04 東京都

【東京都】少子化への対処に関する要望

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

エグゼクティブサマリー

 2026年6月18日、東京都は国に対し「少子化への対処に関する要望」を実施しました。要望は、こども政策・少子化対策担当大臣、及び経済財政政策・全世代型社会保障改革担当大臣を宛先とし、人口戦略を含めた国家ビジョンの提示から、出会い・結婚、妊娠・出産、子育て・教育、住宅、就労環境に至るライフステージ横断の制度設計、さらに国の方策が講じられるまでの地方自治体への財政支援までを求める、包括的な内容となっています。

 背景には、想定をはるかに超える速度で進行する少子化があります。2025年の出生数は67万1236人となり、前年から1万4937人(約2.2%)減少して、1899年の統計開始以降の最少を10年連続で更新しました。10年前の2015年(約100万6千人)と比べると、わずか10年で約3割が失われた計算になります。合計特殊出生率も1.14と過去最低を更新し、人口置換水準とされる2.06から2.07には遠く及びません。専門機関が2023年に示した将来推計と比較すると、出生数の減少は中位推計の想定よりおおむね15年前倒しで進んでいるとされ、現実は悲観的なシナリオに近づいています。

 一方で、東京都の2025年の出生数(日本人)は8万5064人と前年から857人増え、10年ぶりに増加へ転じました。合計特殊出生率も0.96で前年と同水準となり、長く続いた低下傾向にいったん歯止めがかかった可能性があります。ただし都の出生率は依然として全国最低であり、若年層の大幅な人口減少局面が2030年代に控えていることを踏まえれば、楽観できる状況ではありません。本要望は、こうした統計的な転換点とも見える局面で、国家的視点による更なる大胆な政策と、それが実現するまでの地方への切れ目ない財政支援を求めるものであり、特別区の子育て支援行政にとっても示唆の多い内容と考えられます。

本要望の意義

「地方からの政策提起」という構図の意味

 本要望の第一の意義は、少子化という国家的課題に対し、最前線で支援を担う自治体の側から制度設計の方向性を具体的に提起している点にあります。少子化対策は、児童手当のような全国一律の現金給付から、保育・教育・住宅・就労環境の整備まで、国と地方が役割を分担して進める領域です。要望は、現場で生じている制度の隙間や負担の偏りを、対象世帯・対象費目のレベルまで踏み込んで指摘しており、抽象的な理念ではなく実装可能な政策メニューとして整理されている点に特徴があります。

ライフステージ横断の「切れ目ない支援」という設計思想

 第二に、要望が「出会い・結婚」「妊娠・出産」「子育て・教育」「住宅」「育児と仕事の両立」という五つの局面を貫く一貫した支援を求めている点です。少子化は、単一の施策で反転させられる現象ではなく、結婚に踏み出せない、子を持つ経済的見通しが立たない、育児と仕事の両立が難しいといった複数の要因が連鎖して生じていると考えられます。各局面の支援が分断されていれば、ある段階で支援を受けた世帯が次の段階で支援の空白に直面し、効果が減衰する可能性があります。ライフステージを通じた連続性を国家的視点で確保すべきだという主張は、政策の費用対効果という観点からも合理性を持ちうる考え方です。

「国の方策が講じられるまでの財政支援」という時間軸の論点

 第三に、要望が制度の最終形だけでなく、それが実現するまでの「つなぎ」の財政支援を明示的に求めている点は注目に値します。制度改正には法整備や財源確保の調整に時間を要しますが、少子化は一刻の猶予もない局面に入っているとされます。先進的に取り組む自治体が独自財源で支援を先行させた結果、自治体間の格差が固定化したり、財政力の弱い団体が取組を断念したりすれば、「居住する地域に関わらず明るい将来展望を描ける」という要望の理念と矛盾します。制度化までの空白期間を国が財政的に下支えするという論点は、地方財政の持続可能性という観点からも重要な意味を持つと考えられます。

これまでの歴史と経過

少子化対策の系譜:理念先行から給付拡充へ

 日本の少子化対策は、1990年のいわゆる「1.57ショック」を契機に本格化しました。合計特殊出生率が、それまで最低とされた数値を下回ったことが社会的な衝撃を呼び、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、次世代育成支援対策推進法など、保育サービスの拡充と仕事と育児の両立支援を中心とする施策が積み重ねられてきました。その後も子ども・子育て支援新制度の施行(2015年度)などを経て、保育の受け皿整備が政策の中心に据えられてきた経緯があります。

