15 教育

プール利活用・プールシェア

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(プール利活用・プールシェアを取り巻く環境)

  • 自治体がプール利活用・プールシェアを行う意義は「教育の質の維持・向上と機会の均等化」及び「持続可能な学校施設管理と教員の働き方改革の実現」にあります。
  • 全国の小学校・中学校に整備されてきた学校プールは、かつてはこどもたちの体力向上と水難事故防止を担う重要な教育施設でした。しかし、その多くが建設から数十年を経て一斉に老朽化し、施設の維持・更新にかかる莫大な財政負担、猛暑など気候変動による利用制限、そして教員の過大な業務負担という、三つの大きな課題に直面しています。
  • このような状況を受け、従来の一校一プールという考え方から、近隣校との「共同利用(プールシェア)」や、民間スイミングクラブ等の専門施設を活用する「外部委託」へと舵を切る動きが全国的に加速しています。これは単なるコスト削減策ではなく、教育の質を確保し、持続可能な行政サービスと教員の働き方改革を同時に実現するための、必然的な政策転換と言えます。

意義

こどもにとっての意義

教育の質の向上と泳力向上
安定的・継続的な学習機会の確保
  • 屋内温水プールを活用することで、猛暑や悪天候による授業の中止がなくなり、年間を通じて計画的な水泳授業が実施できます。
  • これにより、学習指導要領に定められた授業時数を確実に確保し、体系的な学習を保障できます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都豊島区では令和6年度、屋外プールの小学校水泳授業の17%が高温や雨天により中止となりましたが、屋根付きプールの学校では中止が0%でした。
      • 東京都教育委員会の調査によると、民間プールを活用している学校の年間平均授業時間数は15.3時間であるのに対し、老朽化した自校プールのみを利用する学校では9.5時間と、約1.6倍の差が生じています。
        • (出典)東京都教育委員会「水泳授業実施状況調査」令和5年度
安全で快適な学習環境

保護者にとっての意義

安心感の向上
  • プロの指導と安全管理体制が整った環境でこどもが学べるため、保護者の安心感が高まります。
  • 天候に左右されず、予定通りに授業が行われるため、家庭でのスケジュール調整もしやすくなります。
懸念事項の軽減

学校・教師にとっての意義

業務負担の大幅な軽減
本来業務への注力
事故や賠償リスクの低減

地域社会にとっての意義

地域資源の有効活用と新たな価値創出
地域経済への貢献
  • 民間スイミングクラブ等を活用することで、地域の事業者に新たな収益機会を提供し、地域経済の活性化に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 福岡県太宰府市の市長は、昼間の空いている時間を活用してもらうことで「施設側にとっても経済効果が大きいのではないか」と述べています。
        • (出典)(https://rkb.jp/contents/202309/202309217993/)

行政にとっての意義

財政負担の大幅な軽減
戦略的な公共施設マネジメントの推進

(参考)歴史・経過

1960年代(昭和40年代前半)
  • 1964年の東京オリンピックを契機に、国民的な水泳への関心が高まります。
1968年(昭和43年)
  • 学習指導要領の改訂により、小学校体育で「水泳」が正式に内容として盛り込まれました。これを機に、全国で学校プールの建設ラッシュが始まります。
    • (出典)(https://ibu-doi.org/SportsClub/SchoolSwimming.html)
1970年代~1980年代(昭和40年代後半~昭和60年代)
2000年代~2010年代(平成12年~令和元年)
  • 建設から30~50年が経過し、多くのプールで老朽化が深刻な問題となります。改修や建て替えの財政負担が、自治体にとって大きな課題として顕在化し始めました。
  • 同時に、地球温暖化に伴う猛暑日の増加やゲリラ豪雨の頻発により、屋外プールでの授業中止が相次ぐようになります。
2020年代(令和2年以降)
  • 教員の長時間労働が社会問題化し、「働き方改革」が強力に推進される中で、プール管理の負担がクローズアップされます。
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大により、一時的に水泳授業が全面的に中止されたことも、プールのあり方を見直す一つの契機となりました。
2024年(令和6年)7月

