17 健康・保健

スポーツ施設におけるAED設置の推進と利用講習

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(スポーツ施設における救命環境を取り巻く状況)

  • 自治体がスポーツ施設におけるAED設置の推進と利用講習を行う意義は、「スポーツ活動中の突然死から住民の命を守るセーフティネットの構築」と「地域全体の防災・減災意識と共助能力の向上」にあります。
  • スポーツ活動は健康増進に不可欠である一方、年齢を問わず心臓突然死のリスクを伴います。特に運動中は心臓への負荷が高まるため、体育館、グラウンド、プールといったスポーツ施設は、心停止が発生する可能性が比較的に高い場所と言えます。
  • 心停止から命を救うためには、救急隊の到着を待つ数分間に行われる「救命の連鎖(心停止の予防、早い119番通報、早い心肺蘇生とAED、救急隊・病院での処置)」が極めて重要です。その中でも、市民による迅速な心肺蘇生(CPR)とAED(自動体外式除細動器)の使用は、社会復帰率を劇的に向上させる鍵となります。
  • これまでの施策はAEDの「設置台数」を増やすことに重点が置かれてきましたが、これからは、いかにしてそのAEDを「いつでも、誰でも、確実に」使えるようにするか、という質の向上へと転換する時期に来ています。本稿では、東京都特別区におけるスポーツ施設を中心としたAED設置と利用講習の現状と課題を分析し、より効果的な行政支援策を提案します。

意義

住民・施設利用者にとっての意義

救命可能性の向上
  • 心停止後、1分経過するごとに救命率は7~10%低下すると言われ、救急車が到着するまでの平均約10分間(令和5年全国平均)の間に、その場に居合わせた人(バイスタンダー)がAEDを使用することが生死を分けます。
  • スポーツ施設にAEDが適切に配置され、利用者がその使い方を知っていることで、救命の「空白の時間」を埋め、救える命を大幅に増やすことができます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省消防庁の統計によれば、市民がAEDを使用した場合の1か月後生存率は、使用しなかった場合と比較して格段に高くなります。例えば、一般市民が目撃した心原性心停止傷病者に対し、市民がAEDを使用した場合の1か月後社会復帰率は43.0%(令和5年)に達します。
安全・安心感の醸成
  • 目に見える形で安全対策が講じられていることは、施設利用者、特に持病のある方や高齢者、子どもの保護者にとって大きな安心材料となります。
  • この安心感は、スポーツへの参加意欲を促進し、区民の健康増進や生きがいづくりにも貢献します。
後遺症なき社会復帰の促進

地域社会にとっての意義

地域全体の救命率向上
  • スポーツ施設は、地域住民が集まる拠点であり、夜間や休日も利用されることが多いです。
  • これらの施設に設置されたAEDは、施設利用者だけでなく、近隣で発生した緊急事態にも活用できる「地域の救命ステーション」としての役割を果たし、地域全体の救命能力を底上げします。
共助文化の醸成
  • AEDの利用講習を地域ぐるみで実施することは、「いざという時はお互いに助け合う」という共助の精神を育みます。
  • 救命という共通の目標を持つことで、住民間のコミュニケーションが活性化し、地域コミュニティの連帯感を強化する効果も期待できます。
防災・減災能力の向上
  • AEDの操作や心肺蘇生法は、地震などの大規模災害時にも必要となる基本的な救護スキルです。
  • スポーツ施設を拠点とした救命講習の普及は、地域全体の防災・減災能力の向上に直接的につながります。

行政にとっての意義

健康寿命の延伸と医療費の抑制
  • 救命率の向上と後遺症の軽減は、長期的なリハビリや介護にかかる医療・福祉コストの削減に繋がります。
  • 住民が安心してスポーツに親しめる環境を整備することは、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸に貢献し、将来的な社会保障費の抑制にも繋がる、費用対効果の高い投資です。
住民満足度と行政への信頼向上
  • 「命を守る」という具体的で分かりやすい施策は、行政に対する住民の信頼と満足度を高めます。
  • 安全・安心なまちづくりを推進する行政の姿勢を明確に示すことで、区政への支持を高める効果が期待できます。
「安全・安心なまち」のブランド構築
  • AEDの設置が進み、多くの住民が救命スキルを持つまちは、「安全で安心して暮らせるまち」としてのブランドイメージが向上します。
  • これは、定住人口の確保や、子育て世代・高齢者世帯の誘致においても有利に働きます。

