04 東京都

【東京都】令和7年度公金管理実績(年間及び第4四半期)

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

エグゼクティブサマリー

 東京都会計管理局は、令和7年度(年間及び第4四半期)の公金管理実績を公表しました。最大の特徴は、公金全体の運用収入が前年度の73億8,262万円から300億961万円へと約4倍に拡大し、公金管理実績の公表を開始した平成14年度以降で最高額を記録した点にあります。利回りも前年度の0.115%から0.494%へと0.379ポイント上昇しており、平均残高がむしろ前年度比で3,398億円減少したにもかかわらず、運用収入が4倍に伸びたという構図は、今回の実績が「資金量の増加」ではなく「運用効率の劇的な改善」によってもたらされたことを明確に示しています。

 この変化の背景には、日本の金融政策が長期にわたるマイナス金利・ゼロ金利の局面から脱し、政策金利が段階的に引き上げられてきたという、いわゆる金利正常化の進展があると考えられます。日本銀行は令和6年(2024年)3月にマイナス金利政策を解除した後、段階的に利上げを進め、令和7年12月には政策金利を0.75%へと引き上げました。これは約30年ぶりの水準とされています。長くマイナス金利下で「運用しても収益が生まれにくい」環境に置かれていた自治体資金が、金利という外部環境の変化を背景に、再び収益を生む資産へと性格を変えつつあることを、今回の実績は象徴的に示しているものと考えられます。

 もっとも、外部環境の変化だけが収益拡大の要因ではありません。東京都は、債券運用の割合を高め、定期性預金の引合い(複数の金融機関から金利条件を募って比較する手続き)を積極的に行い、歳計現金についても資金繰りをきめ細かく管理して運用可能資金そのものを生み出すなど、効率性を重視した能動的な運用に踏み出しています。さらに、全国の道府県に先駆けて「公金管理実績ダッシュボード」を公開し、平均残高・利回り・運用収入の複数年度推移を可視化するなど、運用の透明性とアカウンタビリティを高める取組も同時に進めています。

 以下では、公金管理という地味でありながら自治体財政の基盤を支える業務の意義、その制度的経緯、令和7年度実績の詳細なデータ、そしてこの取組が示す政策立案上の示唆を、特別区への含意を含めて整理します。金利のある世界への移行は、東京都のみならず、財政調整基金をはじめとする多額の基金を保有する特別区にとっても、資金運用のあり方を根本から問い直す論点を提起していると考えられます。

公金管理という業務の意義

「最も確実かつ有利な方法」という法的要請

 公金の管理は、地方自治法等に基づき、最も確実かつ有利な方法で行うこととされています。この「確実かつ有利」という表現は、一見すると平凡な行政用語に見えますが、資金運用の本質的な緊張関係を凝縮した重要な規範です。すなわち、公金は住民から預かった税を原資とする以上、元本を毀損するような投機的運用は許されない一方で、過度に保守的な運用に終始して本来得られたはずの収益を逸失することもまた、住民の利益に反する可能性があるという、二つの要請の間で最適点を探ることが求められているのです。

 東京都は、この法的要請を具体化するものとして「東京都公金管理ポリシー」を定め、安全性・流動性を確保した上で、金融環境の変化に応じた柔軟かつ効率的な運用を行うとしています。安全性・流動性・効率性という三つの軸をどのように組み合わせるかは、その時々の金利環境に大きく左右されます。金利がほぼゼロであった局面では、安全性と流動性を最優先し、効率性(収益性)はほとんど追求しようがない状況が長く続きました。しかし金利が上昇する局面では、安全性・流動性を損なわない範囲で効率性を高める余地が生まれます。今回の実績は、まさにこの「効率性を取りに行ける環境」への転換を捉えた成果であると位置づけられます。

公金管理が自治体財政に持つ二つの意味

 公金管理の意義は、単に運用収入という歳入を確保することにとどまりません。第一に、運用収入は、税収のように景気変動や政策判断に直接左右されない、相対的に安定した自主財源としての性格を持ちます。300億円という運用収入は、東京都の歳出規模からみれば一部分にとどまりますが、特定の事業の財源として、あるいは基金の自己増殖的な積み増しの原資として、無視できない規模です。