プール利活用・プールシェアに関する現状データ

施設の老朽化
学校プール数の減少
外部施設利用への移行
気候変動による授業中止の実態
  • 近年の猛暑は、屋外プールの授業実施に深刻な影響を与えています。
  • 東京都豊島区では、令和6年度の小学校水泳授業において、予定されていた授業の17%が高温や雨天を理由に中止となりました。一方で、屋根付きプールを持つ学校では中止は発生しておらず、施設形態による格差が明確になっています。
コストの比較
  • 学校プールの維持・更新には莫大な費用がかかります。
  • 目黒区の試算によると、屋外プール1校あたりの年間維持管理費は約180万円、大規模改修には約5,000万円、建て替えには約2億円が必要です。
  • 一方、民間委託(バス送迎費込み)の年間費用は約750万円と試算されています。年間の支出は委託の方が高くなりますが、60年間のライフサイクルコストで比較すると、自校設置(約3.88億円)よりも民間委託(約3.69億円)の方が安価になるという結果が出ています。
教育格差の実態
  • プールの施設形態が、こどもたちの学習機会に直接的な格差を生んでいます。
  • 東京都教育委員会の調査では、民間プールを活用する学校の年間平均授業時間数が15.3時間であるのに対し、老朽化した自校プールのみを利用する学校は9.5時間にとどまり、約1.6倍の差が生じています。この差が泳力目標の達成率にも影響を与えている可能性が指摘されています。
    • (出典)東京都教育委員会「水泳授業実施状況調査」令和5年度

課題

こどもの課題

学習機会の不均等
  • どの学校に通うかによって、こどもが受けられる水泳授業の質と量に大きな差が生まれています。老朽化で使用できない、あるいは猛暑で中止が頻発する学校のこどもは、適切な指導を受ける機会を失っています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の調査では、民間プールを活用している学校の年間平均授業時間数は15.3時間であるのに対し、老朽化した自校プールのみを利用する学校では9.5時間と、約1.6倍もの差があります。この差は泳力目標の達成率にも直結しており、前者が78.3%であるのに対し、後者は62.7%にとどまっています。
        • (出典)東京都教育委員会「水泳授業実施状況調査」令和5年度
      • 豊島区では令和6年度、屋外プールの授業の17%が中止されましたが、屋根付きプールの中止は0%でした。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 居住する地域によってこどもの泳力や水難事故への対応能力に格差が生じ、教育の機会均等が著しく損なわれます。
心理的・身体的負担

保護者の課題

新たな負担の発生(移動・費用)

学校・教師の課題

過大な業務負担と専門性の課題
計画的な授業実施の困難性
  • 屋外プールは天候に大きく左右されるため、年間指導計画通りに授業を進めることが困難です。近年の猛暑やゲリラ豪雨の増加により、授業中止は常態化しており、学習指導要領で定められた内容を十分に指導できないケースが発生しています。
    • 客観的根拠:
      • 近年、熱中症予防の観点から、暑さ指数(WBGT)が31℃以上の場合、プール授業は原則中止と指導されており、特に7月、8月は授業を実施できない日が増えています。
        • (出典)専有部管理組合支援センター「学校でのプール授業減少の背景とは? 施設維持費、熱中症、教員負担」2023年度
      • 豊島区のデータでは、令和6年度に小学校の屋外プール授業の17%が中止に追い込まれています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • こどもたちが本来達成すべき学習目標に到達できず、体系的な泳力向上が阻害され、水難事故防止能力の育成にも支障をきたします。

地域社会の課題

地域資源(コミュニティの場)の喪失
  • 学校プールは、授業だけでなく、夏休み期間中のこどもの遊び場や、地域住民のスポーツ活動の場として、重要なコミュニティ機能を果たしてきました。プールの廃止は、これらの機会を地域から奪うことにつながります。
防災機能の低下