(参考)歴史・経過

スポーツ施設におけるAED設置に関する現状データ

AEDの普及状況の推移
心停止の発生と救急搬送の現状
  • 全国の救急出動件数は増加傾向にあり、令和5年(2023年)には過去最多の約764万件に達しました。前年比で約41万件(5.7%)の増加です。
  • 救急車が119番通報を受けてから現場に到着するまでの全国平均時間は約10.0分(令和5年)であり、10年前と比較して延伸傾向にあります。この「空白の時間」を埋める市民の行動が、これまで以上に重要になっています。
市民による応急手当とAED使用の実態
  • 令和5年(2023年)に心肺機能停止となった傷病者のうち、一般市民によってAEDが使用(パッドが貼付)されたのは15,984人で、全体の11.4%にとどまっています。
  • しかし、その効果は絶大です。一般市民に心停止の時点が目撃された心原性の傷病者のうち、市民による応急手当があった場合の1か月後社会復帰率は16.1%であったのに対し、応急手当がなかった場合は6.4%でした。さらに、市民がAEDによる電気ショックを行った場合の社会復帰率は43.0%にまで跳ね上がります。
  • このデータは、AEDの設置台数を増やすだけでなく、市民による使用率をいかに向上させるかが、救命率改善の最大の鍵であることを明確に示しています。
スポーツ活動中の心臓突然死リスク
  • スポーツ活動中の心臓突然死は、特に若年層で発生リスクが相対的に高くなります。米国の推計では、健康に見える若年アスリートの10万人に1~3人が運動中に急死するとされています。
  • 日本では、18歳以下の突然死のうち約4割がスポーツ関連であるとの報告もあり、スポーツ施設における対策の重要性が浮き彫りになります。
  • 学校は心停止のリスクが高い場所の一つです。平成24年度から28年度の5年間で、全国の公立学校では726人にAEDのパッドが貼られ、うち250人に電気ショックが実施されており、学校での心停止が決して稀ではないことを示しています。
    • (出典)(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/04-%E5%BF%83%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%A8%E5%BF%83%E8%87%93/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%BF%83%E8%87%93%E7%AA%81%E7%84%B6%E6%AD%BB)
    • (出典)CareNet「スポーツ中の心臓突然死、最多はサッカー、バスケ、マラソン」
    • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000677308.pdf)平成30年度
救命講習の受講状況
  • 全国の消防本部が実施する応急手当講習の受講者数は、平成14年(2002年)に年間100万人を超え、令和元年(2019年)には約196万人に達するなど、多くの市民が講習を受けています。
  • しかし、依然として多くの住民が未受講です。例えば、東京都特別区を対象としたある調査では、住民の65.8%がAED講習の受講経験がないと回答しており、知識とスキルの普及にはまだ大きな伸びしろがあります。

