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インフラ点検・診断のデータベース化

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(道路・橋梁インフラを取り巻く環境)

  • 自治体が道路・橋梁インフラの点検・診断データベース化を行う意義は「インフラの長寿命化によるライフサイクルコストの抜本的削減」と「データ駆動型の予防保全体制への転換による持続可能な安全確保」にあります。
  • 日本の社会資本、特に高度経済成長期に集中的に整備された道路・橋梁は、建設後50年を経過する施設が加速度的に増加し、全国的な老朽化が深刻な社会問題となっています。
  • この状況下、2012年の笹子トンネル天井板崩落事故を契機に、インフラ老朽化の危険性が社会に強く認識されるようになりました。
  • これを受け、2014年の道路法改正により、全ての橋梁・トンネルについて5年に一度の近接目視による定期点検が管理者に義務付けられました。
  • この法改正により、各自治体は膨大な点検データを抱えることになりましたが、その管理・活用が新たな行政課題として浮上しています。
  • 本記事では、東京都特別区がこの課題に的確に対応し、将来にわたって安全かつ効率的なインフラ管理を実現するため、点検・診断結果を一元的に管理・活用する「統合データベース」の構築を中核とした政策を提案します。

意義

住民にとっての意義

日常生活の安全・安心の確保
  • データベースを活用した計画的かつ予防的な修繕により、笹子トンネル事故のような突発的なインフラ崩壊リスクを低減し、住民が日々利用する道路や橋梁の安全な通行を恒久的に確保します。
  • 災害時においても、健全性が確保された道路ネットワークは、円滑な避難活動や緊急車両の通行を支え、住民の生命と財産を守るための不可欠な基盤となります。

地域社会にとっての意義

安定した社会経済活動の維持
  • 道路・橋梁は物流や人の移動を支える経済活動の根幹であり、その機能不全はサプライチェーンを寸断し、地域経済に深刻な打撃を与えます。データベースに基づく計画的な維持管理は、経済活動の信頼性を担保します。
  • インフラの健全性と信頼性は、企業の立地戦略や住民の居住地選択における重要な判断材料であり、地域の持続的な発展と競争力維持に直結します。

行政にとっての意義

財政負担の平準化とライフサイクルコストの削減
  • 従来の損傷が深刻化してから対応する対症療法的な「事後保全」から、データベースの情報を基に劣化を予測し、軽微な段階で対策を講じる「予防保全」へと転換することが可能になります。
  • これにより、大規模な修繕や架け替えといった巨額の費用が必要となる事態を未然に防ぎ、将来の財政負担を大幅に抑制し、かつ平準化することができます。
維持管理業務の抜本的な効率化
  • 点検データ、設計図書、補修履歴、BIM/CIMモデルといった、これまで紙や個別のファイルで散在していた情報を一元化したデータベースは、必要な情報へのアクセス時間を劇的に短縮し、部署間の情報共有を円滑にします。
  • AIによる劣化予測や修繕計画立案の自動化・高度化など、新技術との連携が容易になり、限られた技術職員をより高度な判断や創造的な業務に集中させることが可能になります。

(参考)歴史・経過

  • 1950-1970年代(高度経済成長期)
    • 戦後復興と急速な経済成長を背景に、全国で道路・橋梁、トンネルなどの社会インフラが短期間に集中して建設されました。現在、老朽化が深刻な問題となっている施設の多くがこの時期に整備されたものです。
    • (出典)国土交通省「国土交通白書 2020」2021年 1
  • 2000年代
    • バブル経済崩壊後の厳しい財政状況や地方分権の流れの中で、公共事業費は削減傾向にありました。インフラの「整備」から「維持管理」へのパラダイムシフトが叫ばれ始めましたが、具体的な維持管理手法や体制はまだ確立されていませんでした。
  • 2012年12月(笹子トンネル天井板崩落事故)
  • 2014年(道路法改正・定期点検義務化)
    • 笹子トンネル事故の教訓を踏まえ、道路法が改正されました。これにより、全国のすべての橋梁・トンネル等の管理者(国、自治体、高速道路会社等)に対し、5年に1度の頻度で、技術者が近接目視により点検を行うことが法的に義務付けられました。
    • (出典)国土交通省「道路法施行規則の一部を改正する省令」2014年 8
  • 2010年代後半(インフラメンテナンス元年以降)
  • 2020年代(インフラDXの本格化)
    • 国土交通省が「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定し、データとデジタル技術を全面的に活用した業務変革(DX)を強力に推進しています。
    • BIM/CIM(3次元モデル)の原則適用や、AI、ドローン、IoTセンサーといった新技術の現場導入が本格化し、点検・診断から設計、施工、維持管理に至る建設生産プロセス全体のあり方が根本から見直されています。
    • (出典)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/tec/tec_tk_000073.html) 7