行政の課題

財政負担の増大と施設の老朽化
  • 多くの自治体では、1970年代~80年代に集中して建設された学校プールが一斉に更新時期を迎えており、その莫大な改修・建て替え費用が財政を著しく圧迫しています。
新たな地域間格差の発生
  • 外部委託を検討しようにも、その選択肢は民間スイミングクラブ等の立地状況に大きく依存します。施設が近隣にない地域では、委託という選択肢自体が存在せず、結果として新たな地域間・学校間格差を生み出してしまいます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の調査によると、学校から半径1km以内に民間プールが存在する学校の割合は、特別区によって32.5%から87.3%までと大きな差があります。
        • (出典)東京都教育委員会「水泳授業の民間連携可能性調査」令和5年度
      • 委託先が見つからない地域では、老朽化した自校プールを危険を承知で使い続けるか、水泳授業自体を縮小・断念せざるを得ない状況に追い込まれます。
        • (出典)東京新聞「<Q&A>学校プールの授業、どうして減っているの? 老朽化や猛暑… 外部委託も課題」2024年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • プール利活用の選択肢が地域の地理的条件に左右され、行政サービスの公平性が損なわれ、新たな形の教育格差が固定化します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決(例:教育の質向上と教員負担軽減の両立)や、多くのこども・保護者への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みや地域資源を活用できる施策は、優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果(教育効果、コスト削減効果等)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、長期的なライフサイクルコストの削減効果も重視します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の地域・学校だけでなく、区内全体のこどもたちに公平に便益が及び、かつ長期的に継続可能な制度設計となっている施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 国や都の通知、他自治体の先進事例、調査データなど、効果が客観的根拠によって裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 学校プール問題への対応は、個別のプールの不具合に対応する場当たり的なものであってはなりません。多様な課題が複雑に絡み合っているため、「計画」「実行」「品質保証」の3つの階層からなる戦略的アプローチが不可欠です。
  • したがって、最優先で取り組むべきは、**支援策①「学校プール再編計画の策定と推進」**です。これは、区全体のプールの現状を可視化し、公平性と効率性に基づいた再編の「羅針盤」を作る、全ての取り組みの土台となるものです。この計画なくして、場当たり的な対応による新たな格差の発生は防げません。
  • 次に、この計画に基づいて具体的なアクションを起こすための**支援策②「多様な連携モデルの構築と実施支援」**を推進します。これは、民間委託や共同利用といった「実行手段」を、地域の実情に合わせて最適に組み合わせるための施策群です。
  • そして、これらの取り組み全体を支える基盤として、**支援策③「教育の質と安全を担保する体制整備」**を並行して進めます。これは、どのような手法を選択しても、こどもたちが受ける教育の質と安全が絶対に損なわれないようにするための「品質保証」の仕組みです。
  • この3つの支援策を一体的に推進することで、持続可能で質の高い水泳教育の実現を目指します。

