
- 連携したNPO・企業等の事業満足度:「満足」「大変満足」の合計が90%以上
- データ取得方法: 連携先団体を対象とした年1回のアンケート調査
- コーディネーターを介して専門機関や他の支援サービスへ繋がった(リファーラル)件数:年間200件以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 地域子育てコーディネーターの配置人数:各子ども家庭支援センターに常勤2名以上
- データ取得方法: 人事課の配置データおよびNPO等への委託契約書
- 地域子育て支援協議会の開催回数:各地区で四半期に1回以上
- データ取得方法: 協議会の開催記録および議事録
- 地域子育てコーディネーターの配置人数:各子ども家庭支援センターに常勤2名以上
支援策③:企業版ふるさと納税・SIB等を活用した持続可能な資金調達モデルの導入
目的
- 安定的・継続的な財源の確保
- 毎年の予算編成に左右されやすい行政の一般財源だけに依存するのではなく、民間からの資金を戦略的に活用する仕組みを構築します。これにより、革新的・先進的な子育て支援事業を安定的かつ継続的に実施するための、多様で強靭な財政基盤を確保します。
- 成果志向の事業推進
- 特にソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を導入することで、事業の「成果(社会的インパクト)」に対して行政が対価を支払う仕組みを構築します。これにより、事業者はより高い成果を目指すインセンティブが働き、行政は税金をより効果の高い事業へ重点的に投資することが可能となり、事業全体の質の向上と行政コストの効率化を図ります。
- 客観的根拠:
- SIBは、行政が直接支出しにくい「予防」や「早期介入」といった分野のプログラムに対して民間の先行投資を促し、将来発生するであろう深刻な社会問題への対応コスト(例:児童相談所の介入費用、生活保護費など)を削減することを目的とした、官民連携の革新的な投資スキームです。
- (出典)(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/22482/793255.pdf) 43
主な取組①:「子育て支援特化型」企業版ふるさと納税メニューの創設
- 国の「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」制度を最大限に活用し、寄付金の使途を子育て支援分野に明確に特化した複数のプロジェクトメニューを創設します。
- 例えば、「①こどもの未来を拓く居場所づくりプロジェクト(こども食堂・学習支援)」「②ひとり親家庭トータルサポートプロジェクト(食料支援・就労支援)」「③地域子育てDXプラットフォーム運営プロジェクト」など、企業のCSR方針や関心と合致しやすい、具体的で共感を呼ぶプロジェクトを提示し、企業の寄付を効果的に呼び込みます。
- 客観的根拠:
- 企業版ふるさと納税のマッチングサイト「ふるさとコネクト」等では、全国の多くの自治体が「子育て支援」をテーマにしたプロジェクトを立ち上げ、資金調達に成功しています。新潟県見附市の「園児の環境づくり応援プロジェクト」や北海道士幌町の「認定こども園・発達相談センター建替プロジェクト」などがその好例です。
- (出典)株式会社トラストバンク「ふるさとコネクト」プロジェクト一覧 44
- 兵庫県たつの市では、企業版ふるさと納税で得た寄付金を、乳児のいる家庭におむつ等のベビー用品を宅配する「はつらつベビーまごころ便」事業の財源として活用しています。
- (出典)たつの市「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」 46
主な取組②:ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の導入検討
- 「産後うつの発症予防」「児童虐待の発生予防」「不登校児童の学校復帰支援」など、①成果を客観的な指標で測定しやすく、②介入しない場合に将来大きな行政コストが発生し、③有効な予防・早期介入プログラムが存在する、という3つの条件を満たす分野を対象に、SIBの導入を具体的に検討します。
- まずは、対象者や事業規模を限定した小規模なパイロット事業から着手し、成果指標の適切な設定方法、中間支援組織や資金提供者との連携、第三者評価機関による評価といった一連のスキーム構築のノウハウを蓄積します。
- 客観的根拠:
- 横浜市は、SIBを活用して民間企業(株式会社Kids Public)による妊産婦への遠隔健康医療相談サービスを実施しました。その結果、サービス利用者の育児不安が95.6%で減少し、産後うつのハイリスク者が11.9%から3.6%にまで減少するなど、客観的な指標で明確な成果を上げています。これは、子育て支援分野におけるSIBの有効性を国内で証明した画期的な事例です。
- (出典)(https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei/yokohamakekka.pdf) 47