道路・橋梁インフラに関する現状データ

全国の道路・橋梁のストック状況
  • 道路
    • 日本の道路総実延長は、令和5年3月31日時点で約123万kmに及びます。
    • このうち、国が管理する国道や都道府県道が約18.6万kmであるのに対し、市区町村が管理する市町村道が約103.6万kmと、全体の約84%を占めており、基礎自治体における維持管理の重要性が極めて高いことがわかります。
  • 橋梁
加速するインフラの高齢化
  • 全国的な傾向
    • 建設後50年以上を経過する高齢化インフラの割合は、今後、加速度的に増加します。道路橋においては、2018年時点で約25%だったものが、2023年には約39%に増加し、さらに10年後の2033年には約63%に達すると予測されています。
    • 同様に、トンネルについても、2018年の約20%から2033年には約42%へと急増する見込みであり、インフラの高齢化は待ったなしの状況です。
  • 東京都特別区の事例(品川区)
    • この全国的な傾向は、東京都特別区においても例外ではありません。例えば品川区では、管理する66橋のうち、架設後50年を経過した橋梁の割合は、2022年時点で26%ですが、10年後の2033年には34%、さらに20年後の2043年には56%へと倍増以上になることが予測されています。このデータは、特別区においても今後20年で老朽化が一気に深刻化することを示しています。
定期点検に基づく健全性の診断結果
  • 診断区分
    • 定期点検の結果は、施設の健全性を4段階で評価します。健全性が高い順に「I:健全」「II:予防保全段階」「III:早期措置段階」「IV:緊急措置段階」と区分されます。
  • 全国の状況(地方公共団体管理橋梁)
  • 東京都特別区の事例
    • 品川区
      • 健全性I(健全)が61%、健全性II(予防保全段階)が39%であり、緊急・早期措置が必要なIII・IVの橋梁はありませんでした。これは、致命的な損傷を持つ施設は少ないものの、コスト効率の良い「予防保全」が重要となる健全性IIの施設が相当数存在することを示しています。
      • (出典)品川区「品川区橋梁長寿命化修繕計画」2023年 12
    • 西東京市
    • 港区
      • 区が管理するトンネルの点検結果では、健全性は「判定区分II(予防保全段階)」と診断されており、橋梁と同様に予防保全の重要性が示されています。
      • (出典)港区「港区道路施設維持管理計画」2023年 15

課題

住民の課題

突発的な通行止めや利用制限による生活への影響
  • インフラの老朽化が進行することにより、安全確保のための緊急的な補修工事や、事前の予告が困難な通行規制・重量制限が突発的に発生するリスクが高まります。
  • こうした事態は、住民の通勤・通学、日常の買い物といった生活動線や、救急車・消防車などの緊急車両の通行に深刻な支障をきたし、住民生活の利便性と安全性を直接的に脅かします。

地域社会の課題

災害時の脆弱性増大と経済活動への悪影響
  • 地震や豪雨などの災害時に橋梁の落橋やトンネルの崩壊が発生すれば、避難路や物資輸送を担う緊急輸送道路が寸断され、救命・救援活動を著しく妨げることになります。
  • また、平時においてもインフラの信頼性低下は、企業のサプライチェーンを不安定にし、物流コストを増大させます。これは地域の経済的魅力を損ない、企業の流出や投資の停滞を招くことで、長期的な競争力低下に繋がります。
    • 客観的根拠:
      • 国が定める「第5次社会資本整備重点計画」では、「防災・減災が主流となる社会の実現」が重点目標の第一に掲げられており、災害時の交通機能を確保するための道路ネットワークの強靭化が不可欠とされています。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」2021年 16
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 災害時の被害が拡大し、復旧の遅れが地域経済の衰退を決定的にします。