各支援策の詳細

支援策①:学校プール再編計画の策定と推進

目的
  • 場当たり的な対応を避け、全区的な視点から公平で効率的なプール施設の再編を行うこと。
  • 客観的データに基づき、各学校・地域に最適な水泳授業の実施形態を決定するための、明確な方針とロードマップを策定すること。
主な取組①:全プール施設の現状評価とデータ化(プールカルテの作成)
  • 区内全ての学校プールについて、築年数、構造、老朽度評価、過去の修繕履歴、年間の維持管理コスト、光熱水費、授業での稼働率、近隣の代替施設(民間・公共)へのアクセス(距離・時間)などを調査し、一元的にデータ化します。
  • このデータを基に、各プールを「自校更新」「共同利用拠点」「廃止検討」などに分類するための客観的な評価基準を設定します。
主な取組②:地域ブロックごとの需給分析と再編方針策定
  • 区内を地理的条件や交通網に基づき複数のブロックに分け、各ブロック内の児童生徒数(水泳授業の需要)と、利用可能なプール(自校、他校、民間、公共)のキャパシティ(供給)を分析します。
  • この需給バランスに基づき、ブロックごとに「民間委託中心」「拠点校方式中心」「自校更新と外部活用を併用」といった、最適な再編方針を定めます。
主な取組③:合意形成プロセスの確立
  • 計画策定にあたり、保護者、学校関係者、地域住民を対象とした説明会やワークショップ、アンケート調査を複数回実施し、丁寧な合意形成を図ります。
  • 計画の策定プロセスと内容、評価データなどをウェブサイト等で積極的に公開し、透明性を確保します。
主な取組④:跡地利用と防災機能の代替計画策定
  • プールを廃止する学校については、その跡地を校庭の拡張、特別教室の増設、学童クラブの設置、地域開放スペースなど、学校と地域のニーズに基づいてどのように活用するかの計画を、再編計画と一体で策定します。
  • 同時に、消防水利や災害時生活用水としての機能を代替するため、校舎改築時に地下貯水槽を設置するなどの防災計画を、関係部署(危機管理部門、消防署)と連携して策定します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 30年間のプール関連ライフサイクルコストを30%削減する。
      • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期費用試算(Before/After比較)
    • 全ての児童生徒が、学習指導要領が示す水泳の目標を達成する。
      • データ取得方法: 各学校からの指導要録に基づく目標達成状況報告の集計
  • KSI(成功要因指標)
    • 学校プール再編計画の策定完了。
      • データ取得方法: 計画策定の進捗管理
    • 計画に基づく再編事業の着手率(対象校ベース)。
      • データ取得方法: 事業進捗管理表によるモニタリング
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • プール関連の年間維持管理費・修繕費の削減額。
      • データ取得方法: 決算統計における目的別・性質別経費の経年比較
    • 全小中学校における水泳授業の計画達成率(対計画実施時間数)98%以上。
      • データ取得方法: 各学校からの年間授業実施報告の集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全学校プールの「プールカルテ」作成数。
      • データ取得方法: 資産管理部門による作成状況の確認
    • 計画策定に関する住民説明会・意見交換会の開催回数。
      • データ取得方法: 議事録、開催記録による集計

支援策②:多様な連携モデルの構築と実施支援

目的
  • 民間事業者や地域施設との連携を円滑化し、安定的かつ質の高い水泳授業の実施場所を、全ての学校に公平に確保すること。
  • 連携に伴い発生する新たな課題(移動、安全、費用)に対し、行政が包括的な支援策を講じ、学校や保護者の負担を軽減すること。
主な取組①:包括的な民間委託協定の推進
主な取組②:移動支援システムの構築(共同バス運行・安全確保支援)
  • 外部施設を利用する学校を対象に、区がバス会社と一括で契約し、効率的な配車ルートを組む「共同送迎バス」システムを構築・運営します。これにより、コストを抑制し、各学校の契約手続きの負担をなくします。
  • 徒歩で移動する学校に対しては、安全なルートを示した「通学路安全マップ」の作成を支援するほか、地域の交通安全ボランティアやシルバー人材センターと連携した見守り体制の構築を支援します。
主な取組③:拠点校の高機能化と運営支援
  • 拠点校方式を採用する地域において、拠点校となる学校のプールを改修する際、屋内化、温水化、開閉式屋根の設置など、天候に左右されずに長期間利用できる「高機能化」改修を、補助金等で重点的に支援します。
  • 複数校での円滑な共同利用を促進するため、時間割の調整や学校間の連絡調整を担う「共同利用コーディネーター」を配置することも検討します。
主な取組④:地域開放機能の代替措置
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 全ての小中学校で、安定的・継続的な水泳授業実施環境を確保する。
      • データ取得方法: 各学校へのアンケート調査、水泳授業実施状況報告
    • プール利活用に関する児童・保護者の満足度85%以上。
      • データ取得方法: 定期的な満足度アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 民間事業者との包括的連携協定の締結数。
      • データ取得方法: 企画部門による協定締結状況の管理
    • 共同送迎バスシステムの利用率(対象校ベース)。
      • データ取得方法: バス運行事業者からの利用実績報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 外部施設利用に伴う保護者の経済的負担額の平均値。
      • データ取得方法: 保護者アンケート、委託費用データからの算出
    • 移動に起因する事故・ヒヤリハット事例の発生件数ゼロ。
      • データ取得方法: 学校からの事故報告、安全点検報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 行政(区)が確保した民間プール等の年間利用可能枠(コマ数)。
      • データ取得方法: 連携協定書、事業者からの報告
    • 共同送迎バスの運行便数及び利用者数。
      • データ取得方法: バス運行事業者からの実績報告
    • 拠点校への高機能化改修に対する補助件数・補助金額。
      • データ取得方法: 補助金交付実績の集計