課題

住民・施設利用者の課題

知識・スキルの不足と使用への心理的障壁
  • AEDの存在は広く知られるようになりましたが、実際に目の前で人が倒れた際に、自信を持って使用できる住民はまだ少数派です。「知っている」ことと「できる」ことの間には大きなギャップが存在します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の世論調査によれば、AEDの存在を認知している国民は96.3%にのぼるものの、「緊急時に使用する自信がある」と回答した人は43.7%にとどまっています。
      • 旭化成ゾールメディカルが実施した2025年度の意識調査でも、救命講習の受講経験者でさえ、実際に「できると思わない」「わからない」と回答する人が少なくないことが示されています。
        • (出典)(https://www.ak-zoll.com/aed/column/aedcolumn032.html)令和7年度
      • 東京都特別区の調査では、過去3年以内にAED講習を受講した住民は15.3%に過ぎず、65.8%が受講経験がありません。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:救命の連鎖の最初の輪が機能不全に陥り、AEDが「ただの箱」と化して救える命が失われ続けます。
法的責任への不安と知識不足
  • 救命行為を行った結果、万が一うまくいかなかった場合に責任を問われるのではないか、あるいは、誤った使い方でかえって状態を悪化させてしまうのではないか、という不安が、善意の行動をためらわせる大きな要因となっています。
    • 客観的根拠:
      • 日本救急医療財団の調査では、AEDを使用したことがない理由として「責任を問われることへの不安」が42.3%、「間違った使用を懸念する」が38.7%を占めています。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
      • 善意の救命行為は、故意または重過失がなければ法的な責任を問われない(いわゆる「善きサマリア人の法」の趣旨)ことについて、知っている市民は37.2%にとどまっています。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
      • 日本臨床救急医学会の報告でも、市民が救命行為に関わることは非日常的な体験であり、その後の心的ストレスが行動の障壁となりうることが指摘されています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:善意の行動が罰せられるかもしれないという誤解が、救命の機会を奪う最大の阻害要因となります。

地域社会の課題

AED設置場所の認知度不足とアクセシビリティの課題
  • 多くのAEDは、施設の閉館とともに利用できなくなります。心停止は時間を選ばないため、夜間や休日にアクセスできないAEDは、地域の救命ネットワークにおいて大きな穴となります。また、そもそも近所にAEDがあること自体を知らない住民が大多数です。
民間・小規模スポーツ施設における設置の遅れ
  • 公共のスポーツ施設では設置が進む一方、民間の小規模なジムや道場、地域のスポーツクラブなどでは、コストや管理の負担から設置が進んでいません。利用する施設によって安全レベルに格差が生じているのが現状です。

行政の課題

AEDの管理体制の不備
  • AEDは「特定保守管理医療機器」であり、電極パッドやバッテリーには使用期限があります。しかし、管理が設置者任せになっているため、いざという時に使えない「サイレント・フェイラー(静かな故障)」状態のAEDが少なからず存在します。これは、公的投資の価値を損ない、住民の信頼を裏切る深刻な問題です。
学校における安全教育・訓練の形骸化
  • ほぼ全ての学校にAEDが設置されているにもかかわらず、教職員や生徒への教育・訓練が形骸化しているケースが散見されます。特に、部活動の顧問や非常勤職員など、実際に生徒と接する時間の長いスタッフへの研修が手薄になりがちです。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:学校という心停止リスクの高い環境で、最も身近にいる教職員や生徒が動けず、救命の機会が失われる悲劇が繰り返されます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果(救命率向上、医療費削減等)が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の地域・層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策、または先進事例で成功実績がある施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • スポーツ施設における救命率向上のためには、「モノ(AED本体)」「ヒト(救助者)」「情報(ネットワーク)」の3つの要素を一体的に強化する必要があります。
  • 優先度が最も高いのは**【支援策①:AED設置の戦略的拡大と管理体制の強化】【支援策②:実践的な救命スキルの普及と利用促進】**です。信頼できるAEDがいつでも利用可能であること(モノ)と、それを使える住民がいること(ヒト)は、救命の根幹をなす両輪であり、並行して強力に推進すべきです。
  • これら2つの施策の効果を最大化する触媒として**【支援策③:デジタル技術を活用した救命ネットワークの構築】**を位置づけます。これは「モノ」と「ヒト」を効率的に結びつける「情報」のインフラであり、基盤整備が進むにつれて段階的に導入することで、相乗効果を生み出します。