行政の課題

深刻化する技術者不足と技術継承の困難さ
  • 地方自治体全体で、インフラの維持管理を担う土木技術職員の不足は深刻化しており、特に町村部では約6割で橋梁管理に携わる専門技術者が存在しないという危機的な状況です。
  • 東京都特別区においても、職員の定年退職や人事異動によるノウハウの断絶、若手への実践的な技術継承が大きな課題となっています。高度な専門知識を持つ職員が少ないため、点検結果の適切な評価や補修工法の選定など、維持管理の根幹をなす高度な技術的判断が困難になりつつあります。
    • 客観的根拠:
      • 土木学会の調査によれば、特別区では「区職員の技術力不足・継承に懸念あり」と明確に指摘されており、専門知識を持つ職員を中途採用で補っている実態が報告されています。また、港区では実質的に橋梁維持管理を担える職員が各支所に2名程度という具体的な事例も挙げられています。
      • (出典)土木学会「東京都特別区橋梁維持管理マネジメント」2019年 6
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 点検結果を適切に評価・判断できず、インフラの重大な劣化を見過ごすリスクが高まります。
膨大な点検データの管理・活用における非効率性
  • 5年に一度の定期点検の義務化により、膨大な量の点検データが各自治体で蓄積されています。しかし、その多くが紙の調書や担当者ごとのExcelファイルといった形式で保管されており、組織横断的な分析や戦略的な活用が極めて困難な状況です。
  • データの項目や形式が標準化されていないため、部署間や区をまたいだデータ連携、さらにはAI等を用いた高度な横断的分析が妨げられています。これにより、データは「作るだけ」のものとなり、価値ある情報資産として活かされていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 貴重なデータが「死蔵」され、コスト削減や安全性向上の機会を逸し続けます。
逼迫する財政と増大する維持管理コスト
  • 前述の通り、老朽化施設の急増は、維持管理・更新費用の増大に直結し、社会保障費の増大など他の行政需要と相まって、自治体財政を深刻なレベルで圧迫します。
  • 特に、損傷が大きくなってからの「事後保全」は、軽微なうちに対策する「予防保全」に比べて数倍のコストがかかるため、非効率な財政支出を招きます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 財政が硬直化・破綻し、インフラ維持を部分的に放棄せざるを得ない「インフラクライシス」に陥ります。
点検・補修工事の担い手不足
  • 特別区のような大都市中心部では、大規模な都市再開発工事が多数発注されるため、建設業者が相対的に利益率の低いインフラの維持管理工事の受注に消極的になるという特有の構造的問題が存在します。
  • これにより、必要な予算を確保しても入札が不成立(入札不調)となるケースが頻発し、計画通りに事業を執行できない事態が発生しています。また、地域の小規模な建設業者は、高度な補修技術やノウハウに乏しいという課題も抱えています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 必要な修繕が計画通りに進まず、インフラの劣化が実質的に放置される事態となります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。単一の課題解決よりも、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を優先します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
    • 費用対効果
      • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的なコストよりも長期的な便益を重視し、将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無
      • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。先行事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 前述の「行政の課題」で明らかになった「膨大なデータ発生 → 技術者不足 → 担い手不足 → データ管理の非効率化」という悪循環を断ち切るためには、その中核に位置する**「データ管理の非効率性」の解消を最優先課題**と位置づけることが最も合理的です。
  • したがって、全ての取り組みの土台となる**「支援策①:インフラ維持管理DX基盤の構築」を最優先**で推進します。このデジタル基盤なくして、他の施策の効果は限定的となります。
  • このDX基盤の価値を最大化するため、質の高いデータを効率的に収集する体制を構築する**「支援策②:新技術活用による点検・診断の高度化・効率化」を次に優先**します。これは、データベースという「器」に良質な「中身」を注ぎ込むための重要な取り組みです。
  • そして、これらの技術的な取り組みを支え、持続可能なものにするために、人的基盤を強化する**「支援策③:持続可能な維持管理体制の構築と人材育成」を並行して推進**します。技術と人材は車の両輪であり、どちらが欠けても改革は進みません。
  • これら3つの支援策は相互に強く連携しており、一体的に推進することで初めて相乗効果が生まれ、インフラメンテナンスの質の抜本的な向上(トランスフォーメーション)を実現します。