近年の制度拡充:現金給付と無償化の広がり

 ここ数年で、国の施策は給付と無償化の方向へ大きく舵を切りました。出産育児一時金は、それまでの42万円から2023年4月に50万円へ引き上げられ、出産費用の負担軽減が図られました。不妊治療は、2022年4月から人工授精などの一般不妊治療と、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療が公的医療保険の対象となり、原則3割負担で受けられるようになりました。児童手当は、所得制限の撤廃、支給対象の高校生年代までの延長、多子世帯への増額などの拡充が行われ、給付の普遍性が高まりました。あわせて高等学校等の授業料無償化、学校給食費の負担軽減、卵子凍結や無痛分娩に関する取組なども進められてきました。本要望は、こうした拡充の流れを踏まえつつ、なお残る負担や制度の谷間を埋める「更なる大胆な政策」を求めるものと位置づけられます。

2025年:統計が示した転換と危機の同時進行

 直近の局面は、相反する二つの兆候が同時に現れた点に特徴があります。全国の出生数が過去最少を更新し、少子化の加速が改めて確認された一方で、東京都の出生数は10年ぶりに増加へ転じ、都の合計特殊出生率も横ばいとなりました。婚姻件数も全国で2年連続の微増となり、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ結婚が回復に向かう動きも見られます。要望は、こうした「危機の深化」と「わずかな改善の兆し」が交錯する時点で行われており、改善の芽を確かなものにするためにこそ国家的な制度設計が必要だという問題意識が背景にあると考えられます。

2025年6月の政府方針との接続

 国の側でも、2025年6月13日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針において、2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進めること、安全で質の高い無痛分娩を選択できる環境を整備すること、卵子凍結に関する知見の収集や知識の普及を行うことが示されています。本要望は、こうした政府方針の具体化にあたり、妊婦の経済的負担の軽減だけでなく、地域の周産期医療提供体制の確保という観点も十分に踏まえた制度設計を、国の責任と財源で行うよう求めており、政府方針と地方の実情をつなぐ役割を担う内容となっています。

現状データが示す少子化の実像

全国:出生数と出生率の長期低落

出生数の推移

 出生数の長期的な推移は、少子化の深刻さを端的に示します。第1次ベビーブーム期(1947年から1949年)には約250万人、第2次ベビーブーム期(1971年から1974年)には約200万人を数えた出生数は、その後一貫して減少してきました。2015年に約100万6千人であった出生数は、2022年に初めて80万人を割り込み、2024年に70万人を下回り、2025年には67万1236人(前年比約2.2%減)となりました。直近10年でおよそ3割が失われた計算であり、減少のペースは依然として高い水準にあります。

合計特殊出生率の推移

 合計特殊出生率は、終戦直後には4.0を超えていましたが、1975年に2.0を割り込み、2015年の1.45から低下を続けて、2025年には1.14と過去最低を更新しました。低下は10年連続です。人口を長期的に維持するために必要とされる水準は2.06から2.07とされており、現状はその半分強にとどまっています。

推計との乖離が示す「前倒し」

 特に重視すべきは、現実が将来推計を上回る速度で進行している点です。2023年に示された将来推計の中位シナリオでは、2025年の出生率は1.25程度、出生数が67万人台に達するのは2040年頃と想定されていました。しかし現実の出生率は悲観的なシナリオが見込んだ1.10前後に近づき、出生数も想定よりおおむね15年早く67万人台に到達したことになります。要望が「国の将来推計より約15年前倒しで進行」と指摘し、実態に即した将来推計人口の提示を求めている根拠は、ここにあると考えられます。

自然減と社会構造への波及

 出生数の減少は、人口の自然減を加速させています。2025年の死亡数は約158万9千人で、出生数との差である自然減は約91万8千人に達しました。自然減は19年連続で、減少幅は2年連続で90万人を超え、2018年の約44万人と比べると約2倍に拡大しています。第1子出産時の母の平均年齢は、2023年以降3年連続で31.0歳となり、晩産化の傾向も続いています。出生数の減少は、将来の労働力人口の縮小や社会保障機能の低下につながる可能性があり、要望が経済成長政策や持続可能な社会保障制度の構築を求める背景となっています。

東京都:全国最低の出生率と10年ぶりの増加

出生数の反転とその不確実性

 東京都の2025年の出生数(日本人)は8万5064人で、前年から857人増加し、10年ぶりに増加へ転じました。合計特殊出生率は0.96で前年と同水準となり、長く続いた低下傾向にいったん歯止めがかかった可能性があります。もっとも、都の出生率は依然として全国で最も低い水準にあり、改善が一時的なものか、構造的な転換の始まりかは、現時点では判断が難しい状況です。