 第二に、より本質的な意味として、公金管理は自治体の資金繰りそのものを支える基盤業務です。歳計現金は日々の支払いに充てる手元資金であり、基金は将来の特定目的のために積み立てた資金です。これらをいつ・どの程度・どのような形態で保有するかは、自治体の支払能力の確実性に直結します。運用収入の最大化は、あくまで安全性と流動性という土台の上に乗る目標であり、この優先順位を取り違えないことが、公金管理の鉄則であると考えられます。

歴史・経過:マイナス金利の谷を越えて

運用収入の長期推移が描く「U字」

 今回の実績を歴史的な文脈に置くと、その意味がより鮮明になります。公金全体の運用収入の推移をみると、平成14年度の公表開始以降、平成20年度に275億円というピークを記録した後、長期にわたって低下し続けてきました。リーマン・ショック後の金融緩和、そして平成28年(2016年)に導入されたマイナス金利政策の下で、運用収入は数十億円規模、年度によっては数十億円を大きく下回る水準まで落ち込みました。

 この長い低迷期を経て、令和6年度に約74億円へと回復の兆しをみせ、令和7年度には300億円へと一気に跳ね上がりました。長期推移はちょうどアルファベットの「U」を描くような軌跡を示しており、令和7年度の300億円は、過去のピークであった平成20年度の275億円をも上回る、公表開始以降の最高額となります。つまり今回の実績は、単なる前年度比の改善ではなく、約20年来の最高水準への到達という、長期トレンドの転換点として理解すべきものと考えられます。

内訳ごとの推移がたどった道筋

 内訳をみても同様の傾向が確認できます。基金の運用収入は、平成20年度に214億円のピークを記録した後に低下し、令和7年度には210億円と、ピークに迫る水準まで回復しました。歳計現金等の運用収入は、過去のピークが30億円程度であったのに対し、令和7年度には57億円と、内訳ベースでも公表開始以降の最高を記録しています。歳計現金は本来、日々の支払いに備える流動性の高い資金であり、その性格上、運用による収益を大きく期待できる資金ではありません。それにもかかわらず過去最高の収益を生み出したことは、資金繰り管理の精緻化によって「運用に回せる時間と資金」を捻出した工夫の成果である可能性が高いと考えられます。

金融政策の正常化という外部環境

 これらの推移の背景にあるのが、日本銀行による金融政策の正常化です。日本銀行は令和6年(2024年)3月にマイナス金利政策を解除し、その後、段階的に政策金利を引き上げてきました。報道等によれば、政策金利は令和7年(2025年)中に0.5%へ、さらに令和7年12月には0.75%へと引き上げられ、約30年ぶりの高水準に達したとされています。金利が上昇する局面では、新たに組成する定期性預金や新規に購入する債券の利回りが切り上がるため、運用資金を抱える主体ほど収益機会が拡大します。令和7年度の四半期ごとの利回りが、第1四半期0.338%、第2四半期0.465%、第3四半期0.546%、第4四半期0.621%と、年度を通じて一貫して上昇していった事実は、この金利上昇の進行を運用利回りが時間差で捉えていった過程を映し出しているものと考えられます。

現状データ:令和7年度実績の詳細

公金全体:平均残高は減少、収益は4倍という逆説

 令和7年度の公金全体の平均残高は6兆800億円で、前年度の6兆4,198億円から3,398億円減少しました。一方で利回りは0.115%から0.494%へと0.379ポイント上昇し、運用収入は73億8,262万円から300億961万円へと226億2,699万円増加しました。資金量が減少したにもかかわらず収益が約4倍に拡大したという事実は、今回の成果が運用効率の改善に由来することを最も端的に物語っています。