- 神奈川県横須賀市では、社会的養護が必要なこどもたちのための特別養子縁組の推進にSIBが活用されており、子育て支援分野でのSIB導入は、もはや特別なものではなく現実的な政策選択肢となっています。
- (出典)株式会社日本総合研究所「研究レポート『日本におけるソーシャル・インパクト・ボンドの現状と課題』」2015年 48
主な取組③:官民連携プロジェクト専門の助成金・ファンドの検討
- 区独自の財源により、複数のNPOや企業が連携して取り組む革新的な子育て支援プロジェクトに対して、立ち上げ資金(シードマネー)や運営費の一部を助成する制度を創設します。
- 将来的には、地域の金融機関や企業、財団等に働きかけ、共同で「(仮称)東京ベイエリア子育て支援ファンド」のような官民共同の基金を設立することも視野に入れ、持続的な資金供給の仕組みを検討します。
- 客観的根拠:
- SIB発祥の地である英国では、政府資金だけでなく、長期間取引のない休眠預金口座の資金を活用した「ビッグ・ソサエティ・キャピタル」という基金が設立され、社会的投資の重要な原資となっています。これは、行政の一般財源以外の多様な資金源を確保するファンド組成が有効であることを示唆しています。
- (出典)(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/22482/793255.pdf) 43
主な取組④:企業向けガイドラインの策定とインセンティブ付与
- 企業が地域の子育て支援に参画しやすくなるよう、企業版ふるさと納税の具体的な活用方法や税制上のメリット、SIBへの関わり方、人材派遣やプロボノによる協力事例などを分かりやすくまとめた「(仮称)子育て支援・官民連携ガイドブック」を作成し、区内企業に広く配布・公表します。
- 厚生労働省の「くるみん認定」を参考に、区独自で「(仮称)子育てサポート企業認証制度」を創設します。資金提供だけでなく、従業員の育児支援や地域貢献活動に積極的に取り組む企業を認証・表彰し、区の広報媒体やウェブサイトで公表することで、企業の社会的評価を高め、参画へのインセンティブを付与します。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省による「くるみん認定」は、企業が「子育てサポート企業」であることを対外的にアピールする有効な手段となっており、企業イメージの向上や優秀な人材の確保に繋がっています。自治体独自の認証制度も、地域に根差した企業にとっては同様の効果が期待できます。
- (出典)株式会社パソナフォスター「メディア『くるみん認定とは?』」 49
- (出典)株式会社リロクラブ「福利厚生タイムズ」 50
- 内閣府が定める企業版ふるさと納税のガイドラインでは、寄付の代償として直接的な経済的利益を供与することは禁止されていますが、企業の社会貢献活動としての広報効果や、地域との関係性構築といった間接的なメリットは認められており、これを積極的にアピールすることが重要です。
- (出典)内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」 51
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 区の子育て支援関連予算全体に占める民間資金(企業版ふるさと納税、SIB、その他寄付等)の割合:10%以上
- データ取得方法: 財政課の予算・決算データおよび寄付金受入記録の分析
- SIB導入事業によって削減された将来的な社会的コストの試算額:年間5,000万円以上
- データ取得方法: SIB事業の第三者評価機関による効果測定およびコスト削減効果の試算報告書
- 区の子育て支援関連予算全体に占める民間資金(企業版ふるさと納税、SIB、その他寄付等)の割合:10%以上
- KSI(成功要因指標)
- 企業版ふるさと納税による年間寄付受入額:年間1億円以上
- データ取得方法: 企画課・財政課等における寄付金受入記録の集計
- SIB事業の組成件数:計画期間内(5年間)に2件以上
- データ取得方法: 事業委託契約書の締結状況の確認
- 企業版ふるさと納税による年間寄付受入額:年間1億円以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 企業版ふるさと納税を活用して実施された新規事業の年間延べ受益者数:年間1,000人以上
- データ取得方法: 各事業実施団体からの事業報告書の集計
- SIB導入事業における主要成果指標(例:産後うつハイリスク者減少率、再犯率低下率など)の目標達成率:100%
- データ取得方法: SIB事業の第三者評価報告書
- 企業版ふるさと納税を活用して実施された新規事業の年間延べ受益者数:年間1,000人以上
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 企業向けの子育て支援連携に関する説明会の開催回数:年4回以上(オンライン含む)
- データ取得方法: イベントの開催記録および参加者リスト