増加の背景をめぐる複数の見方

 出生数増加の背景については、出産期にあたる年齢層の都内定着、婚姻件数の回復、一連の子育て支援策の影響など、複数の要因が指摘されています。都には若年層の転入超過が続いており、住民移動の統計では、転入超過が20歳から24歳でおよそ5万7千人、25歳から29歳でおよそ2万人に上るとされます。こうした人口流入と支援策のいずれが、あるいはどの程度それぞれが寄与したのかを厳密に切り分けることは難しく、増加要因の特定には慎重な分析が必要と考えられます。都の子育て支援関連の予算は、2026年度予算案で2.2兆円規模に及ぶとされ、税収を集中的に振り向けてきた経緯があります。

個別分野:数字で見る政策課題

不妊治療:利用の裾野拡大と残る負担

 不妊治療の保険適用は、利用の裾野を大きく広げたとされます。保険適用初年度(2022年度)に保険診療で不妊治療を受けた実患者数は累計で約37万4千人に上り、このうち体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を受けた人が約27万人(約72%)を占めました。関連する医療費は約895億円とされます。体外受精や顕微授精によって生まれる子どもは年間6万人を超えるとされ、出生数全体の約1割に迫っているとの見方もあります。一方で、体外受精の1周期あたりの費用は平均で約50万円とされ、保険対象の診療と先進医療を組み合わせて受けた場合、平均的な年収の世帯でも高額療養費の支給後になお相当額の自己負担が残るケースがあります。要望が、保険対象診療と先進医療の自己負担分について、国の責任と財源での軽減を求めている背景には、こうした負担の実態があると考えられます。

保育:待機児童の「ほぼ解消」と次の課題

 保育の受け皿整備は、待機児童数の大幅な減少という成果を生みました。待機児童数は、ピークであった2017年の2万6081人から減少を続け、2024年には2567人と、7年連続で減少し、ピークのおおむね10分の1以下となりました。一方で、保育所等の利用率はなお上昇しており、2025年には全体で55.7%(前年は54.1%)、1歳から2歳児では60.9%に達するとされ、女性就業率の上昇(2024年で約82%)を背景に保育需要は底堅く推移しています。要望が、待機児童が「ほぼ解消」した現在においてこそ、0歳から2歳児までの保育料無償化を所得にかかわらず実現すべきだと主張する論拠は、待機児童解消という従来の優先課題が一定の到達点に達したという認識にあると考えられます。

就労環境:男性育休取得率の上昇

 育児と仕事の両立に関わる指標も変化しています。男性の育児休業取得率は、かつて数%にとどまっていましたが、近年で大きく上昇し、2024年度には40%台に達したとされます。女性の取得率は80%台で推移しており、男女差はなお大きいものの、産後パパ育休や個別の制度周知・意向確認の義務化、給付の拡充などを背景に、男性の取得が定着しつつある可能性があります。要望が、所定労働時間の短縮措置などを小学校就学後も利用できるよう法整備を求めているのは、育休取得の入口だけでなく、その後の柔軟な働き方の継続を課題と捉えているためと考えられます。

政策立案の示唆

この取組を行政が行う理由

将来推計の前提が崩れたことへの対応

 行政が改めて国家ビジョンと実態に即した将来推計を求める理由は、政策の前提となる人口の見通しが現実に追い越されている点にあります。社会保障の給付と負担、労働力の供給、インフラや施設の需要は、いずれも将来人口を前提に設計されます。推計が約15年分の余裕を見込んでいたところに、その余裕が失われているとすれば、年金・医療・介護を含む社会保障制度や、地域のサービス供給体制の前提そのものを早期に組み直す必要があると考えられます。要望が経済成長政策と持続可能な社会保障の同時構築を求めるのは、少子化を出生の問題に閉じず、経済と社会保障の構造問題として捉えているためと整理できます。

負担の「谷間」を埋める必要性

 既存の支援には、対象世帯や費目によって負担が残る「谷間」が存在します。0歳から2歳児の保育料は、住民税課税世帯では子の数や年齢によって自己負担が生じる仕組みであり、不妊治療では先進医療部分が自己負担として残り、子どもの医療費助成は自治体ごとに対象年齢や負担割合が異なります。こうした谷間は、支援の連続性を損ない、世帯の選択を歪める可能性があります。行政が制度の標準化と谷間の解消を国に求めるのは、支援の実効性を高めるための合理的な動機と考えられます。