 四半期別にみると、運用収入は第1四半期49億3,190万円、第2四半期74億2,849万円、第3四半期81億6,120万円、第4四半期94億8,803万円と、四半期を追うごとに着実に積み上がりました。第4四半期の単独の運用収入が、前年度1年間の運用収入73億8,262万円を上回っている点は、年度後半にかけて収益力が急速に高まったことを示す象徴的な数字です。

歳計現金等:資金繰り管理の精緻化が生んだ最高益

 歳計現金等の平均残高は1兆6,354億円で、年間を通じた大口支出の増加等により、前年度の1兆7,681億円から1,327億円減少しました。それにもかかわらず、利回りは0.088%から0.347%へと0.259ポイント上昇し、前年度比で約4倍となりました。運用収入は15億6,463万円から56億8,181万円へと41億1,718万円増加し、利回り・運用収入ともに公表開始以降の最高となりました。

 歳計現金は支払いに備える手元資金であるため、運用に回せる余地は本来限られています。それでも過去最高の収益を実現できた要因として、東京都は資金管理をきめ細かに行うことで運用可能資金を生み出し、定期性預金を積極的に活用したと説明しています。これは、漫然と普通預金に置いていた資金を、支払いスケジュールを精緻に見通すことで短期の定期性預金に振り向ける、といった地道な実務改善の積み重ねが、金利上昇という追い風と組み合わさって大きな収益差を生んだことを示唆しているものと考えられます。

基金:債券運用の拡大が牽引した最大の収益源

 基金の平均残高は3兆7,921億円で、社会資本等整備基金等の取崩により、前年度の3兆8,541億円から620億円減少しました。利回りは0.128%から0.553%へと0.425ポイント上昇し、運用収入は49億4,407万円から209億7,350万円へと160億2,943万円増加しました。基金は公金全体の運用収入300億円のうち約210億円を占めており、収益拡大を牽引した最大の柱であったことがわかります。

 基金は歳計現金に比べて当面取り崩す予定の少ない資金が多く、より長い期間の運用が可能です。そのため、金利上昇局面では債券運用の割合を高めることで利回りを引き上げやすいという特性があります。東京都が債券運用の割合を増やしたと説明していることと、基金の利回りが内訳の中で最も高い0.553%となっていることは整合的であり、資金の性格に応じた運用手法の使い分けが収益に直結したものと考えられます。

準公営企業会計資金:小規模ながら同様の改善

 準公営企業会計資金の平均残高は6,526億円で、企業債の償還等により、前年度の7,976億円から1,450億円減少しました。利回りは0.110%から0.514%へと0.404ポイント上昇し、運用収入は8億7,392万円から33億5,431万円へと24億8,039万円増加しました。規模は相対的に小さいものの、利回りが4倍超に上昇した構図は他の区分と共通しており、金利上昇を捉えた積極運用が公金の全区分にわたって一貫して効果を発揮したことが確認できます。

ダッシュボードによる可視化という新機軸

 今回の公表に合わせ、東京都会計管理局は「公金管理実績ダッシュボード」を公開しました。平均残高・利回り・運用収入といった主要データを、年度ごとの一覧とは別に、複数年度の推移をグラフ等で閲覧できる形で提供するものです。公金管理についてのダッシュボードは、全国の道府県に先駆けた取組であるとされています。数値の羅列にとどまらず、推移を視覚的に把握できる形で住民や議会に示すことは、運用実績のアカウンタビリティを高めるとともに、運用方針に対する社会的な理解を得る上でも意味のある取組であると考えられます。

政策立案の示唆

この取組を行政が行う理由

法的義務としての側面

 まず確認すべきは、公金の効率的な運用が、行政の裁量的なサービスではなく、地方自治法等に根拠を持つ法的要請であるという点です。公金を「最も確実かつ有利な方法」で管理することは、自治体に課せられた義務であり、金利が上昇して有利な運用機会が生まれている局面で、なお漫然と低利の運用にとどまることは、この義務に照らして説明が難しくなる可能性があります。金利のある世界への移行は、自治体に対し、運用の高度化を「やってもよい選択肢」から「果たすべき責務」へと押し上げる側面を持つと考えられます。