各支援策の詳細

支援策①:インフラ維持管理DX基盤の構築

目的
  • 東京都特別区が管理する全ての道路・橋梁に関する点検・診断データ、設計・施工データ、補修履歴、BIM/CIMモデル等の情報を一元的に管理・可視化する「特別区統一インフラデータベース」を構築します。
  • これにより、データに基づいた客観的で精度の高い長寿命化計画の策定を可能にし、対症療法的な事後保全から、戦略的な予防保全への本格的な転換を加速させます。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省は「インフラ分野のDXアクションプラン」において、データ連携基盤の構築を最重要施策の一つと位置付け、国土全体のデジタルツイン化を目指しています。
      • (出典)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/tec/tec_tk_000073.html) 7
      • 山口県が構築した「インフラ総合管理データベース」は、このコンセプトを具現化した全国的な成功事例であり、本提案の有効性を裏付けています。
      • (出典)山口県「「やまぐちの農業農村」に関するインフラ総合管理データベース」2024年 20
主な取組①:特別区統一インフラデータベースの共同構築・運用
  • 各区が個別にシステムを開発する非効率を避け、23区が共同でクラウドベースの統一データベースを構築・運用します。
  • これにより、スケールメリットを活かした開発・運用コストの大幅な削減を実現するとともに、区をまたがる広域的なデータ分析や、区間異動する職員の業務継続性を確保します。
  • GIS(地理情報システム)を基盤とし、地図上で施設の位置、諸元、健全性診断結果、点検・補修履歴などを直感的に把握できるユーザーフレンドリーなインターフェースを整備します。
主な取組②:データ標準化と既存データの移行
  • 橋梁諸元(橋長、幅員等)、損傷の種類・程度、部材名称など、データベースに登録する全てのデータ項目と入力形式に関する標準化ルールを策定します。これにより、データの品質と相互運用性を担保し、AI分析等の基盤を整えます。
  • 各区が保有する過去の膨大な点検データ(紙、PDF、Excel等)を、AI-OCR(光学的文字認識)技術等を活用して効率的にデジタル化し、標準化ルールに従って新データベースへ移行する計画を策定・実行します。
主な取組③:BIM/CIMデータの統合管理
  • 新規に建設または大規模更新する施設については、3次元のBIM/CIMモデルの納品を標準化し、データベース上で属性情報と共に管理します。
  • 施設の3次元モデルと、点検・補修履歴データを時系列で連携させることで、施設のライフサイクル全体を仮想空間上で可視化し、維持管理を高度化します(デジタルツインの実現)。
    • 客観的根拠:
      • 東京都建設局では、設計から施工、維持管理までを一貫してBIM/CIMで管理するモデル工事の試行を進めており、将来的には事業全体での活用を目指しています。
      • (出典)東京都「令和3年度 東京都技術会議の活動」2021年 22
      • 関東地方整備局のモデル工事事例では、BIM/CIM活用により、従来5日かかっていた協議資料作成が2日で完了するなど、具体的な生産性向上が報告されています。
      • (出典)(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000908567.pdf) 23
主な取組④:AIによる劣化予測・分析機能の実装
  • データベースに蓄積された「損傷の種類・進行度」と「施設の環境条件(塩害、交通量等)・構造条件」の相関関係をAIに学習させ、個々の施設の将来の劣化進行度を確率的に予測するモデルを構築します。
  • これにより、「どの施設を、いつ、どの工法で対策するのが最もライフサイクルコストを低減できるか」といった、最適な修繕シナリオのシミュレーションと立案を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 今後30年間のインフラ維持管理・更新にかかるライフサイクルコストを20%削減する。
      • データ取得方法: 各区の長寿命化修繕計画に基づく長期費用試算と実績値の経年比較。
  • KSI(成功要因指標)
    • データベースへの主要データ(過去10年分の点検・補修履歴)移行率:100%(5年以内)。
      • データ取得方法: データベース管理システム上のデータ移行プロジェクト進捗管理レポート。
    • BIM/CIM原則適用率(新規・大規模更新事業):100%(3年以内)。
      • データ取得方法: 公共工事発注案件の仕様書および契約内容の全件確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 長寿命化修繕計画の策定・更新に要する職員の作業時間:50%削減。
      • データ取得方法: 計画策定担当部署の職員を対象とした業務量調査(タイムスタディ、ヒアリング)。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特別区統一インフラデータベースの構築完了および全23区での本格稼働。
      • データ取得方法: プロジェクト管理計画書に定められたマイルストーンの達成状況評価。