行政側の意図

自治体間格差の是正と財政の持続可能性

 行政側の意図の核心は、財政力に左右されない全国共通の基盤を国に整備させ、自治体独自の上乗せに頼る構造から脱却することにあると考えられます。子どもの医療費助成や授業料支援などは、これまで自治体が独自財源で先行してきた経緯がありますが、財政力の差がそのまま支援水準の差として子育て世帯に及ぶ状況は、居住地による格差を生みます。要望が、無償化の対象とならない生徒等への都道府県独自支援に対する財政的支援や、地方自治体の財政負担を軽減する制度設計を繰り返し求めているのは、こうした格差を是正しつつ、地方財政の持続可能性を確保しようとする意図の表れと考えられます。

「気運の醸成」から「環境整備」への重心移動

 もう一つの意図は、結婚や出産を個人の意識の問題に帰すのではなく、選択を可能にする環境の整備に政策の重心を移すことにあると考えられます。結婚相手紹介サービスの安心安全な利用環境づくり、出会い・結婚支援への交付金の補助基準額や補助率の引き上げ、無痛分娩を選択できる環境の整備、アフォーダブル住宅の供給拡大などは、いずれも個人の選択肢を広げる環境整備に分類できます。気運醸成にとどまらず、選択の障壁を制度的に下げることが、効果につながりやすいという認識がうかがえます。

期待される効果

負担軽減を通じた選択の後押し

 保育料無償化の完全実施、不妊治療の自己負担軽減、出産費用の無償化、医療費助成の拡充などが実現すれば、子を持つことに伴う経済的負担が下がり、出産・育児の選択を後押しする効果が期待されます。不妊治療の保険適用後に利用が拡大したとされる事実は、経済的負担の軽減が当事者の行動に影響しうることを示唆しています。ただし、これらの施策が出生数の回復にどの程度結びつくかは、晩婚化や有配偶出生率の動向など他の要因にも左右されるため、効果の発現には一定の幅があると考えられます。

両立支援を通じた就労継続と機会費用の低減

 学童クラブの整備や運営水準の向上、育児期の柔軟な働き方を実現する法整備、中小企業の働き方改革支援などが進めば、子育てに伴う離職や就労抑制という機会費用が下がり、共働き世帯が働き続けながら子を育てやすくなる効果が期待されます。男性育休取得率が上昇してきた経緯は、制度と周知が行動を変えうることを示すものと考えられます。

住宅費の抑制を通じた都市部での子育て可能性の拡大

 アフォーダブル住宅の供給拡大は、住宅費の重さが子育て世帯の都市部での定着を妨げているとすれば、その障壁を下げる効果が期待されます。公的住宅の活用や金融支援を通じて、手頃な価格の住まいが確保されれば、特に住宅費の高い大都市で子を持つ選択がしやすくなる可能性があります。

課題・次のステップ

財源の確保と給付の優先順位

 最大の課題は、安定財源の確保です。無償化や給付拡充は恒久的な財政支出を伴い、現役世代の負担を抑制しながら持続可能性を保つには、給付の優先順位や費用対効果の検証が欠かせません。すべての施策を同時に最大限実施することは現実的でない可能性があり、どの局面の支援が出生や就労継続に効果的かというエビデンスに基づく重点化が、次のステップとして求められると考えられます。

供給体制の確保という「無償化の次」の論点

 無償化や負担軽減は需要側の施策であり、それを支える供給体制の確保が伴わなければ、サービスの質や提供量に歪みが生じる可能性があります。出産費用の無償化に際して周産期医療提供体制の確保が論点となるように、保育・学童・医療の各分野で、担い手の処遇改善や人材確保が並行して進められる必要があります。要望が学童クラブの運営費の充実や放課後児童支援員の処遇改善に言及しているのは、この点を踏まえたものと考えられます。

効果検証の枠組みの整備

 今後の政策運営では、施策ごとの効果を検証する枠組みの整備が課題となります。出生数や出生率は多くの要因が絡む指標であり、単一施策の効果を抽出することは容易ではありません。利用者数の推移、就労継続率、世帯の負担額の変化といった中間的な指標を用いて、施策の効果を継続的に把握する仕組みが、限られた財源を有効に配分するうえで重要になると考えられます。