自主財源の確保という側面

 運用収入は、国からの移転財源や税収とは異なる、自治体自らの判断と工夫によって増減させ得る数少ない自主財源です。300億円という収入は、保有する資金という既存の資産から生み出されたものであり、住民に新たな負担を求めることなく確保された財源であるという点に、大きな意味があります。財政運営の持続可能性が問われる中で、保有資産を活かして財源を生み出す取組は、歳出削減や負担増とは異なる第三の選択肢として、その重要性を増していくものと考えられます。

行政側の意図

不確実性への備えから効率性の追求への転換

 東京都が示した今後の方向性には、明確な思想の転換が読み取れます。令和6年度以前は、マイナス金利政策等の影響による効率性の低下があり、不確実性に備えた運用を行ってきたとされています。これに対し令和7年度には、金利上昇を捉えた効率性を重視した積極運用に踏み出したと説明されています。つまり、「守り」を基調とした運用から、安全性と流動性を確保しつつ収益性を能動的に取りに行く「攻め」の運用へと、基本姿勢そのものを切り替えたという意図が表れています。

令和8年度に向けた運用手法の高度化

 この転換は単年度で終わるものではなく、令和8年度にはさらに踏み込んだ取組が予定されています。基金については、特定目的基金において「一括運用」を導入するとされています。これは複数の基金の資金を一体として捉えてまとめて運用する手法で、全体として支払準備金を用意することで、取崩に対応する資金を最小限に抑え、運用に回せる資金を増やすことができるとされています。資金の最適化により、運用期間の長期化や大口資金での運用が可能となり、事務の効率化にもつながると説明されています。

 あわせて、償還年限の異なる複数の運用商品を組み合わせる「複合ラダー型ポートフォリオ」の構築も予定されています。これは、年限の異なる運用を多層的に重ね合わせることで金利変動リスクを軽減し、定期的に償還を迎えることで流動性も確保しようとする手法とされています。具体的には、基金の債券割合を令和7年度実績見込みの35%から令和8年度には43%へと高め、中でも中期債(2年超5年以下)の残高を令和7年度実績見込み比で約1.5倍となる5,100億円程度まで増やすことが想定されています。金利上昇局面において、相対的に利回りの高い中期ゾーンの債券を計画的に積み増していこうとする意図が読み取れます。

透明性の確保という意図

 ダッシュボードの公開や、外部有識者の知見を踏まえた運用計画の策定には、運用の高度化を進めるにあたって、その正当性と妥当性を対外的に説明できる体制を整えようとする意図が表れています。積極運用は収益機会を広げる一方で、後述するようにリスクも伴います。だからこそ、運用方針と実績を可視化し、専門的な知見によって妥当性を担保することが、積極化と表裏一体で求められているものと考えられます。

期待される効果

財源効果の継続的な拡大

 第一に期待されるのは、運用収入という財源効果のさらなる拡大です。令和8年度は積極運用を更に進め、一層の運用収入の拡大に向けた取組を実施するとされており、金利環境が大きく変化しない限り、運用収入は高い水準で推移する可能性があります。報道等によれば、日本銀行は今後も段階的な利上げを継続する可能性が指摘されており、仮にそうした環境が続けば、新規に組成・購入する預金や債券の利回りはさらに切り上がり、収益機会が一段と広がる可能性も考えられます。ただし、金利の先行きは国内外の経済情勢に大きく左右されるため、断定的に見通すことは難しい点に留意が必要です。

資金運用ノウハウの蓄積と組織能力の向上

 第二に、積極運用への転換を通じて、自治体組織の内部に資金運用に関する専門的なノウハウが蓄積される効果が期待されます。一括運用や複合ラダー型ポートフォリオといった手法は、金融市場に関する一定の専門性を要します。こうした運用を実務として継続することで、職員の知見が高まり、金融環境の変化に機動的に対応できる組織能力が育っていく可能性があります。これは、金利が再び低下する局面が訪れた際にも、適切にリスクを管理する力として活きてくると考えられます。