- 「子育てサポート企業」の認証数:年間20社以上
- データ取得方法: 認証制度の申請・認定記録の管理
- 企業向けの子育て支援連携に関する説明会の開催回数:年4回以上(オンライン含む)
先進事例
東京都特別区の先進事例
- 渋谷区「官民連携による多様な子育てニーズへの対応(Co育てプロジェクト等)」
- 渋谷区は、多様な民間主体との連携を積極的に推進し、行政だけでは手の届きにくい、きめ細かな子育てニーズに応えています。象徴的な取り組みが、大手食品メーカーの江崎グリコと締結した連携協定「Co育てプロジェクト」です。このプロジェクトでは、同社が開発した夫婦間のコミュニケーションを促すスマートフォンアプリの活用や、父親向けの育児ワークショップの開催など、企業の持つ製品やノウハウを直接的に区の子育て支援策に組み込んでいます。
- また、保育現場の負担軽減を目指し、民間企業が提供する紙おむつのサブスクリプションサービス(手ぶら登園)の実証実験を区内全公立保育園で実施したり、NPO法人が運営主体となる「こどもテーブル(こども食堂)」の活動を支援し、地域の子どもの居場所づくりを後押ししたりと、連携の形は多岐にわたります。
- 成功要因は、企業の具体的な製品・サービスやNPOの活動内容と、行政が支援したい対象者を的確に結びつける企画力、そして多様な民間団体の活動を積極的に発掘・支援し、それらをネットワーク化していく姿勢にあります。こうした取り組みが評価され、区民の区への定住意向は非常に高く、令和3年度の調査では「ずっと住み続けたい」と回答した区民が50.3%にのぼります。
- 客観的根拠:
- (出典)(https://www.advertimes.com/20190604/article292416/) 40
- (出典)渋谷区「渋谷スマートシティ基本方針」 52
- (出典)渋谷区「令和3年度渋谷区区民意識調査報告書」 53
- 江戸川区「行政主導による包括的・革新的支援(えどがわ50の子育てプラン)」
- 江戸川区は、長年にわたり「江戸川方式」と呼ばれる独自の革新的な子育て支援策を展開してきたことで知られています。近年では、その集大成として「えどがわ50の子育てプラン」を策定し、出会い・結婚から妊娠・出産、乳幼児期、就学期に至るまで、ライフステージに応じた50もの施策を包括的なパッケージとして展開しています。
- 特に注目すべきは、民間サービスを積極的に活用し、利用者の経済的負担を大胆に軽減する施策です。例えば、家事・育児支援ヘルパーを派遣する「えどがわママパパ応援隊」は1時間500円という低廉な価格で利用でき、0歳児家庭は14時間まで無料です。また、「ベビーシッター利用支援事業」では、未就学児を対象に年間16時間までの利用料が全額補助されます。
- さらに、国の制度を超える全国初の取り組みとして、企業と連携し、子どもが3歳の年度末まで育児休業を取得できるよう支援する制度も創設しています。
- 成功要因は、全国に先駆けて導入した「保育ママ制度」や、全小学校に学童クラブを設置する「すくすくスクール」など、長年培ってきた革新的な施策の土壌と、区民ニーズを的確に捉え、官民のサービスを巧みに組み合わせて大胆な支援策を打ち出す行政の強いリーダーシップにあります。
- 客観的根拠:
- (出典)itot「子育て支援が充実!江戸川区の暮らしやすさのヒミツ」 54
- (出典)齊藤猛 江戸川区議会議員「えどがわ50の子育てプラン」 55
- (出典)(https://www.youtube.com/watch?v=YQ8meuE_1x8) 56
- 港区「NPOとの協働による利用者支援事業(子育てコーディネーター事業)」
- 港区は、子育て支援における「顔の見える相談体制」の構築において、NPOとの優れた協働モデルを確立しています。2015年度から、地域で実績のあるNPO法人「あい・ぽーとステーション」と協働し、「子育てコーディネーター事業」を実施しています。
- この事業の核心は、行政とNPOが共同で専門の相談員(子育てコーディネーター)を育成・認定し、区の施設である子育てひろば「あい・ぽーと」や子ども家庭支援センターに配置している点です。コーディネーターは、保護者からの個別の相談対応に留まらず、一人ひとりのニーズに応じた「子育てプラン」の作成や、適切な専門機関・行政サービスへの橋渡しまで、伴走型のきめ細かな支援を提供します。
- 成功要因は、行政が持つ公的な信頼性や情報網と、NPOが持つ現場に根差した専門性や柔軟性を効果的に組み合わせた協働スキームにあります。行政が直接行うよりも機動的で、利用者一人ひとりの複雑な状況に寄り添った支援が可能となり、制度の狭間に落ち込みがちな家庭を支えるセーフティネットとして重要な役割を果たしています。こうした手厚い支援策が奏功し、区の年少人口は増加を続け、平成31年4月には待機児童ゼロを達成しました。
- 客観的根拠:
- (出典)NPO法人あい・ぽーとステーション「港区子育てコーディネーター事業」 36
- (出典)港区「港区子ども・子育て支援事業計画」令和2年度 57
全国自治体の先進事例