特別区への示唆

「全国最低の出生率」を抱える現場としての当事者性

 特別区は、全国で最も出生率が低い東京都の中核を成し、本要望が掲げる課題の縮図とも言える地域です。若年層の転入超過が続く一方で出生率は低く、住宅費は高く、保育や学童の需要は地域差が大きいという構造を抱えています。要望が求める制度拡充の多くは、最終的に区が実施主体となって現場で運用するものであり、特別区は政策の受け手であると同時に、制度設計の成否を左右する担い手でもあります。国の制度化を待つ姿勢ではなく、制度が整った際に速やかに実装できる準備を進めておくことが、現場としての当事者性に見合った対応と考えられます。

保育から学童へ移る需要のピークへの備え

 待機児童が「ほぼ解消」へ向かう一方で、保育を利用してきた世帯の子が就学期を迎えることで、需要の重心が学童クラブへ移る局面が想定されます。要望が学童クラブの整備・賃借料の補助基準額の引き上げ、利用調整や送迎支援、時間延長への対応、支援員の処遇改善を求めているのは、この需要の移動を見据えたものと考えられます。特別区においては、保育の受け皿で得た知見を学童の運営水準の確保に活かし、地域ごとの需要の偏りに応じた配置を検討しておくことが、待機の発生を抑えるうえで有効と考えられます。

独自支援と国制度の整合をめぐる財政運営

 特別区の多くは、子どもの医療費助成や教育費支援などで国の制度に独自の上乗せを行ってきた経緯があります。国の無償化や給付拡充が進めば、区の独自支援と国制度の間で重複や逆転が生じる可能性があり、限られた一般財源をどの分野に再配分するかという判断が求められます。要望が地方自治体の財政負担を軽減する制度設計を求めていることを踏まえれば、国制度の動向を注視しつつ、独自支援の位置づけを段階的に見直す財政運営が、特別区にとって現実的な選択肢になりうると考えられます。あわせて、特別区財政調整制度を通じた財源配分の動向も、各区の子育て支援の余力を左右する要素として留意する必要があると考えられます。

住宅施策との連携による定住促進

 住宅費の高さは、特別区で子を持つ世帯が直面する大きな障壁の一つと考えられます。要望が掲げるアフォーダブル住宅の供給拡大は、公的住宅の活用や金融支援を前提とするものであり、区の住宅施策やまちづくりと連動させることで、子育て世帯の定住促進につながる可能性があります。出会い・結婚支援から住宅、就労環境までを区の施策として束ね、ライフステージを通じて支える体制を地域単位で構築することが、出生率の改善という長期的な目標に向けた現実的な道筋になりうると考えられます。

まとめ

 2026年6月18日に東京都が国へ実施した「少子化への対処に関する要望」は、想定を大きく上回る速度で進む少子化に対し、人口戦略を含む国家ビジョンの提示と、ライフステージを横断する切れ目ない支援、そして制度化までの地方への財政支援を求める包括的な内容でした。2025年の全国の出生数は67万1236人と過去最少を10年連続で更新し、合計特殊出生率も1.14と過去最低となる一方、東京都の出生数は10年ぶりに増加へ転じ、出生率も横ばいとなりました。危機の深化とわずかな改善の兆しが同時に現れたこの局面で、改善の芽を確かなものにするために国家的な制度設計が必要だという問題意識が、要望の背景にあると考えられます。

 要望が示す政策の方向性は、結婚や出産を個人の意識に帰すのではなく、選択を可能にする環境を制度的に整えることに重心を置いており、保育料の完全無償化、不妊治療や出産費用の負担軽減、学童クラブや両立支援の拡充、アフォーダブル住宅の供給など、需要側と供給側の双方にまたがる施策群として整理できます。その実現には、安定財源の確保、供給体制の整備、効果検証の枠組みづくりという課題が伴い、すべてを同時に最大化することは難しい可能性があるため、エビデンスに基づく重点化が問われることになると考えられます。

 全国で最も出生率の低い東京都の中核を担う特別区にとって、これらの論点は他人事ではありません。保育から学童へ移る需要のピークへの備え、国制度の拡充に伴う独自支援の見直しと財政運営、住宅施策との連携による定住促進など、制度が整った際に速やかに実装できる準備を地域単位で進めておくことが、当事者としての特別区に求められる対応になりうると考えられます。少子化の流れを反転させられるかは、国の制度設計と地方の実装力がどれだけ噛み合うかにかかっており、本件はその接点を改めて可視化した要望であったと位置づけられます。


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