他団体への波及効果

 第三に、全国の道府県に先駆けたダッシュボードの公開や、先進的な運用手法の導入は、他の自治体にとっての参照モデルとなり得ます。東京都という大規模団体の取組が可視化されることで、運用の高度化や透明化に向けた取組が、他団体にも広がっていく波及効果が期待されます。

課題・次のステップ

金利変動リスクと評価損の管理

 積極運用、とりわけ債券割合の引上げは、金利変動リスクと表裏一体です。一般に、金利が上昇すると既に保有している債券の時価は下落し、評価損が生じ得ます。複合ラダー型ポートフォリオは、年限を分散し定期的に償還を迎える設計によってこのリスクを軽減しようとするものですが、リスクを完全に消去するものではありません。満期保有を前提とする限り評価損は実現損とはなりませんが、急な資金需要が生じて途中売却を迫られる事態では損失が現実化する可能性もあります。安全性・流動性という土台を堅持しながら効率性を追求するという原則を、運用が積極化するほど一層厳格に運用する必要があると考えられます。

流動性確保との両立

 運用期間を長期化し大口で運用するほど収益機会は広がる一方で、いざというときに資金を取り崩せる流動性は相対的に低下します。一括運用は支払準備金を最小限に抑えることで運用効率を高める手法ですが、その前提として、複数基金の資金需要を高い精度で予測する能力が不可欠です。予測が外れて準備金が不足すれば、不利な条件での資金調達や運用商品の途中解約を迫られる可能性があります。資金繰り予測の精度向上が、積極運用を支える生命線となると考えられます。

ガバナンスと説明責任の強化

 運用が高度化・積極化するほど、その判断の妥当性を誰がどのように担保するのかというガバナンスの問題が重みを増します。外部有識者の知見の活用やダッシュボードによる可視化は、その第一歩ですが、運用方針の決定プロセス、リスク管理の体制、損失が生じた場合の説明責任のあり方など、制度的な裏付けを継続的に整えていくことが次のステップとして求められると考えられます。

金融環境の転換局面への備え

 今回の好調な実績は、金利上昇という外部環境に大きく支えられた面があります。したがって、金融環境が再び転換し、金利が低下あるいは横ばいに転じた局面で、運用方針をどのように切り替えるのかという出口戦略を、好調なうちに検討しておくことが重要であると考えられます。金利のある世界が恒久的に続く保証はなく、環境変化に対する機動性こそが、長期的に安定した運用成果を支える条件になると考えられます。

特別区への示唆

金利正常化は特別区にとっても共通の論点

 東京都の実績は、規模こそ大きいものの、そこから読み取れる構造は特別区にとっても他人事ではありません。特別区もまた、日々の支払いに充てる歳計現金と、財政調整基金や特定目的基金をはじめとする各種基金を保有しており、これらを地方自治法等に基づき「最も確実かつ有利な方法」で管理する義務を負っています。金利が上昇する局面において、保有資金から得られる収益機会が拡大しているという構造は、東京都と特別区で共通しています。長くマイナス金利下で運用収益をほとんど期待できなかった環境が変わりつつある今、特別区においても、保有資金の運用方針を改めて点検する契機が訪れているものと考えられます。

規模の差を踏まえた現実的な高度化

 一方で、特別区は東京都ほどの資金規模や運用体制を持たない場合が多く、一括運用や複合ラダー型ポートフォリオといった高度な手法を、そのまま同じ形で導入することは現実的でない可能性があります。重要なのは手法の模倣ではなく、その背後にある考え方の応用です。すなわち、支払いスケジュールを精緻に見通して運用可能資金を捻出する、当面取り崩す予定の少ない基金については相対的に長めの運用を検討する、定期性預金の引合いによって少しでも有利な条件を引き出す、といった原則は、規模の大小にかかわらず適用可能であると考えられます。歳計現金の管理精緻化だけで過去最高益を生んだ東京都の例は、大規模な体制がなくとも実務改善の積み重ねが収益差を生むことを示しているとも読み取れます。

財政調整基金の運用という固有の論点

 特別区にとって特に重要なのが、財政調整基金の運用です。財政調整基金は、年度間の財源変動に備える資金であり、景気後退や災害といった不測の事態への備えとして、相応の流動性を確保しておく必要があります。その一方で、近年は各区とも財政調整基金の残高が一定規模に積み上がっている状況もみられ、当面取り崩す可能性の低い部分について、安全性・流動性を損なわない範囲で運用の効率性を高める余地があるかどうかは、検討に値する論点であると考えられます。ただし、財政調整基金は本来、機動的に取り崩せることがその価値の源泉である以上、流動性の確保を最優先する姿勢は崩すべきではない点に留意が必要です。

都区財政調整制度の文脈における意味

 特別区の財政は、都区財政調整制度を通じて東京都と密接に結びついています。都の財政運営の安定は、財政調整交付金の原資の安定にもつながり得ます。都の公金管理が運用収入という自主財源を拡大させていることは、都区を通じた財政基盤全体の観点からも、間接的に意味を持つ可能性があります。同時に、特別区自身が運用の高度化に取り組むことは、移転財源に過度に依存しない自律的な財政運営の一つの要素となり得るものと考えられます。

透明性とガバナンスの先取り

 東京都がダッシュボードの公開や外部有識者の活用によって運用の透明性を高めていることは、特別区にとっても示唆的です。運用を積極化させる前に、その判断の妥当性を住民や議会に説明できる体制を整えておくことは、後々の信頼確保につながります。運用実績の分かりやすい可視化、運用方針の明文化、リスク管理体制の整備といったガバナンスの基盤づくりは、規模にかかわらず先取りして取り組む価値があるものと考えられます。

まとめ

 令和7年度の東京都公金管理実績は、運用収入が前年度比4倍超の300億961万円に達し、公表開始の平成14年度以降で最高額を記録したという、長期トレンドの転換点と呼ぶべき成果でした。平均残高がむしろ減少する中での収益拡大であったことは、この成果が資金量の増加ではなく、金利上昇という外部環境の変化を捉えた運用効率の劇的な改善によってもたらされたことを物語っています。歳計現金等の資金繰り管理の精緻化、基金における債券運用の拡大、定期性預金の引合いの活用といった能動的な取組が、金融政策の正常化という追い風と組み合わさることで、約20年来の最高水準への到達が実現したものと考えられます。

 この実績が持つ最も重要な意味は、自治体の公金管理が、マイナス金利下の「守り」の局面から、安全性と流動性を確保しつつ収益性を能動的に追求する「攻め」の局面へと、その性格を転換させつつあることを示した点にあると考えられます。令和8年度に予定される一括運用の導入や複合ラダー型ポートフォリオの構築は、この転換を制度的・技術的に深めていく試みであり、金利のある世界における自治体資金運用の一つの先進モデルを提示するものといえます。

 ただし、積極運用は金利変動リスクや流動性の制約と表裏一体であり、ガバナンスと説明責任の強化、そして金融環境の転換局面への備えが、好調なうちにこそ問われることになります。外部環境に支えられた収益を持続可能な組織能力へと転化できるかどうかが、今後の鍵を握ると考えられます。

 特別区にとっても、金利正常化は保有資金の運用方針を改めて問い直す共通の契機です。東京都の手法をそのまま導入することは規模の面で現実的でない場合があるとしても、資金繰りの精緻化や資金の性格に応じた運用の使い分けといった原則は、規模の大小を問わず応用可能であると考えられます。財政調整基金をはじめとする基金の運用に、安全性・流動性を最優先しながら効率性を高める余地があるかを検討すること、そして運用の透明性とガバナンスの基盤を先取りして整えることは、自律的で持続可能な財政運営に向けた一歩となり得るものと考えられます。金利のある世界への移行という大きな環境変化を、保有資産を活かした財源確保の機会として捉える視点が、これからの自治体財政運営に求められていくものと考えられます。


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