- 横浜市「SIB導入による成果連動型支援と企業連携」
- 横浜市は、全国の自治体に先駆けて、子育て支援分野にSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)という革新的な官民連携手法を導入しました。この事業では、民間企業(株式会社Kids Public)が提供する妊産婦への遠隔健康医療相談サービスを対象とし、「育児不安の減少率」や「産後うつハイリスク者の減少率」などを客観的な成果指標として設定。事業終了後、その達成度に応じて市が委託料を支払うという「成果連動型」の契約を結びました。
- 最終評価では、産後うつハイリスク者が介入によって8.3ポイント(11.9%→3.6%)減少するなど、極めて高い成果が確認され、民間の資金とノウハウを活用して社会的課題を効果的に解決できることを国内で初めて実証しました。
- また、子育てQ&Aアプリ「ママリ」を運営するコネヒト株式会社と連携協定を結び、市内中小企業における男性の育児休業取得推進や、従業員家族への伴走支援に取り組むなど、SIB以外にも多様な企業連携を積極的に推進しています。
- 成功要因は、将来的な行政コストの削減と住民サービスの質向上を両立させるという明確な目標設定、客観的なデータに基づく厳格な事業評価、そして先進的な取り組みに果敢に挑戦する民間企業との強固なパートナーシップにあります。
- 客観的根拠:
- (出典)(https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei/yokohamakekka.pdf) 47
- (出典)コネヒト株式会社「横浜市との連携協定締結について」2021年 35
- 福岡市「多様な主体との連携による『こども食堂』支援スキーム」
- 福岡市は、近年全国的に広がる「こども食堂」の支援において、行政が前面に出るのではなく、社会福祉協議会をハブとした巧みな官民連携スキームを構築し、持続可能な活動を支えています。
- 中心的な取り組みである「企業×子ども ふくふくお届け便」では、市社会福祉協議会が調整役となり、支援を希望する企業から寄付された食材や物品を、市内に点在するこども食堂へ効率的に分配するマッチングを行っています。
- さらに、JA福岡市や福岡市中央卸売市場と連携し、販売期間を過ぎた野菜や規格外の青果を無償で提供する仕組みや、飲食店支援サービス「ごちめし」のプラットフォームを活用し、地域の飲食店や商店街全体が「こども食堂」の役割を担うプロジェクトを後押しするなど、多様な民間資源を重層的に巻き込んでいます。
- 成功要因は、行政が直接全ての事業を担うのではなく、地域ネットワークの中核である社会福祉協議会を中間支援組織として効果的に活用し、企業、農協、商店街、NPOなど、それぞれの主体が持つ強みを最大限に引き出す「プラットフォーム型」の支援体制を構築した点にあります。
- 客観的根拠:
- (出典)福岡市「子ども食堂応援サイト」 58
- (出典)株式会社G-Place「プレスリリース」2020年 59
- (出典)福岡市社会福祉協議会「こども食堂等への食材提供支援事業について」 60
参考資料[エビデンス検索用]
- 政府・こども家庭庁
- こども家庭庁「令和7年版こども白書」令和6年度
- 内閣府「令和6年版 少子化社会対策白書」令和6年
- 内閣官房「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」令和4年度
- 内閣府 地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税ポータルサイト」関連資料 1
- (https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei/yokohamakekka.pdf)
- 東京都・特別区
- その他自治体・研究機関
- (https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei/yokohamakekka.pdf)
- 福岡市「こども食堂」支援関連資料
- PIAZZA株式会社「孤育て経験に関する調査」令和6年度
- 総務省統計局「労働力調査」
- 子育て支援政策の歴史・経緯
まとめ
少子化と共働き世帯の増加、そして地域社会の変容という大きな潮流の中、東京都特別区の子育て支援は、行政単独の取り組みから、企業やNPOといった多様な主体との「協働」を軸とする新たなステージへと移行すべき岐路に立っています。本稿で示したように、課題は保護者の孤立、多様化するニーズ、行政の縦割り構造など多岐にわたりますが、その解決策は官民連携の中にこそ見出せます。デジタルプラットフォームによる情報格差の解消、コーディネーターによる人的ネットワークの構築、そして持続可能な資金調達モデルの導入という三位一体の改革を通じて、全てのこどもと家庭が安心して暮らせる、質の高い支援エコシステムを構築することが急務です。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。