各支援策の詳細

支援策①:AED設置の戦略的拡大と管理体制の強化

目的
  • 区内のどこでも、24時間365日、心停止発生から数分以内に、正常に作動するAEDが利用できる環境を整備します。
  • 民間・小規模施設への設置を促進し、施設による「命の格差」を是正します。
主な取組①:24時間アクセス可能なAEDネットワークの構築
  • 区内のコンビニエンスストアや24時間営業の店舗と協定を結び、屋外設置型のAEDボックスの設置を推進します。設置費用や維持管理費の一部を区が補助することで、事業者の負担を軽減します。
  • 新設または大規模改修を行う区立のスポーツ施設においては、屋外に24時間アクセス可能なAEDを1台以上設置することを原則とします。
    • 客観的根拠:
      • 東京都文京区や港区では、既にコンビニエンスストアと協定を結び、24時間利用可能なAEDの設置を進めており、実現可能なモデルとして確立されています。
      • 夜間の心停止に対する市民によるAED使用率の低さが課題であり、24時間アクセス可能なAEDの整備が救命率向上に直結します。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
主な取組②:民間・小規模スポーツ施設への設置補助金制度の創設・拡充
  • 民間が運営する小規模なフィットネスクラブ、体育教室、武道場、地域のスポーツサークル等が利用する施設を対象とした、AED購入・更新費用の補助金制度を創設します。
  • 補助率は購入費用の2分の1から3分の2程度とし、消耗品(パッド・バッテリー)の初回交換費用も対象に含めることで、導入のハードルを下げます。
    • 客観的根拠:
      • コストが民間施設への導入の大きな障壁となっているため、補助金制度は設置を直接的に促進する有効な手段です。
        • (出典)(https://www.ak-zoll.com/aed/column/aedcolumn010.html)
      • 運動強度の高いフィットネスクラブ等、心停止リスクの高い施設での設置率が依然として低い現状を改善する必要があります。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
主な取組③:全区AED一元管理システムの導入
  • 区が管理・補助する全てのAEDの位置情報、機種、設置日、消耗品の使用期限などを一元的に管理するクラウド型システムを導入します。
  • システムにより、使用期限が近づいた消耗品を自動で把握し、交換漏れを防ぎます。また、定期的な実地確認と組み合わせることで、常に使用可能な状態を維持します。
    • 客観的根拠:
      • 設置されているAEDの約7.2%が管理不備で使用不能というデータは、個々の設置者任せの管理体制の限界を示しており、行政主導の一元管理システムの必要性を裏付けています。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/aed%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2/)
      • 学校での耐用年数超過や点検漏れの事例も、体系的な管理の欠如が原因であり、システムによる管理が有効です。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000677308.pdf)平成30年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内における院外心停止の1ヶ月後社会復帰率:15%以上(現状値は東京消防庁データに基づく)
  • KSI(成功要因指標)
    • 24時間アクセス可能なAEDの割合:区内全設置台数の50%以上(現状推定27.2%)
      • データ取得方法:区のAED一元管理システムのデータ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 夜間(18時~翌朝6時)の心停止に対する市民によるAED使用率:10%以上
      • データ取得方法:東京消防庁の救急活動記録の時間帯別・区別データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • コンビニ等への屋外AED設置数:年間50台増
      • データ取得方法:区の補助金交付実績及び設置台帳
    • 小規模スポーツ施設への設置補助件数:年間30件
      • データ取得方法:区の補助金交付実績