支援策②:新技術活用による点検・診断の高度化・効率化

目的
主な取組①:ドローン・ロボット活用点検の標準化と導入支援
  • 高所や河川上、鉄道上など、人が容易に近接できない箇所の点検において、ドローンやロボットを活用する際の標準的な業務手法や成果品仕様を定めます。
  • ドローン等を用いた点検業務を円滑に発注できるよう、モデル仕様書や詳細な積算基準を整備し、各区の導入を技術的・制度的に支援します。
主な取組②:AI画像解析システムの共同利用
  • 高解像度カメラやドローンで撮影したコンクリートや鋼材の表面画像から、ひび割れ、錆、剥離、塗膜の劣化といった変状をAIが自動で検出・分類・計測するシステムを、特別区で共同導入し、ライセンスを共有します。
  • これにより、点検技術者個人の経験や主観による評価のばらつきをなくし、客観的で定量的な診断を実現するとともに、膨大な写真の確認や点検調書作成にかかる時間を大幅に短縮します。
主な取組③:IoTセンサーによる常時遠隔監視の実証
  • 特に交通上・防災上の重要度が高い橋梁や、既知の変状が進行している橋梁に対し、傾斜センサー、振動センサー、伸縮計、塩分センサーなどを設置し、構造物の状態を常時遠隔監視する実証実験を行います。
  • これにより、地震や豪雨後の緊急点検の迅速化や、異常の早期検知による迅速な対応を可能にするとともに、将来的な点検頻度の最適化(状態に応じた点検)を目指します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省の「インフラ分野のDXアクションプラン」では、センサー等を活用したインフラの管理・運用(インフラの使い方の変革)の実現が重要な目標として掲げられています。
      • (出典)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/tec/tec_tk_000073.html) 7
主な取組④:新技術導入に対する補助制度の創設
  • 国の「道路メンテナンス事業補助制度」に上乗せ、または連携する形で、特別区独自の補助制度を創設します。これにより、各区がドローンやAIなどの新技術を試行・導入する際の初期コスト負担を軽減し、積極的な活用を後押しします。
  • 「インフラメンテナンス大賞」の受賞技術や、国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」に掲載されている技術など、効果が客観的に実証されている技術の導入を特に奨励します。
    • 客観的根拠:
      • 国の補助制度では、長寿命化修繕計画に新技術活用に関する具体的な数値目標を記載した自治体を優先的に支援する仕組みがあります。これと連動させることで、国の財源も最大限活用し、効果を高めることができます。
      • (出典)国土交通省「道路メンテナンス事業補助制度」2023年 25
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 定期点検1回あたりの平均コストを30%削減する。
      • データ取得方法: 各区の点検業務委託契約における、橋梁ごとの点検単価の実績集計と経年比較。
  • KSI(成功要因指標)
    • 新技術(ドローン、AI等)を活用した点検の実施橋梁割合:50%(5年以内)。
      • データ取得方法: 点検業務の特記仕様書および完了報告書における、適用技術の全件確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 点検業務における作業員の労働災害発生率:ゼロを維持。
      • データ取得方法: 労働安全衛生法に基づく事故報告(死傷病報告)の有無。
    • 点検調書(損傷図等)作成の自動化率:80%。
      • データ取得方法: AI画像解析システムの処理実績ログデータと、手動修正作業時間の比較分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特別区新技術導入補助制度の創設と年間予算執行額。
      • データ取得方法: 予算編成資料および決算統計における補助金執行実績。
    • 新技術活用に関する職員・事業者向け研修会の年間実施回数と参加者数。
      • データ取得方法: 研修実施記録および参加者名簿。

支援策③:持続可能な維持管理体制の構築と人材育成

目的
  • 技術職員の専門性向上と円滑な技術継承を促進し、公民の連携を強化することで、中長期的・安定的にインフラ維持管理を担うことができる体制を構築します。
  • これにより、支援策①のDX基盤や支援策②の新技術を最大限に活用できる人的資本を確保し、技術と人材の両面から持続可能なメンテナンスサイクルを実現します。
    • 客観的根拠:
      • 特別区では技術職員の不足と技術継承が深刻な課題であると同時に、維持管理工事の担い手不足という都心部特有の市場の問題も存在します。これらは技術導入だけでは解決できない構造的な問題であり、人への投資と制度改革が不可欠です。
      • (出典)土木学会「東京都特別区橋梁維持管理マネジメント」2019年 6
主な取組①:「特別区インフラ技術支援センター(仮称)」の設立
  • 23区が共同で、橋梁・トンネル等の維持管理に関する高度な専門知識を持つ技術士や退職したOB職員、外部の学識経験者等を擁する常設の技術支援センターを設立します。
  • 本センターは、各区の若手職員からの技術的な相談対応、難易度の高い損傷原因の究明や補修工法の選定に関する助言、導入を検討している新技術の評価・選定支援など、区単独では対応が難しい高度な業務を専門的見地からサポートします。
主な取組②:公民連携による実践的研修プログラムの実施
  • 建設コンサルタントや補修専門工事業者、大学等の研究機関と連携し、座学だけでなく、実際の点検・補修現場でのOJT(On-the-Job Training)や実習を豊富に含む実践的な研修プログラムを開発・実施します。
  • 支援策①のデータベースや支援策②の新技術(ドローン操縦、AI解析ソフト、BIM/CIM等)を実際に操作する研修もカリキュラムに組み込み、職員のデジタルスキルを体系的に向上させます。
主な取組③:維持管理工事における新たな発注方式の導入
  • 都心部特有の担い手不足に対応するため、単年度・個別工事ごとの発注だけでなく、複数年にわたるエリア単位での包括的な維持管理業務委託や、価格だけでなく技術提案の内容を総合的に評価する「総合評価落札方式」を積極的に導入します。
  • これにより、事業者の安定的な受注と収益を確保し、技術力のある業者が適正に評価される市場環境を整えることで、インフラ維持管理分野への優良な事業者の参入を促します。
    • 客観的根拠:
      • 国の「社会資本整備重点計画」では、PPP/PFI(公民連携)の積極活用が掲げられており、民間の経営能力や技術力を最大限に活用する発想が求められています。包括委託もその一環と位置づけられます。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」2021年 16
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特別区土木技術職員の定着率を10%向上させる(若手・中堅層の離職率を指標とする)。
      • データ取得方法: 各区人事部門が管理する職員の勤続年数および離職率データの経年分析。
  • KSI(成功要因指標)
    • 維持管理関連工事における入札不調・不落率:5%以下に低減。
      • データ取得方法: 各区契約管財部門が管理する入札結果データの全件分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員一人当たりの担当橋梁数に対する業務負担感の5段階評価スコアを1ポイント改善。
      • データ取得方法: 全土木技術職員を対象とした無記名アンケート調査(年1回実施)。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特別区インフラ技術支援センターの設立と年間相談・支援対応件数。
      • データ取得方法: センターの業務日報および年次活動実績報告書。
    • 公民連携研修の年間実施回数と参加職員の満足度(5段階評価で平均4.0以上)。
      • データ取得方法: 研修実施記録および研修後の参加者アンケート。

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区・葛飾区「センサー車両による道路下空洞調査」

  • 高解像度の路面撮影カメラと、地中レーダー(路面下空洞調査センサー)を搭載した専用の調査車両を活用し、道路の走行と同時に「路面のひび割れ状態」と「路面下の空洞の有無」を効率的に調査する取り組みです。
  • 成功要因・効果
    • 従来の調査手法(目視やハンディタイプのレーダー)に比べ、交通規制を最小限に抑えつつ、広範囲を迅速に点検できる点が最大の強みです。
    • 取得した点検データをGIS(地理情報システム)上で統合管理することで、道路陥没のリスクが高い箇所を効率的に特定し、予防的な修繕につなげることで、市民の安全確保に貢献しています。
    • 客観的根拠:

品川区「データに基づく橋梁長寿命化計画の策定」

  • 区が管理する全66橋について、建設年次、橋種、部材ごとの健全性診断結果などの基礎データを詳細に分析し、将来の高齢化の進行度合いを定量的に予測しています。
  • 成功要因・効果
    • 「20年後の2043年には管理橋梁の56%が築50年を超える」といった具体的な将来予測に基づき、ライフサイクルコストを最小化するための予防保全型の修繕計画を策定しています。
    • データに基づいた客観的な計画は、議会や住民への説明責任を果たしやすく、予算要求時における説得力を高めることで、計画的な財政運営に大きく貢献しています。
    • 客観的根拠:
      • 品川区が公表している「橋梁長寿命化修繕計画」では、詳細なデータ分析に基づき、対策の優先順位付けを行っており、健全性II(予防保全段階)の橋梁が39%存在することなどを明確に示しています。
      • (出典)品川区「品川区橋梁長寿命化修繕計画」2023年 12

東京都建設局「BIM/CIM一気通貫モデルの試行」

  • 設計段階から3次元のBIM/CIMデータを作成し、それを施工、さらには将来の維持管理まで、事業プロセス全体で一貫して活用する「一気通貫型モデル」の試行を推進しています。
  • 成功要因・効果
    • 3次元モデルを関係者間で共有することで、図面だけでは分かりにくい構造物の取り合いや干渉箇所を事前に可視化でき、合意形成の迅速化や施工段階での手戻りを大幅に削減します。
    • 将来的には、この竣工時のBIM/CIMデータが維持管理段階のデータベースの中核となり、現実の施設と仮想空間のモデルが連動する「デジタルツイン」を実現する基盤となります。
    • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

山口県「インフラ総合管理データベース」

  • 農業用ため池や水路といった農業農村インフラの情報を、GISを核とした「インフラ総合管理データベース」で一元化。県、市町、土地改良区、施設管理者といった多様な関係者が、スマートフォンアプリから現地の状況を写真付きでリアルタイムに報告・共有できる仕組みを構築しました。
  • 成功要因・効果

NEXCO・自治体等「ドローン・AI活用による点検コストの大幅削減」

  • 橋梁点検において、ドローンで撮影した高精細な画像をAIが解析し、コンクリートのひび割れや鋼部材の錆といった損傷を自動で検出・評価する技術が、全国の多くの現場で導入されています。
  • 成功要因・効果
    • 従来の橋梁点検車や足場、ロープアクセスによる点検手法と比較して、点検コストを50%〜60%以上削減し、点検に要する期間も大幅に短縮できます。
    • 作業員が高所や危険な場所に立ち入る必要がなくなるため、安全性が飛躍的に向上します。
    • 大規模な交通規制を伴わないため、道路利用者への影響も最小限に抑えることが可能です。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省が公表した事例では、橋梁点検車で約198万円、ロープアクセスで約85万円かかっていた点検が、ドローンでは約50万円で実施可能となり、大幅なコスト削減効果が実証されています。
      • (出典)ソフトバンク株式会社「ビジネスブログ ドローン点検とは」2022年 27
      • ある建設コンサルタントの事例では、従来3日かけていた橋梁調査が、ドローン活用により実質1日相当に短縮できたと報告されています。
      • (出典)(https://kddi.smartdrone.co.jp/case/009/) 32

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区が直面する道路・橋梁インフラの急速な老朽化は、もはや将来の課題ではなく、対策が待ったなしの喫緊の課題です。本提案の中核である、23区統一の「インフラ維持管理DX基盤」の構築は、この複合的危機に対する最も効果的な処方箋です。このデータベースを土台として、ドローンやAI等の新技術活用による点検の高度化、そして持続可能な人的体制の構築を三位一体で推進することで、従来の対症療法的な管理から、データ駆動型の戦略的な予防保全へと抜本的な転換を図ることができます。これにより、住民の安全を恒久的に確保しつつ、将来世代への負担となるライフサイクルコストを大幅に削減することが可能となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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