支援策③:教育の質と安全を担保する体制整備

目的
  • 委託や共同利用といった多様な実施形態においても、学習指導要領に準拠した教育の質を全てのこどもに保証すること。
  • 教員と外部指導員の役割分担を明確化し、それぞれの専門性を活かした効果的なティーム・ティーチングを実現することで、こどもの学びを最大化すること。
主な取組①:標準指導カリキュラムと評価基準の策定
  • 教育委員会が主体となり、学習指導要領に基づき、区内全校で共通して使用できる「水泳指導標準カリキュラム」を作成します。
  • カリキュラムには、学年別の到達目標、指導内容の具体例、安全指導(着衣泳等)の実施方法などを明記します。
  • 同時に、外部指導員でも評価が可能な、観点別の統一評価基準(ルーブリック等)を開発し、教員が最終的な成績評価を行う際の客観的な根拠とします。
主な取組②:教員と外部指導員の連携研修・情報共有の義務化
  • 水泳指導を開始する前に、担当教員と委託先のインストラクターが参加する合同研修会を必ず実施します。
  • 研修会では、①指導目標・計画の共有、②評価方法の確認、③担当するこどもたちの情報共有(特に配慮が必要なこどもについて)、④緊急時対応マニュアルの共有と役割分担の確認、を行います。
  • これらを委託契約の仕様書に明記し、実施を義務付けます。
主な取組③:安全管理マニュアルの統一と徹底
  • こども家庭庁の「教育・保育施設等におけるプール活動・水遊びの事故防止及び熱中症事故の防止について」等のガイドラインに基づき、区として統一された「学校水泳安全管理マニュアル」を作成します。
  • マニュアルには、授業中だけでなく、学校からの移動、施設での着替え、授業後の解散までの一連の流れにおける安全確保策、監視体制、熱中症対策、緊急時(事故・急病・不審者対応)の連絡体制と対応手順を具体的に定めます。
  • 全ての委託事業者に対し、このマニュアルの遵守を契約上の義務とします。
主な取組④:教員の新たな役割の明確化と支援
  • 外部委託における教員の役割を、「泳法を教える指導者」から、「こどもの学びや心身の状態を観察し、評価に繋げる教育者・マネージャー」へと再定義します。
  • 教員がプールサイドからこどもの活動への意欲、友人との関わり、困難に挑戦する様子などを観察・記録し、それを他の教科指導や生徒指導に活かすための視点や記録方法について、研修等を通じて支援します。
    • 客観的根拠:
      • 外部委託に反対する意見の中には、「指導を委託すると授業でなくなる」「教員の指導力が低下する」といった懸念があります。教員の専門性を活かす新たな役割を明確に定義し、支援することで、これらの懸念を払拭し、教育の質を担保します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 水泳授業における重大事故(死亡・後遺障害)発生件数ゼロ。
      • データ取得方法: 学校安全保健課等による事故報告の集計・管理
    • 教員の「水泳指導に関する業務負担感」を80%軽減する(アンケート評価)。
      • データ取得方法: 教員を対象とした定期的な意識調査(負担感の自己評価)
  • KSI(成功要因指標)
    • 教員と外部指導員の役割分担・連携に関する満足度(双方へのアンケート)。
      • データ取得方法: 委託事業者および学校教員へのアンケート調査
    • 標準カリキュラム及び評価基準の活用率(全実施校における)。
      • データ取得方法: 各学校からの指導計画・報告書の確認
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 児童の水泳授業に対する学習意欲・満足度の向上率。
      • データ取得方法: 児童を対象としたアンケート調査(前後比較)
    • 教員の成績評価(評定)に関する負担感・困難度の軽減率。
      • データ取得方法: 教員を対象としたアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 教員と外部指導員の合同研修会の開催回数・参加率。
      • データ取得方法: 研修実施報告書の集計
    • 統一安全管理マニュアルの全委託事業者・全学校への配布・研修実施率。
      • データ取得方法: 研修実施記録、受領確認書の管理

先進事例

東京都特別区の先進事例

葛飾区「全校的な外部委託への移行方針」

目黒区「データに基づく学校ごとの最適化方針」

  • 目黒区は、区立小中学校のプール施設整備に関する詳細な「考え方」を策定し、データに基づいた合理的な意思決定モデルを提示しています。特徴的なのは、60年間のライフサイクルコストを試算し、「自校設置」と「民間活用」の費用対効果を客観的に比較している点です。
  • その上で、小学校は移動時間の確保が比較的容易なため原則として学校外プールを活用し、中学校は教科担任制で時間割が複雑なため原則として自校にプールを整備するという、学校種別の特性に応じた柔軟な方針を打ち出しています。また、各学校から近隣プールまでの具体的な移動距離・時間をデータ化し、学校ごとに最適な活用法を検討するきめ細やかなアプローチをとっています。

世田谷区「モデル事業を通じた段階的・丁寧な合意形成」

全国自治体の先進事例

古賀市(福岡県)「市全体の包括的民間委託モデル」

  • 福岡県古賀市は、全国的にも珍しく、市内にある全11の小中学校の水泳授業を、民間のスイミングクラブに包括的に委託する取り組みを2023年度から開始しました。これは、施設の老朽化、教員の負担、公共プールの有効活用という複数の課題を同時に解決する、極めて戦略的なアプローチです。
  • 市が主体となって事業者と交渉し、全校の授業を一括で委託することで、スケールメリットを活かした効率的な運営を実現しています。天候に左右されない屋内プールで、プロのインストラクターから指導を受けられるため、こどもや保護者からの評価も高く、教員の負担軽減効果も絶大です。

下妻市(茨城県)「データ分析に基づく拠点校方式モデル」

  • 茨城県下妻市は、市内12校にあった11のプールを、将来的に5つの「拠点校」に集約するという大胆な計画を策定しました。この計画の根拠となっているのが、「稼働率」のデータ分析です。各学校の学級数や必要授業時間からプールの稼働率を算出し、市全体で本当に必要なプール数を客観的に導き出しました。
  • これにより、30年間で約4.5億円ものコスト削減効果を見込んでいます。また、利用校から拠点校への移動は、地理的条件に応じてバスと徒歩を組み合わせるなど、地域の実情に合わせた柔軟な運用を行っており、データに基づいた計画策定の好事例と言えます。

参考資料[エビデンス検索用]

国(省庁)関連資料
東京都・特別区関連資料
その他自治体・研究機関等資料

まとめ

 東京都特別区の学校プールは、施設の老朽化、増大する財政負担、そして教員の働き方改革という待ったなしの課題に直面しており、従来の一校一プールというモデルは持続可能性の限界に達しています。この問題の解決には、場当たり的な修繕の繰り返しではなく、プールシェアリング(共同利用)や外部委託を柱とした、戦略的で包括的な「学校プール再編計画」の策定が不可欠です。成功の鍵は、単にプールを廃止・集約することではなく、民間や地域の資源を最大限に活用し、全てのこどもたちに、より安全で質の高い水泳教育の機会を公平に提供する新たな仕組みを構築することにあります。この転換は、教育の質向上、教員負担の軽減、そして行政の効率化を同時に実現する好機となり得ます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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