支援策②:実践的な救命スキルの普及と利用促進

目的
  • AEDの知識だけでなく、緊急時にためらわず行動できる実践的なスキルと自信を住民に付与します。
  • 救命行為を妨げる心理的・法的な不安を解消し、「助け合い」の文化を醸成します。
主な取組①:VR技術を活用した没入型救命訓練の導入
  • 現実の火災現場を再現する防災訓練のように、スポーツジムや駅のホームなど、リアルな状況を再現したVR(仮想現実)救命訓練コンテンツを開発・導入します。
  • 区役所、地域センター、スポーツ施設などにVR訓練ブースを設置し、住民が予約なしで気軽に体験できる機会を提供します。これにより、従来の集合研修では得られない臨場感と実践的な判断力を養います。
    • 客観的根拠:
      • VR訓練は、学習理解度を大幅に向上させる効果が実証されており(医療教育分野で学習理解度が39%→80%へ向上など)、座学や従来の実技訓練の限界を補うことができます。
      • 岡山県倉敷市などの自治体で、防災訓練にVRが導入されており、公共サービスへの応用実績があります。
主な取組②:スポーツ指導者・学校教職員向け研修の義務化と内容刷新
  • 区に登録されているスポーツ指導者や、区内学校の全教職員(非常勤職員、部活動指導員を含む)に対し、年1回の実践的な救命講習の受講を義務付けます。
  • 研修内容を、心臓震盪や熱中症起因の心停止など、スポーツ現場で起こりうる特有の事態を想定したシナリオ訓練中心に刷新します。
主な取組③:「善意の救命」を支える広報・啓発キャンペーン
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 住民の「緊急時にAEDを使用する自信がある」との回答率:60%以上(現状43.7%)
      • データ取得方法:区が実施する住民意識調査(年1回)
  • KSI(成功要因指標)
    • 過去1年以内の救命講習受講者率:住民の10%以上
      • データ取得方法:消防署及び区が実施する講習の受講者データと住民基本台帳の突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民の「善意の救命行為による免責」認知度:70%以上(現状37.2%)
      • データ取得方法:住民意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • VR救命訓練の年間体験者数:5,000人
      • データ取得方法:各VR設置拠点の利用者数集計
    • スポーツ指導者・教職員向け義務研修の受講率:100%
      • データ取得方法:研修実施記録の確認

支援策③:デジタル技術を活用した救命ネットワークの構築

目的
  • デジタル技術を駆使し、心停止の発生からAEDによる電気ショックまでの時間を劇的に短縮します。
  • 住民、AED、救急隊をリアルタイムで結びつけ、救命の連鎖をより強固で迅速なものにします。
主な取組①:AED設置場所情報のオープンデータ化とマップアプリ連携
  • 区が整備したAED一元管理システムの設置場所情報(特に24時間利用可能なもの)をオープンデータとして公開します。
  • GoogleマップやYahoo!マップなど、住民が日常的に利用する地図アプリの運営事業者と連携し、「AED」と検索すれば最寄りの機器が表示されるよう働きかけます。
主な取組②:市民救助者通報システム(AED-GO等)の導入支援
  • 東京消防庁や大学等の研究機関と連携し、「AED-GO」に代表されるスマートフォンアプリを活用した市民救助者通報システムを区内に導入します。
  • このシステムは、119番通報と連動し、心停止現場の近くにいる登録ボランティアに通知を送り、AEDの搬送と一次救命処置への協力を要請するものです。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 救急隊到着前の市民によるAED装着率:20%以上
      • データ取得方法:東京消防庁の救急活動記録の区別データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 市民救助者通報システムからの出動要請に対するボランティアの現場到着率:30%以上
      • データ取得方法:システム運営事業者からの統計データ提供
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民の「最寄りのAEDを地図アプリで検索できる」ことの認知度:80%以上
      • データ取得方法:住民意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 市民救助者通報システムの登録ボランティア数:区内人口の1%以上
      • データ取得方法:システム登録者数のデータ
    • 主要マップアプリへの区内全AED情報の掲載率:100%
      • データ取得方法:定期的な目視確認とAPI連携状況の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

文京区「コンビニエンスストアとの協定による24時間AED体制の構築」

  • 文京区は、令和6年に株式会社ファミリーマートおよび株式会社ローソンと協定を締結し、区内の24時間営業のコンビニエンスストア計50店舗にAEDを設置しました。この取り組みにより、夜間や休日でも誰でも利用可能なAEDが大幅に増加しました。
  • 区がAED本体の費用や維持管理費を負担し、コンビニエンスストア側が設置場所の提供と日常的な管理を担うという官民連携の優れたモデルです。
    • 成功要因:住民からのニーズが高かったコンビニへの設置を実現したこと、事業者の負担を軽減するスキームを構築したこと、24時間というアクセシビリティに特化したこと。
    • 客観的根拠:

港区「AED設置場所拡大と活用支援の一体的推進」

  • 港区は、AEDの設置が少ない地域への新規設置を進めると同時に、その活用を支援する施策を一体的に推進しています。
  • 具体的には、AEDの設置場所拡大に加え、使い方講習会の開催や訓練キットの配布といった「活用の支援」を予算化しており、ハード(機器)とソフト(人材育成)の両面からアプローチしています。
    • 成功要因:AEDを単に設置して終わりにするのではなく、住民が実際に使えるようになるための普及啓発活動をセットで計画・実行している点。
    • 客観的根拠:
      • 令和5年度の予算要求において、AED設置場所の拡大(80台)と並行して、普及啓発経費(しおり、ステッカー等)や活用支援(講習会、訓練キット)を明確に事業内容として盛り込んでいます。

渋谷区「データに基づくEBPM推進による政策最適化」

  • AEDに特化した事例ではありませんが、渋谷区のEBPM(証拠に基づく政策立案)推進の取り組みは、AEDの戦略的配置に応用可能です。
  • 同区では、子育て支援策の展開において、各種データを統合分析し、地域ごとのニーズに基づいたサービスの最適化に成功しています。この手法を用いれば、高齢者人口密度、スポーツ施設の利用者数、過去の救急出動データなどを重ね合わせ、心停止の発生リスクが最も高いエリアを科学的に特定し、AEDを重点的に配置することが可能になります。
    • 成功要因:専門人材の登用、データ分析基盤の整備、予算編成と連動した政策効果検証の仕組み化。
    • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

千葉県柏市「市民救助者通報システム『AED GO』の導入と普及」

  • 柏市は、京都大学などが開発した市民救助者通報アプリ「AED GO」を全国に先駆けて導入した自治体の一つです。
  • 119番通報と連動し、現場近くの登録ボランティアにAEDの搬送を要請するこのシステムにより、救急隊の到着前に市民の手で救命処置が開始される事例が多数報告されています。2,300人以上の市民ボランティアが登録しており、地域全体の救命力を飛躍的に向上させています。
    • 成功要因:システム導入前からコンビニへのAED設置など、市民がアクセスしやすい環境を整備していたこと、行政と大学・研究機関との強固な連携、積極的な市民への広報活動。
    • 客観的根拠:

岡山県倉敷市「VR技術を活用した防災・救命訓練の導入」

  • 倉敷市は、市の防災センターにVR(仮想現実)技術を用いた消火訓練シミュレーターを導入し、市民がリアルな状況下での初期消火を体験できる機会を提供しています。
  • この取り組みは、従来の座学や実技訓練では得難い没入感と実践的なスキル習得を可能にするもので、AED使用を含む救命訓練にも応用可能な先進事例です。
    • 成功要因:宝くじの助成金を活用した財源確保、市民が利用しやすい防災センターへの設置、eラーニングと組み合わせた普通救命講習の実施など、多様な学習機会の提供。
    • 客観的根拠:
      • VR技術が教育分野において高い学習効果を持つことは広く知られており、倉敷市はそれを市民向けの安全教育にいち早く取り入れています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 スポーツ施設における心臓突然死から尊い命を守るためには、AEDを単に「設置する」段階から、それを最大限に活かす「システムを構築する」段階へと、政策のパラダイムを転換する必要があります。そのシステムとは、信頼性の高いAEDを戦略的に配置・管理する「モノ」の基盤、住民一人ひとりが自信を持って行動できる「ヒト」の育成、そして、デジタル技術で両者を瞬時に結びつける「情報」のネットワークが三位一体となったものです。本稿で提案した「戦略的拡大と管理体制の強化」「実践的スキルの普及」「デジタル救命ネットワークの構築」という3つの支援策は、データに基づいた実現可能な道筋であり、東京都特別区が地域救命力の向上における先進モデルとなるための具体的な処方箋です。これらの施策を通じて、誰もが安心してスポーツを楽しみ、いざという時には互いに助け合える、真に安全・安心な地域社会を実現することが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました